翌日の事、シュタルはリビングで悩んでいるようだった。
「うーん……」
そこへランバートが言った。
「どうした? もう騎士には見切りをつけたいってか?」
シュタルは遠い目で答えた。
「まあね……正直言うと、もうこりごりって感じなんだよね……。
今のメンバーは楽しいよ? だから続けられていた気がする。
だけど――」
ランバートは頭を掻いていた。
「ロイドだろ? 確かに、そうだよな――あいつらがいると楽しいのはわかる、
俺もそうだった――以前の仲間が辞めて、俺もどうしようか悩んだ。
だが――ロイドもリアントスも楽しいやつらだからな、だから続けられた感じがする。
だからって仕事って大変だから辞めちまうのかっていう人もいるかもしれないけど、
そもそもこの商売ってのは生死を分かつような仕事だ、だとするとそれを咎められるのは違うよな?
そう考えると――当時の仲間もだいぶいなくなっちまったし、そろそろ見極め時が肝心だよな――」
シュタルは訊いた。
「兄貴は辞めるの?」
兄貴は悩んでいた。
「俺は――まだ気持ちは半々だな、正直、どちらとも言えない。シュタルはどうなんだ?」
シュタルは……
「私、ライアもロイドもネシェラ姉様もいなくなったら……ねぇ――」
ランバートは頷いた。
「いいんじゃないのか?
シュタルならアーカネル騎士として副将軍にまで上り詰めた実績もあるんだし、
それに彼らとは本当にうまくやっていたと思う、
そんな連携の取れていた彼らとでなければって話なら――中にはそういう騎士もいるからな、
だったらシュタルはシュタルらしくまた違う道を歩めばいいと思うぞ」
自分なりの道か――シュタルは悩んでいた。
「お前は本当に人懐っこくてすぐに打ち解けられるような性格だからな、
それなら何処に行っても安心じゃないか?
例えアーカネル騎士を続けるにしてもな」
そうかな? シュタルは訊くとランバートは答えた。
「俺はそう思っているけどな。
そのうち母さんに殴られ、ネシェラ執行官に蹴られる人が現れたりしてな!」
シュタルは楽しそうに言い返した。
「その前に兄貴こそ、お母さんに報告できるような相手を作りなよー♪」
そっ、それもそうだな――ランバートは冷や汗をかいていた。
シュタルはティンダロス邸のリビングから出てくると、そこにいたのはロイドだった。
「あっ、ロイド!」
シュタルは心配そうに彼を見ていた。
「なっ、なんだ、どうしたんだ!?」
ロイドは彼女の態度に驚いていた。
「う、うん、だって――今回の件が終わればアーカネルを去っちゃうんだよね……?」
ロイドは悩んでいた。
「だな、寂しくなっちまうが――俺もシュタルに会えなくなるのはちょっと寂しいな――」
そう言われるとシュタルは涙を浮かべつつもなんだか嬉しそうだった。
「ホント!? そう言われると……なんかちょっと嬉しいかも……」
それに対してロイドは照れた様子で答えた。
「別れは……苦手なんだよな……。
だから……また会おうって気持ちでいたいんだよな――」
ロイドも寂しいのか、シュタルは訊くとロイドは答えた。
「こう見えて俺も寂しがりで人懐っこい性格だからな、
シュタルの気持ちはよくわかっているつもりだ。
だから――もう僅かな期間しかないが、お互い、最後の最後まで悔いの残らない仕事をしたいもんだな。
その後は――定期的に会う機会でも作ろうぜ」
そう言われてシュタルは嬉しそうだった。
「やっぱりロイドってイケメン! ライアと仲良くしてね!」
そう言われてロイドは照れた様子でその場を去って行った。
だが、今度はその場に例の厄介者が現れ――
「ああ、できるだけ、彼のためにいろいろとしてあげてほしいな、私からも頼むよ」
と言った、どういうこと? シュタルは訊いた。
「彼は精霊界に昇るんだ、そうなると、もう二度と会えないことになってしまう――」
えっ!? シュタルは驚いたが――
「でもそっか――ロイドって本当は――第4級精霊なんだっけ――」
スクライトは頷いた。
「そう、父親のケジメをつけたいんだ。
ケジメというより、この世界を頼むっていう感じで飛び出したのがティバリスなんだ。
直接見て回れって2人の子供に託したと言っていいだろう。
それでロイド君は精霊界に、ネシェラ嬢はアトローナに、だね――」
兄妹でバラバラの道――
「そっか、2人とも、強いんだね――そうなっても生きていけるんだ――」
スクライトは頷いた。
「そうさ……どんなに距離は離れていてもいつも一緒だからね」
このクサレキャラの癖に妙にいいことを言うのはなんなんだ。