アーカネリアス・ストーリー

第7章 アーカネリアスの英雄たち

第227節 古の時代の名だたる猛者たち

 裏ミストガルド山の東口側、彼らはなんとか魔物の群れをかいくぐって行軍していった。 表の世界と似たような地形とは言うものの、まだ作られたばかりの世界という都合なのか、 大きさで言えば圧倒的で、距離だけで言えば10分足らずで東口側へと到着するほどだった。 だが……魔物は押しなべてとにかく強力な魔物ばかり、想像以上の時間がかかる。 とはいえ、それでも今の彼らにしてみればそこまでの魔物ではない。ただし――
「キエエエエ!」
 山道から降りると、そこにはとてつもなく巨大な鳥が待ち構えていた!
「まさか……クレインか!?」
 ロイドは驚いていた。翼を広げた時の幅がとにかくものすごい大きさで、アーカネル城など目でもないような大きさだった……。
「古の時代のアーカネルにいた魔物だと聞いているが、これほどまで大きいのか……」
 ディアスも唖然としていた。すると――
「気を付けて! 何かしてくるわよ!」
 なんだか勢いをつけてこちらに襲い掛かってくる!
「風を巻き込んで突っ込んでくるぞ!」
 リアントスはそう言いつつ注意を促していた。しかしそこへ――
「ディアス! ルイス!」
 その2人が敵の矢面に! クレインは低空飛行を保ちつつ、下界に激しい気流を巻き起こしながら突進してきた!
「オッサンたち! 危ねえぞ!」
 ロイドはそう言うが2人はその場から動かない!
「いいからいけ! どのみち、誰かが相手をしなければ別の誰かが襲われる!  だったら俺たち2人で十分だ!」
 ルイスはそう叫んだ……
「ディアス! 無理なさらないでください!」
「ルイス! いいから逃げて! お願いだから!」
 次と仲間たちが2人のことを心配していたが、彼らは――
「うおおおおお!」
「ぬあああああ!」
 砂埃を巻き込んだ強烈な嵐と共に――
「あっ! あれをみろ!」
 ディアが指をさしてそう言うと、そこには2人が互いの手をぐっと握りしめながら踏ん張って耐えていた!
「なっ!? すっ、すげぇ!」
 スティアは感動していた。
「あれは……魔法バリアを展開している!? しかもかなり強力なものです……。 ですが……あれだけの守りを展開すると、それ以外の行動が制限されるはず――」
 サイスはそう言うとランブルが言った。
「彼らはアーマーナイト、守りこそが取り柄です。 魔法に対する防衛術について相談された際に考えたのがあの能力なんですよ。 通称”メンタル・メガ・サージ”とでも言いましょうか、 対魔法攻撃を受け流すためだけに使う能力ですから、 あとはアーマーナイトである彼らに使用の判断を委ねることにしましょう」
 なるほど、確かに囮役を買って出るような役柄なら堪えるだけの能力があれば十分か――サイスは判断した。
「ということは? 攻める役がいないと言うことだね。 相手が鳥だって言うのなら私の出番かな?」
 と、そこへエンダリフが前に出ていった。
「ん? 鳥っつったらリアントスだろ?」
 スティアはそう言うがリアントスはスティアを押しのけて言った。
「そうか――先輩が言うんだからここは譲らねえといけねえな――」
 えっ、どういうことだ!? スティアは悩んでいると――
「マドラスは元祖イーグル・アイだからな、先輩がいる以上は邪魔をしたらいけねえだろ?」
 まさかの元祖イーグル・アイ……だが、エンダリフはにっこりしながら言った。
「私の腕などキミの足元にも及ばないよ。 だから真の敵を討つのはキミに任せるよ、それに私よりも若いから私なんかよりもきっとうまくやれるはずだ!」
 お世辞もうまい先輩なんだな――リアントスは頷いた。
「それならば私もここに残るほうがいいな。 ネシェラ、ロイド、お前たちは先を急ぐんだ!」
 と、セディルもそう言いつつおもむろに前に出た。
「期待に応えてくる。さあ、行くぞ――」
「先輩方が言うからには素直に従うべきだな」
 と、リアントスとロイドは先に進むことにすると、その様子を見て他の者も彼に続いて進むことにした。
「よし、行ったな。 第3級精霊・”武精ヴェラトセルド”の血筋である私の”イーグル・ビュレット”にかなうかな?」
「なら、私も久しぶりに精霊界の神器”エーテル・セプター”を使うことにしようか」
 エンダリフは得意げにそう言いつつクレインめがけてかなり大掛かりなボウガンを構えていた。 セディルもあからさまに魔法使いの杖のような鈍器を取り出してクレイン相手に構えていた。 この2人はどうやらかなりの大人物のようだ、”ヴェラトセルド”の遠縁かなにかなんだろうが……。

 さらにその先にはベヒーモスの群れが……
「デカイのがこれだけいると厄介だな――」
 アレスは茫然としていた、ただし、立ち止まっている暇はない。 すると――
「あれ! 見てください!」
 セレイナはそういいつつあるベヒーモスを指さした。
「あれは”ダーク・ベヒーモス”……まさに長老階級のやつまでいるのか……」
 と、ロイドは唖然としながら言った。 ダークの名を冠する通り色合いも黒々としているが、 長老級ということで”グラン・ベヒーモス”でも通じるそうだ。
「もっと強ぇってことだな、途方もない魔力を帯びているようにも感じる――」
 リアントスもビビっていた。 するとそこへ――
「なら、どっちの”ダーク”が上なのか証明するしかねえな!」
 と、ランバートは前に出た!
「ほう、ダーク……それは聞き捨てならんな――」
 と、ゼクスと、レオーナも前に出た。
「図体ばかりデカくたって仕方がないことを教えてあげないといけないわね」
 さらにシュタルが……
「なら、私も行くよー!」
 と、構えながら前に出るが、ナナルが静止した。
「シュタルはアレス君たちと一緒に行きなさい!  ここはお母さんに任せて!」
 そう言いつつ、ナナルは速攻で仕掛けに行った!
「はぁっ!」
 ランバートは悩んでいた。
「やっぱり伝説のナナル=エデュードなのか……。 だったらその息子である俺も負けてらんねえな!  アレス! シュタルを頼むぜ!」
 そう言いつつ、ランバートも突撃!
「まっ、待って! 私も行くわ!」
 と、ランバートに続いてレミアンナも飛び出していった!
「だそうよ。みんな! 頑張って!」
 そう言いつつ、レオーナも続くと、
「どりゃああああ!」
 ゼクスも突っ込んでいった。
「わかった! みんな、任せた!」
 アレスは元気よくそう返事をした。