さらに――
「あそこにエターニスを模したところがあるわね――」
と、ネシェラは言った、表とは打って変わって花畑などなく、
褐色の荒野の真ん中に黒々とした森がぽつんと置いてあった。
そこへと急ぐ一行だが――
「なっ!? なんだ!?」
なんと、そこにはなんだか大きな無機質的な物体と、どこかで見覚えのある獣が行く手を阻んだ!
無機質的な物体については見るからに自然の力そのもの……と言いたいところだが、そいつは黒みを帯びていた。
「こいつはエレメンタル……しかもとびきりデカイやつか……」
ロイドは唖然としていた。さらにシュタルが――
「こいつ! まさか、ザラマンデル!?」
言われてみれば確かにそうだ、今度は本気モードだな……
「なるほど、”ダーク・エレメンタル”とザラマンデルですね、
こいつらは私が相手をします――」
と、ランブルが前に出た。そこへさらにクレアも前に出た。
「ここなら転んで顔ぶつけてもそんなに痛くなさそうだから私もここに留まります!」
そしてディライドとシュシュラの2人も――
「おーし、つまりはこのあたりの魔物は全部片づけておけばいいんだな」
「よーし! ここで食い止めるわよー! ネシェラ、後はお願いね!」
さらにディアとシャオリンも前に出た。
「こいつが噂に聞くザラマンデルってやつか――俺のスピードについてこれるかっ!」
「私も残ります。他の皆さんは先に進んでください!」
裏エターニスへと入って行った残りの15人、
さらに奥へと突き進むとそこには2本の柱のようなものが……
「これは!?」
アレスは訊くとロイドは答えた。
「こいつはゲートって呼ばれるやつだ。
2本の柱がある場所は空間の境目を形成する力があるそうだ、
それでこれが――表のエターニスにも同じようなものがある」
そうなのか、ライアは訊いた。
「でも、その空間が開いているようには見えないけど――」
するとロイドはティルフィングを取り出し――
「ここも同じようにすれば開くはずだ!」
願いを込めて空間を叩き切った! その中にはさらに闇の強い空間が――
「これは……精霊界を模したところ……?」
と、ネシェラ、こっちも裏精霊界か。
実際の精霊界は森の中から広い空間へと開けていて、
とにかく何もない大空と広大な緑の草原へと広がる空間の上にいくつかの森があって、
その中でも特に際立っているのが天を貫くほど高い母なる大樹”ユグドラ”があるという場所なのだそうだ。
だが、ここは裏精霊界……空は闇、地面は暗黒の大地と言わんばかりに紫の大地となっており、
奥にある大樹も紫の色という、まさに魔界を思わせるような様相だった。
「裏精霊界は広いわね。
表のほうはとにかく何もない緑の大地が広がっているらしいけど、
その淵には誰も到達したことがないといわれているわね。」
ネシェラはそう言うとセレイナが続けて説明した。
「精霊界はあくまで精神の世界……アーカネリアスとは表裏一体の世界となっているんです。
言ってしまえば目に見えないだけで、アーカネリアスの世界と重なって存在しているのが精霊界なんです」
精神の世界なので実際には目に見えずに存在している世界なのである。
言ってしまえば人間世界も精神世界であり、目に見えないはずの世界であるが、
それでは世界で生を営む者が不便のため、
生活する者にとってはその世界に存在する限りは見えるようになっているだという。
それは精霊界も同じなのだが、こちらはより精神世界に近しい存在故か、
とにかく誰も到達できないほどの広い空間が広がっており、
しかも人間界の2倍も3倍も広い世界となっていて、世界の淵にたどり着いた者はいないのだそうだ。
なお、その淵には遥か崖下にどこまでも広がる海が広がっているそうだが、
本当かどうか定かではないが海の奥には別の世界があるとされているが見た者はいないので詳細は不明だという。
話を戻そう。
「あれは何でしょうか……?」
セレイナは暗黒の平原の真ん中になにやら妙なものがその場に横たわっていることを確認した。
それに対してすぐさま近寄ろうとする一行だが、
その存在には誰しもがすぐに気が付いた。
「これはまさか、ウロボロス!」
アレスはそう言うと、そいつは目をギロッと見開き、起き上がるとその姿を堂々とあらわにした。
その姿はもはやドラゴンのようであり、
以前に現れたすべてが黒いおぼろげなウナギのようなフォルムとは打って変わり、
黄色い目玉にしっかりとしたどす黒い竜のような獣という存在だった、
これがかつてイセリアたちが斃したというウロボロスの姿だろうか。
「ネシェラさん! 邪悪なる者がいるとしたら恐らく表世界では”ユグドラ”なる大樹だと思います!
ここは私たちに任せてあなた方はそちらに向かってください!」
サイスはそう言うとさらに続けた。
「アルクレア! 運命の精霊様の力を持つというのならあなたも真の敵を討つために行ってください!
さあ、早く!」
するとアムレイナが言った。
「私はここに残り、この敵を斃します! ライア、アルクレア、後は頼みます!
サイス! あなたはアルクレアと共に!」
そう言われてサイスは決意した。
「……わかりました!」
さらにレイランドとスティアが――
「私の役回りはここまでのようです。
ですが――ここでこいつを討って私もローアの英雄たちと同じく、時の英雄となりましょう。
そしてあなた方は、この時代に巣食う真の敵を斃し、真の英雄となってください!」
「流石に俺だって自分の役回りはここまでだってわかってるぜ……。
ロイド! リアントス! それからネシェラ! 俺はここで頑張るぜ!」
……あえて頑張ってこいみたいなことを言わないスティア、
リアントス、ロイド、そしてネシェラは察して答えた。
「ああ! 俺も頑張ってくるからな!」
「んだよ、どうせだからこのタイミングで頑張って来いって言って欲しかったもんだな」
「ええ、死なない程度に頑張ってくるわよ。あんたも死なない程度に頑張んなさいよ。」