ランバートはオーレスト門へと行くと、パタンタから戻ってきたゼクスに会った。
「よう! ゼクス!」
ランバートはそう訊くとゼクスは頷いた。
「ランバートか、将軍の座についてから随分と長いようだが――まだ肝心の相手が見つかっていないそうだな」
そう言われてランバートは頭を掻いていた。
「母さんにさんざん言われているからなぁ……とうとうゼクスの耳にも入っちまったか――」
「こういうのは焦っても仕方がない、チャンスが来るまでじっくりと待つんだ、例え誰に何を言われようともな。
母親だって、気持ちは前のめりだと思うが、それぐらいのことはわかっているはずだ、
ただただお前には忘れないでほしいと思って言っているだけだろうな」
そういうことか……ランバートは頷いた。
「おっ、おう……覚えとく……」
ランバートとゼクスは昔からの知り合いで、その当時からこんな間柄だったらしい。
年齢はそこまで離れてはいないのだが、ゼクスのほうが兄貴分である。
「ところでゼクス、お前、この戦いが終わったらどうするんだ?」
ゼクスは頷いた。
「俺は騎士を続けようと思う。
とはいっても、俺はあくまで次代の担い手が現れたらすぐに辞めるつもりだ。
正直、今回の戦いはあまりにも激しすぎた、
今回の騎士制度兵士制度はあまりにも充実しすぎている気がする――
早期退役であっても充実した生活が送れることは恐らく確実だろう」
それで早めにやめることを考えているのか、ランバートはそう考えるとゼクスに訊いた。
「早く辞めたら、それはそれでアーカネルを担う者がいなくなっちまうぞ」
ゼクスは首を振った。
「恐らく、それには及ばないだろうな。
アーカネルは安泰だ――今の我々が頑張ればな」
確かにそうだな……ランバートは考えた。
「今のことは今の人間が、後のことは後の人間に任せろってことだな。
後のことで俺らがやるのは今のことの後始末ぐらいか」
「そういうことだな」
一方でナナルはネシェラの仕事ぶりを見て楽しそうにしていた。
「ネシェラちゃんってすごいわよね! 本当に、なんでもできるのね!」
そう言われてネシェラは得意げにしていた。
「ふふっ、ナナルお母様にそんなこと言われたら照れるわね。」
ナナル”お母様”! その呼び方にナナルは感激していた。
「”お母様”って呼ばれたことないなぁ……」
そうなのか、ネシェラは言った。
「エターニスの精霊族なら普通なんだけどね、
お父様お母様、お兄様お姉様、おじい様におばあ様……」
そうなんだ、ナナルは納得した。
「ライアちゃんもそう呼んでいるわね……」
ナナルはその場にいたライアに訊いた。
「え? ええ、昔からそう呼ぶのが普通だと思っていたけど――貴族の家だから?」
それもそうか、ナナルは納得した。
「でも……シュタルはネシェラ”お姉様”って呼んでるわね?」
ライアはそう言うとナナルはびっくりしていた。
「えぇっ!? どういうことなの!?」
ネシェラは答えた。
「私がロイド”お兄様”って言うのをマネているだけじゃないかな」
そう言えばそうか、ナナルは再び納得した。
「なるほどね! でも、仲のよさそうな兄妹って感じよね!」
ネシェラは頷いた。
「まあね、お兄様との仲は良好よ。
言っても、私なんて結構わがままなところもあるしさ、
だからロイドお兄様には結構無理言っているところはあるかもね。」
それは……ナナルは嬉しそうに言った。
「いいじゃない♪ だって、女の子だもの!」
ナナルもそうだったのか、ネシェラは訊くとナナルは頷いた。
「ええ、私もわがままだったわね。
でも、親のありがたみを知ったのは両親が亡くなってからだった。
幼い頃の私は本当にわがままで、一緒に暮らしていたシルルにも苦言を呈されるほどだった。
でも――両親が亡くなった時に私が落ち込んでいるとシルルは言ってくれたの、
両親は私を愛していたって……だから私のわがままを受け入れてくれたし、
私が家を出ても自分たちの死を伝えてくれたし。
だから――私も両親を見習ってシュタルとランバートをしっかりと育てようって思ったのよ――」
そうだったのか、ネシェラとライアは頷いた。
「あら、なんとも素敵なお母様ね!」
「ホント! 私もナナルお母様を見習いたいわね!」
そう言われ、ナナルはにっこりとしていた。