が、それで生まれたのがあれである……こういう人は怒らせると大体怖いの典型とも言わしめるあのセリフだった――
いいんだか悪いんだか。
「いいなあ! ねぇちゃんよぉ!」
「イイオンナだなぁ! 俺と一緒に遊ぼうぜぇ!」
「はい! 間に合ってます!」
断るの早っ……セレイナは間髪入れずに答えたが、害虫は――
「いいじゃねえかよ! ほら、行こうぜ!」
「行こうぜ行こうぜ!」
と、害虫共は彼女の腕を強引に引っ張ろうとしたとき、
彼女はとっさによけると片方の害虫の汚い腕をつかみ――
「はぁっ!」
「ぐはぁっ!」
勢いよく背負い投げ! まるでネシェラである。
そしてそのままもう片方の害虫を翻弄しつつ――
「ぶほぁっ!」
棒を使って害虫の背後から足元を思いっきり救い上げた!
「だから嫌ですって言ってますよね?
これ以上しつこいようなら豚箱に送り込んでもいいんですよ?
それとも……命を諦めてみます?」
怖い! セリフを教えたのはネシェラである……なんかいろいろ間違えてない?
そして彼女は……リアントスの強い彼女はこの能力を以て現地執行官となるための試験に臨んだのだそうだ……。
というセレイナの戦闘能力だが、なんとなくネシェラに通ずるものがあるのはお分かりいただけるであろうか。
「これ! おいしいですよね!」
セレイナはにっこりとしていた。
そうそう、話は戻って2人は午後のティータイムをとっていた。
「ほんと、いいわね、これ。」
するとセレイナはネシェラをじっと見つめていた。
「ん? 何?」
セレイナは訊いた。
「ネシェラさん、この戦いが終わったらアトローナに行くんですよね?」
ネシェラは目をつむりながら肉じゃがを食べつつ答えた……あなた本当によく食べるのね――。
「まあ……そうね、本来ならそれが私の選んだ道だからね。
第4級精霊の縛りについてはいろいろとあるけれど、
私がシルグランディアの血を継ぐものというのならアトローナに行くという選択肢についてはNOとは言えないはずなのよ、
最初に精霊界に渡ったシルグランディアもその後で古のアトローナを拓いたみたいだしね。
それに、アトローナに行くことについては聖獣ディヴァイアスからも公認を得られているし、
後はどうするか聖獣と精霊たちとで折り合いをつけるしかないでしょうね――」
そっか……セレイナは悩んでいた。
「私もセレイナと離れるのは寂しいけどね、でも――セレイナは自分が信じた人と一緒に行った方がいいと思うよ。
それに――なんだかセレイナとは、将来またどこかで一緒に会えて、その時はずっと一緒にいられるような気がするのよ。
言ってもそれが現世なのかどうなのかはわからないけど、不思議とまた一緒にあえてすぐにでも仲良くなれる気がするのよ。
だから――セレイナとはほんのわずかな間の分かれって言う感じしかしないのよね――」
そう言われてセレイナは反応した。
「私もです! そっか、ネシェラさんもそう思ってくださっているんですね! 良かったです!」
なぁんだ……セレイナは自分を案じていたのか、そう思ってネシェラは安心した。
「セレイナ、私は何があっても絶対に忘れないからね。私とセレイナは何があってもまた必ず巡り合うの。
巡り合って、またこうやって一緒にお茶するのよ。いい? 約束したからね?」
セレイナはにっこりとした表情で答えた。
「はい! 約束ですよ! ネシェラさん!」
だが――ネシェラは悩んでいた。
「えっ、どうしたんですか……?」
「いえ、お茶できるような世界情勢じゃなかったらお茶できないじゃんと思って――」
そっ、それは――セレイナは苦笑いをしていた。
「でも、たくさんおしゃべりしましょうね!」
「それもそうね♪」
歳が同じせいなのかわからないが、この2人は妙に仲が良かった。