アーカネリアス・ストーリー

第7章 アーカネリアスの英雄たち

第236節 エピローグ・かつての仲間たち

 ティンダロス邸――建物は当時からほぼ変わっていないが、子供が何人かいる――
「あっ! ロイド君だ!」
 アルクレアだ、彼女は子供をあやしていた。
「あれっ!? どうしたの!?」
 ライアはそう訊いた、確か最後はアーカネルを出たって聞いたはずなのだが――
「それはもちろん、こうしてロイド君とライアの仲良し夫婦に一早く会うためだよ!」
 そういうことか――2人は納得した。 子供たちは恐らく彼女やアレス、そしてランバートのところの子供だろうか、みんなで仲良く遊んでいるようだった。
「女の子が多いわね――」
 ライアはそう言うとロイドが頷いた。
「妖魔の女性の血が入っているからな、遺伝子的にもそうなりつつあるらしい。 でも、みんな女の子だな――」
 アレスのところも女の子だったようだ。
「伝説のプリズム・ロードを志すのもいいかもしれないわね――」
 ライアは冗談交じりに言うとアルクレアが嬉しそうに言った。
「ネシェラちゃんみたいに? 確かにそれもいいかもしんないね!」
 それはいいのか? ロイドは悩んでいた、むしろ普通にネシェラじゃないほうのプリズム・ロードをやればいいと思うのだが。 そんなアルクレアだが、彼女もまた妊娠していたようだ。

 リアントスは気が付いていて、セレイナと共にテラスで話をしていた。
「悪いな、いつの間にかアーカネルまで戻ってきていたんだな――」
「はい! ほら、懐かしい光景ですね!」
 確かに懐かしいな、昔はこの町を守るためにいろいろと奮闘してきたっけ――リアントスは感傷に更けていた。 するとそこへなんとも偉そうな服装をまとった将軍風の男が現れた。
「久しぶりだな、リアントス殿!」
 誰だこいつ――リアントスは悩んでいた、こんなやついたか……?  すると、その男は態度を改めた。
「俺だよ! ほら、これでわかるだろ?」
 と、落ち着いていた様子から一遍、どこかで見たことのあるにっとした笑顔でそいつは言うと――
「なっ!? まさかお前、スティアか……!? 故郷に戻ったんじゃないのか!?  なんでアーカネル騎士を!?」
 スティアは照れた様子で答えた。
「兄貴が亡くなっちまって遺産は俺に譲ってくれることになったんだけどな。 ま、実家の経営については実家の連中に全部任せてあるんだが、俺はやっぱり現場が好きだからな、 こうしてみんなで守ったアーカネルに残ることに決めたんだ。 家に戻るのはまだ今じゃねえって思ってな!」
 そうだったのか、リアントスは安心した、こいつのこういうところは変わってなくてよかった――
「お前の信じた道だからな。 それより、お前も嫁さんもらえよな」
 というと、スティアのもとに女の子が――
「パパー!」
 えっ、まさか――
「おお! よしよしよし!」
 スティアはその子を抱きかかえていた。
「いやなぁ……実は俺、結婚もしているし、もう子供もいるんだよなあ……」
 あのスティアが――リアントスは唖然としていた。
「お相手さんはどんな方ですか!?」
 セレイナは訊いた。
「ん? ああ、あのサイスの妹さんだよ」
 まさかのプリズム女、リリアン=ラクシュータ……意外な人物と一緒になったもんだな。

 シュタルはあのお母様方と一緒に話をしていた。 流石に自分の母親は56歳の見た目と結構歳をとったなとは思うのだが、 ダーク・エルフゆえの見た目の幼げ補正は利いていて、やっぱりそこまで大きく変わっていなかった。 当然、アムレイナもシャオリンもシルルもそんなに変わったような印象はない。
 この4人は今ではアーカネルを裏からこっそりと支える存在としているわけだが、 実際問題あまり表立って何をするようなことはほぼしていないのだという、 これからのアーカネルは完全に今の人に任せているのだという。
「あとは私だけー?」
 シュタルはそう言った、まだ将来のパートナーが確定していないのは彼女だけか。
「そんな! 焦らなくたっていいでしょ!? シュタルは可愛いシュタルのままいればいいんだからさ!  それに、今後はロイド君たちと一緒でしょ? その後でもいいんじゃないの? 玉の輿になりなさいよ♪」
 と、ナナル。 そう、シュタルはロイドたちと共に精霊界へと昇る決心をしたのだった。 そして精霊界で玉の輿――
「世界の管理者たる存在と一緒になることを玉の輿という表現は正しいのでしょうか?」
 アムレイナは悩みながら言うがシルルは頷いた。
「まあ、何をどうとらえるかは人それぞれだ。 もっとも……私としてもアムレイナの言うことに一理あると思うが。 それに――ナナルからすると自分の娘を男にとられるのは――」
「シュタル! 相手が出来たら私とシルルとネシェラちゃんに必ず言うのよ!  みんなで寄ってたかってボコボコにするんだから!」
 ……シュタルの旦那となる人物危うし――
「私もやるのか?」
「当然よ!」

 そして、レイランドに連れられてロイドとライアは墓地へとやってきた。 レイランドもナナル同様にそれなりに老けていたがそれほど大きく印象は変わっていない。
「彼はここにいる、王国時代のアーカネルでは最強の将軍だった者がいる――」
 ディアスか――彼は既に亡くなっていた、享年77歳、3年前のことだったらしい。
「とはいえ、彼はまさに天寿を全うしたと言えるんだろうな。 お前たちをクロノリアへと送り出し、アレスを立派な団長に仕立て上げ、 後の世を担うアーカネル騎士たちのために尽力したからなあ――」
 またそこに別の男がいてそう話をした。 随分と年季が入った風貌であるが、彼はルイス、騎士を早めに引退していて、 今ではレイランドと共に若い者を育成する側としてアーカネルに寄与しているのだそうだ。
「アーカネルを掃除するのはいろいろと大変だったけどな、 彼のおかげで腐敗していたところはすべて葬られていったんだ。 もっとも、俺たちがクレメンティルを掃討したのが一番効き目があったんだけどな!」
 それはそうだ、それについては流星の騎士団なら誰しもが譲れないところである。