裏世界のユグドラ……もはやそれは暗黒大樹と呼ばれるような黒の大樹ではあるのだが、
その木は闇に覆われた木ではありながらも、不思議と温かく優しいぬくもりが漂っているようだった。
「元のユグドラに寄せたのかしら、そのせいか光の煌めきみたいなのをどことなく感じるわね――」
元のユグドラはもっと大きな大樹で近くによるとまったく想像にできないほど大きいらしいのだが、
この大樹はそこまででもなく、せいぜい高層ビル程度の大きさと、まだまだ想像可能な大きさだった。
「そう、この木こそが母なる大樹、ユグドラの木となるものだ――」
そこへクリストファーが現れた。9人は身構えた。
「よく来たな、お前たち――。
どうやらこの私を斃しに来たようだが既に計画は着々と進んでいてな、後は仕上げに差し掛かっていたところなのだよ。
しかし――どうやら外で邪魔をしている者がいるようだな……」
それはスクライトのことか、アレスは考えた。
そこでクリストファー、例の書物を取り出した。
「これには有用なことが書いてあってだな、世界の構築の仕方から消す方法まで事細かに書いてあったのだ。
だが――肝心のページがどうやら読むことができんようでな――」
クリストファーはそう言いつつネシェラに投げ渡した。
ネシェラは顔をしかめながら受け取った。
「読んでみるがいい、その理由はすぐにわかる――」
言われてネシェラは読んでみると――
「なるほど……危険な使い方をするやつには制限をかけているって寸法ね。
だからあんたの目論見通り、どうやら私にはこれが読めるようね。」
なんだって!? ロイドは訊いた。
「解読できねえんじゃねえのか!?」
ネシェラは頷いた。
「この書物は特殊な仕掛けが施されていたのよ。
クロノリアの民が読めないのは彼らには要としないから。
彼らは魔法を封じていたのだからまるで読むことを禁じられているかの如く、内容を理解することができなかった。
それについてはスクライトも同じこと。
だけと――どうやら私には必要と判断されたようね――」
と言いつつ、ネシェラはクリストファーに向かって立ち向かった。
「やはりそうであったか――よろしい。
だが、それでもそいつからは必要なノウハウだけは読み取ることができた、
あとは――足りていないところは自らの力で補い、そして邪魔な者を排除すれば――」
クリストファーは静かに佇んでいた、こうして最後の戦いが――
9人は力を合わせてクリストファーに立ち向かった――が……
「時にお前たち、始原の炎というのを知っているか?
そう、すべてのものを創造するための灯というものだ。
それをお前たちに見せてくれよう――」
と言いつつ、クリストファーは手をかざすと――
「そう……これがその炎だ!
いでよ……<エクスター・フェニックス!>」
すると、その場にはものすごい量の大爆発が!
「うわああああ!」
すべての者を巻き込んだ!
「すごい威力……でも! ここで負けるわけには!」
ネシェラは立ち上がるとクリストファーめがけて立ち向かった!
「くらえー! エアリアル・フレアー!」
激しい風を巻き起こしつつ、さらに……
「はああああっ! エアリアル・ダンシング・クルセイドっ!」
クリストファーめがけて切り付けたが――
「なっ……!?」
クリストファーはネシェラの首をつかんでいた!
「ネシェラ!?」
ライアは驚いていた。
「忘れたのか?
ここは闇の世界……例え偽りの空間にして偽りの世界だとしても、
独自の時が流れ、独自の”理(ことわり)”が生きているのだ。
ゆえにこの世界では私に理がある――そうである以上はお前たちの敗北は確実なのだ――」
というと、クリストファーはなんと、ネシェラの顔を吹き飛ばした!
「これは見せしめだ!
さて、次の犠牲者を……前に出てくるがよい――」
すると、大樹の裏のほうからそっとネシェラが――やっぱりか。
「忘れてなんかいないわよ、ちょっと様子を見ただけよ。
でも……やっぱり”理”が利いているのか、それは厄介ね……」
”理”とは平たく言えばルールのことである。
世界には世界のルールがある、それを司っているのは生命の流れをコントロールしている”ユグドラ”である。
つまり、このアーカネリアスにいる以上はそのユグドラのコントロールしている通りのルールの中でしか生きられないのがこの世界の常ということである。
一方でこの世界ではどうかというと、この暗黒大樹こそがその”理”を管理しているということである。
偽りの空間にして偽りの世界であり、まだ完全ではないようではあるが、
それでも”理”を管理についてはある程度機能しているようで、クリストファー自身を圧倒的な生物にさせているのか、
それとも外界からの戦士たちを弱体化しているのか……といったルールが適用されているようだ。
そんな劣勢の中で彼らは勝つことができるのだろうか!?