するとそこにさらに――
「なっ!?」
近づいてきた存在にフェリンダは驚いていた。
「すまんな、結局はこうするしかないのだよ」
ドラストスは落ち着いたように話し始めるが、フェリンダは激昂していた。
「彼女を放せ!」
その娘はアルクレアだ! 彼女は目をつむったままその場に佇んでおり、別の精霊が彼女と一緒にいた。
それに対してロイドは慌てて駆け寄ろうとしたが――
「くっ……」
その別の精霊に阻まれていた。
「よい……その娘を引き渡してやれ――」
ドラストスはそう言うと、別の精霊は戸惑いつつも、ロイドの元にアルクレアを渡した。
それに対してフェリンダは――
「どういうつもりだ! 彼女は関係ないだろう!」
そう訴えるとドラストスは答えた。
「関係ないことはなかろう?
言ってしまえばお前の片割れとなる精神がこの娘の中に入っておるのだからな。
魂を割るどころか自立したもう1つの精神を作り出すすべを持つとはお前はいつも我々を超えてくるな。
だが……そのせいでお前にとって必要なものが取り出せぬことになっておる……
だからその娘にも協力してもらうしかないのだ――」
すると、ドラストスは祈りを捧げると、アルクレアとフェリンダの身体の中から何かが飛び出してきた!
「余計なことを――」
フェリンダはそう言いつつ、飛び出してきたものを受け取った、精霊石のようだが――
「使うつもりはなかったから置いてきたつもりだろうがそう言うわけにはいかん。
私としてもお前がそれを持っていれば安心できるというもの、
それを持ってものを言うのであれば他の者も納得するはずだ、どうだエードビアス?」
エードビアスは落ち着き払った様子で答えた。
「フン……まあいいだろう、くれぐれも自らの力の存在を忘れぬことだ――」
その場は元に戻った。高位の精霊たちの姿はなくなっていた。
「うん……えっ!? えっ!? えぇっ!? 私、どうしちゃったんだろ!?」
アルクレアは驚いていた、周りの光景がいきなり変わっていたのである。
するとシルルは――先ほどの大いなる精霊様のような見た目は消えており、
これまでの鎧を着た女戦士の姿に戻っていた。
「さあな、私もどうしたもんだかよくわからないな。
とりあえず、こんなものを見つけたからネシェラに武器でも作ってもらうといい――」
その精霊石を彼女に委ねると、アルクレアはなんだか嬉しそうに受け取りつつ、ネシェラの元へ向かった。
「なっ、なあ……あんた、本当にあのフローナルだったのか……?」
ロイドは恐る恐る聞くとシルルは答えた。
「ああ……どうやら本当のことだったようだ、私の中にこのような大いなる存在が眠っていたとはな。
だが――不思議と嫌な感じはしない、なんていうか、今までの自分がそうだったという感じしかしないのだ――」
そうなのか、ロイドは頷いた。
「本当は禁忌なる力なんだろう、破壊の力が扱える俺の力は――」
シルルは頷いた。
「禁忌だろうがなんだろうが必要なものは必要なものなのだ。
それに、お前なら例え禁忌なる力だろうと正しく扱えると私は信じているからな」
シルルはそう言いつつアーカネルに戻っていった。
「俺なら――使えるか……」
ロイドはこぶしを握り締めていた。
「どうだい? 精霊界に行く気になったかな?」
そこへスクライトが現れた。
「んだよ、テメェ……このことを予期していたな!」
ロイドは怒り気味に言うとスクライトは得意げに答えた。
「もちろんさ! だから言ったんだよ、精霊界に昇れってね!
いや……これはむしろ昇るしかないという理解でいいと思うね、
キミはまさに破壊の力を振るう能力を持っているんだ! まさにキミ自身の存在がこの世における禁忌なる者!
だが、それが世界を管理する側として何かしらの役目を全うする者であれば誰からももんくは言われないよ。
つまりキミは自由になれるんだ! うん、そうだ、それしかない!」
「黙れ! どこが自由なんだ! クソッ……下手に破壊の剣を振るうんじゃなかったな……」
ロイドはとても後悔していた、しかし今更遅い……。