そして、アムレイナと共にネシェラが戻ってくると、ロイドは話を聞いた。
それに対してアムレイナが――
「本当に、あなた方は仲の良い兄妹なんですね!
各々で聞いていた話を共有するなんて!」
そう言われてみれば――ネシェラは言った。
「今までも割と普通のことだったわね。
なんていうか、お互いにそれぞれ感性が違うし、だからどう考えるのかも違ってくる――
だから訊いた話は必要とあらばまずは共有してお互いにどう思うか意見交換するのよ。」
それにロイドは頷いた。
「だな。それに――俺とネシェラは今後違う道を歩むことになる――
それはアルティニアを出た時から覚悟していたことだ。
だから――一緒にいる間はとりあえず話をしようと――両親を早くに亡くしているからな。
俺らを強い兄妹と言っているやつは大勢いるが、その実お互いに寂しがりなだけなんだ」
「そうね、私たち兄妹はなんだかんだ言っても弱いのよ。
だからこうしてお互いに一緒にいたいのよ、近くにいる間はね――」
そうか、弱さゆえの強さ――アムレイナはそう考えた。
ということで、ここまでくればお察しの通りだと思われるが、要はこういうことである。
「あっ、あの……ネシェラ……執行官……?」
ランバートはネシェラに呼び出されていた、ティンダロス邸のテラスである。
「おっそい! さっさと来なさい!」
ランバートは思いっきりお叱りを受けていた。
「わっ、悪かったよ……。それで、用って?」
悪びれた様子で答えるランバート、そしてネシェラに要件を訊くが、彼女は――
「はぁ? 何言ってんの? あんたが私に用があるって言うからこうしてちゃんと待っていたんじゃないのよ。
人のことを待たせておいてそれはないでしょ?」
えっ……えぇっ!? いや、その――ランバートは悩んでいた、ネシェラを呼んだ覚えはない……。
「なっ、なにかの間違いじゃないですか?」
ランバートは慌てて言うと、ネシェラは落ち着き払った様子でため息をついていた。
「ったく、レミアンナからそう訊いたんだけど――
またどーせ私の悪口でも言ってたんでしょ? その時のことがたまたま彼女の耳に入って――」
言ってない言ってない! ランバートは首を全力で振っていた。
「でも、レミアンナさんって!?」
ネシェラは手で押さえたようなしぐさで言った。
「彼女からあんたが呼んでるって聞いただけよ。
最近なんだか一緒にいることが多いんじゃない?
もしかして……彼女のことが好きなの?」
そう言われてランバートはぎょっとしていた。
「なっ……!? それは――!」
「だって、どこかの勇者様よろしく、彼女を命の危機から守っているって言うじゃないのよ。
旅の仲間って? いえ、それにしては少々行き過ぎている気がするわね、だって――
彼女に明らかに見惚れているところとかよく見るけど?
それに……彼女に結構優しくしているところとか?」
それは――ランバートはしどろもどろになってた。
「好きなのね?」
するとランバートは顔を真っ赤にして答えた。
「そうだっ! 俺はレミアンナさんが好きなんだ!
何ていうか、最初は確かに、見ているだけでたまらない人だった。
けど、あの人……なんていうか、すっごく優しい人なんだ。
口ではあからさまに邪悪なことを言っているようにも感じるけど、
実はとても仲間想いですごくいい人なんだ!
だから、その……俺は……」
するとネシェラは例の変身技を使ってレミアンナに化けた!
「そっ、そうなのね……どっ、どうしようかしら……」
と、彼女はものすごく照れた様子で言った――
「えっ!? レミアンナ……さん……!?」
ランバートは驚いていると、ティンダロス邸の外からネシェラの声が。
「ほら! ランバート! しっかりしなさい!
ここでヘマしたらお前、アーカネル騎士クビだからな!」
それ、パワハラではないだろうか? だが、誰も気にしてはいない。
ということはつまり――目の前にいるのは本物!?
「ランバート! がんばって!」
「アニキー! かっこいいところみせてー!」
お母さんと妹も応援している。
しかも周りを見ると、他の者たちも自分を応援している……もはや逃げも隠れもできない!
追い込まれたランバートは覚悟を決めた。
「レミアンナさん! 俺と付き合ってください!」
ランバートはレミアンナに対して手を差し出し、物思いに頭を下げた! すると――
「ランバートさん、頭を上げて――」
そう言われて彼は頭を上げると、レミアンナはランバートの胸に飛び込んでいった――
「えっ――」
「ありがとう、ランバートさん――私、ようやく認められたのね……
いえ、確かにネシェラっていうとてもいい女の人には認められたんだけど、
男の人にはこれが初めてよ――」
ランバートは照れており、レミアンナは嬉しそうだった。
そんな熱い光景を、周りは喜んで見守っていた。
後は2人の仲なので水入らずということで。
「アニキ♪ レミアンナ♪ よかったね♪」
「とりあえず、これで一旦は安心できるわね――」
妹と母も嬉しそうにしていた。