そんなランバートの様子をディライドとシュシュラはミストガル門のやぐらの上から見守っていた。
「ちょっと見ずらい位置だけど、いいとこ見れたわね♪」
シュシュラはそう言うとディライドは答えた。
「だな、2人にユリシアンの加護がありますように……と」
シュシュラは頷いた。
「そうね! 2人にユリシアンの加護がありますように!
ところで……私たちは戦いの後はどうするの?」
ディライドは考えた。
「そうだな……どこに行きたい?」
シュシュラは嬉しそうに答えた。
「そうねえ、もう式なんて挙げなくていいからさ、私はあっちこっちに旅をしてみたいなぁ♪」
と、甘えたような声で……ん? 式?
「そうだな、平和になった世の中を飛び回りたいな。
でも、それには今起きていることの後始末が必要だな」
「じゃあさ、後始末のために一緒にあっちこっちに行ってさ、
その後に新婚旅行しましょうよ!」
「そうだな、それが一番だな!」
新婚旅行! なんと! 2人は既に結婚していた! それを今まで隠していたとは……やるな。これが聖騎士団……違うか。
その後、ネシェラはテラスにて、アルクレアから手渡された精霊石を眺めていた。
「その石……すごい力を持っていますね――」
一緒にいたセレイナはそう言うとネシェラは頷いた。
「ええ、運命の精霊様のパワーね。
やっぱり私はメシアなのかしらねえ、あの時のあの空間の様子が見えたよ。
何ていうか、粛清されるときってあんななのかしらって思うとぞっとするわね、えげつないものを見せつけられたって感じ……。
セレイナも見えたでしょ? すごい力をもった霊獣様なんだからさ――」
セレイナは頷いた。
「はい……動くことはできませんでしたが見ることはできています、
本当はロイドさんを粛清しに来たんですよね?
破壊の剣を振るえる力を持っている者だからって……」
セレイナはさらに訊いた。
「あの、その石……流石に加工しないままってわけには行きませんよね?」
ネシェラは石を眺めながら答えた。
「そうね、これだけのものがここにあるとフォース・ゾーンに影響を与えるのは必至だからね。
だからシルル……フェリンダお姉様の本音に反してこれは加工して影響を与えないように調整しなければならないってこと――
なおかつ、力の使い方を知る自分がふるうよりもアルお姉様のほうがと思って託したってわけね。」
なるほど……セレイナは納得していた。そしてネシェラはため息をついていた。
「やれやれ、メシアが周囲に影響を与えているってわけね、
文字通り”世界を味方につける”って力――なんとも面倒なことになったものね――」
ネシェラは作業に取り掛かっていた。
「にしても、ここはとってもいい場所ね、作業が捗りそう。
もっと早くに知りたかったわね――」
セレイナはにっこりとしていた。
「はい! ここはなんだか落ち着きますね!
ネシェラさんたちと一緒にこうしてゆっくりお話しできるのは楽しいです!」
そんなこんなでできたのは――
「すごい! 大きな剣! 私が振るうの!?」
後日、アルクレアを呼び出したネシェラは彼女にそれを差し出していた。
「でも……こんなに大きな剣、私には扱えないかも――」
しかし、ネシェラは――
「大丈夫、持ってみてよ。」
そう言われて彼女は手に取ると――
「えぇっ!? なにこれ!? すっごい軽いんだけど!」
その見た目はロイドが扱うような重機とも思しきビッグな大剣だが、
軽さは並の短剣程度でしかないと、とんでもない代物だった。
「ちなみに私やセレイナの剣にも採用されているんだけど、
使用している鉱石はミスリルとルーン・メタル、
そして現存する中では最も偉大なる金属として名高い”オリハルコン”が組まれているのよ。」
そんなものが!? アルクレアは驚いていた。
「最大の特徴は飛行石とも呼ばれるそれは、現存する鉱石の中でも比重がとても軽いことが挙げられるわね。
残念ながら不純物が多いと並の金属並みの重さがあるって言う、飛行石とは?
と言わしめる代物でしかないんだけど、不純物を除去するために精錬してさらにエンチャント素材による加工を施すことで
キチガイみたいな軽さの金属が実現するわけよ。
そして、それで作った武器だから軽いのも必然ってわけね。」
そんな話を聞かされてアルクレアは舌を巻いていた。
「いくら運命の精霊様が剛腕だからって女性の武器で重たいのはあんまりだからねぇ。
だから重さについてはみっちり引かせてもらったってわけよ。」
やっぱりネシェラちゃんってすごい! アルクレアは感動していた。
「運命の精霊様の扱う運命の標たるパワーを備えた剣……その名も”精剣フェイタル・クレスト”で行かせてもらうわね!」
おおー! アルクレアは歓喜した。
「意味は運命の紋章……純粋な運命の標たる道標の杖的なものに運命の精霊様のお墨付きの印が刻まれている的なものをイメージしての命名ね。
まさに運命の精霊様だからこその最強の兵器といったところね!」
そしてその刀身の大きさに、見た目は何とも美しい様相をしており、
先端に向かってまるでライトセーバーのような透き通った刀身をしており、なんとも神がかっていた。
「すごい金属ねえ! これがオリハルコン!?」
ネシェラは嬉しそうに頷いた。
「これができる刀匠は現世では私しかいないわ!
これは本当にもう今世紀最大の大仕事をしたって感じね!」
彼女は何気に興奮気味だった。