アーカネリアス・ストーリー

第7章 アーカネリアスの英雄たち

第237節 エピローグ・アーカネリアスでの最後

 そして、アーカネルで三日を過ごすと、 5人と同道者のネシェラとアルクレア、そしてシルルはアーカネルを発つことにした。 恐らくこれが5人との今生の別れ――何人かは別れを惜しみ、そして、中には抱き合う者もいた――
「お母さん……兄貴……レミアンナ――」
「シュタル! 元気でやりなさい!」
「シュタル! お前ならできる! 絶対だぞ!」
「シュタルの可愛さには最後まで勝てなかったんだから――ずっと可愛いままのシュタルでいてね!」
 そして、こちらも――
「ライア――あなたには何もしてあげられなかった―― だけど、こんな母のもとに生まれてきてくれて本当にありがとう――」
「いいえ! お母様! 私はお母様の子に生まれてよかったと思っています! いつまでもお元気で!」
 そんな光景に、他の者たちはもらい泣きをしていた。
「ロイド!」
 アレスは叫び、右腕を差し出すと、ロイドは前に出てアレスの右腕をがっしりとつかんだ。
「アレス! 俺たちは仲間だ! また会おうぜ!」

 その数日後、エターニスにて……。
「来ましたね、そろそろお目見えになることかと思っていましたよ」
 サイスは先んじてこっちにいたようだった。 そんな彼に対してアルクレアが甘えていた。
「サイス♪ ただいま♪」
 サイスは冷静に頷いた。
「疲れたでしょう、まずはゆっくりと休んでください――」

 エターニスでは門前払いはどこ吹く風か、逆に歓迎ムードであった、 精霊界の試練の祠ともいえる”訃音の祠”挑戦者5名の登場と、 第4級精霊の面々による帰郷で久しぶりの賑わいを見せていた。
 シルルとアルクレアは力の精霊ガリクラスと話し合っていた。
「運命の標――それを持ってきたところで精霊界ではどうしようもできないのだが――」
 運命の標は元の剣の形状へと戻っていた、 究極破壊魔剣イセリアル・ニードルはローア時代のイセリアが携えていた代物、 運命の標はそれを再現しただけにすぎず、現物は今は残っていないハズである。
 そこへネシェラが口を挟んできた。
「運命の精霊様の持ち物だから彼女に渡してあげればいいんじゃないの?  精霊界での彼女の器はそっちにあるんでしょ?」
 だが――ガリクラスは言う。
「それはそうなんだが、器が眠っている場所は各々シークレットにしている場所であるがゆえにな、渡すことが出来んのだよ。 だから――」
 するとロイドが言った。
「わかった、それなら俺に任せろ。 運命の標だろ? フローナルのカンが良ければ訃音の祠へ探してくるに決まってる。 だから俺が持っていけばいいか?」
 シルルは頷いた。
「名案だな。それなら、任せてもいいか?」
 アルクレアはロイドに差し出した。
「お願いだよ……」
 ロイドは頷いた。
「俺に任せておけ」

 リアントスはエンダリフと話し合っていた。
「やはりキミの腕は私よりも上だったな、訃音の祠への挑戦権を得られるとは―― もはやこの世界の生物の限界を超えようというのだ。 だが、それにはまず人間族であることを捨てる必要があることを忘れてはならんぞ?」
 リアントスは頷いた。
「人間族の器のサイズじゃあ限りがあるからだろ?  そいつは訊いているから知っているが――つまりは精霊族になるってことか?」
 エンダリフは頷いた。
「あのディラウスも、基礎は人間だったが器を変えて今の姿になっている。 彼については元の姿に戻る術を忘れてしまっているが―― でも、かつての姿を記憶してさえいればいつでも好きにその姿へと戻ることも可能だ」
 まさに自分は何者にもなれるということか―― リアントスはディラウスに乗って嬉しそうにしているセレイナの姿を眺めながら考えていた。 ディラウスは上機嫌だった。

 ライアはディライドとシュシュラと一緒に話をしていた。
「仲のいい2人よね!」
 ライアはそう言うとシュシュラは楽しそうに答えた。
「ええ! 言うまでもないけど、ライアもロイド君と一緒に仲良くね!」
 ディライドも言った。ちなみに彼ら2人はアーカネル騎士に転身しており、 休暇でここまで来ていたのである。
「ロイドはな……口は悪くて負けん気の強いところもあるが、あいつは根はすごいいいやつだぞ。 まあ……んなこと言わんでも既にわかっているとは思うが――」
 やっぱり、みんなが口をそろえて言うほどか、ライアは思った。
「ええ、私はどこまでもロイドについていくのよ。 そこはシュシュラと同じよね?」
 確かに、彼女もどこまでも自分の男についていくという感じである。似た者同士である。

 シュタルはアルクレアとサイスと話し合っていた。
「アルクレアも元気な子を産んでね!」
「大丈夫! これで3人目なんだから! ねっ、サイス♪」
 そう言われてサイスは照れていた――3人目なのか――すごいお母さんだ。
「私も子供をガンガン生みたいなぁ……」
 シュタルはそう言うとアルクレアは楽しそうに答えた。
「シュタルちゃんならきっと素敵なお母さんに慣れるよ! 私はそう思う!」
 ホントに!? シュタルは目をキラキラとさせて訊くとアルクレアは嬉しそうに頷いた。

 そして――ネシェラとウサギから降りていたセレイナ、そしてセディルとシルルである。
「ネシェラには最初に会った時からずっと驚かされっぱなしだったが――それは今の今でも続いているな」
 ネシェラは嬉しそうに答えた。
「お姉様はオッチョコチョイだからなおさらだよね!」
 それにはシルルも苦笑いしていた。
「それにしても――こんな運命もあるのですね――」
 セディルはそう訊くとセレイナは答えた。
「はい! 私は多分、何がどうあってもネシェラさんと一緒にいられると思うんです!  たとえそれがこうして、別々の道を歩んだとしてもです!  なんだか不思議なものですね――」
 シルルは答えた。
「ユグドラだろうな――生命のコントロールをしているという大樹…… その恩恵が、2人は必ず結びつけるようなことをしているのだろう」
「じゃあ、私たちはずっと仲良しってことですよね!」
「そうよ、セレイナ、私たちはまさに一心同体、ずっとつながっているのよ。 だからセレイナが呼べば私はすぐに駆けつけてくるから、絶対に私のことを呼んでね!」
「はい! 必ず呼びます!」
 セディルはその2人を見てにっこりとしていた。
「人間の世界だけでなく、精霊の世界もこれできっと安泰ですね――」