ということで、ライアが真っ先にやってきたのが自分の姉、アルクレアのもとである。
彼女はティンダロス邸の庭でなんだか思い詰めた様子だった。
彼女はまさにサイスと共にひっそりとした生活を送ろうと考えている身である。
「確かにそうだね、最後なんだよね――」
アルクレアはライアの話を聞いて感傷にふけっていた。
「でも、大丈夫だよ、みんなここにいるからね……。
それはライアやロイド君、ネシェラちゃんやサイスだけじゃないよ、ティバリスもエルヴァランも、そしてレギナスも――」
彼女は胸を押さえながらそう言った、そう言われてみれば――彼女は風雲の騎士団の頃からだったか、ライアは頷いた。
「お姉様は前の仲間もいるものね。
でも、そんな風に考えられるなんて――強いのね、お姉様って――」
アルクレアは首を振った。
「そんなことないよ、私はネシェラちゃんとロイド君にそうだって教えられたんだよ。
ネシェラちゃんもロイド君も強いんだよ、幼いころに両親を亡くしているはずなのにすごくたくましく生きているんだ、
でも2人とも、今では本当に立派じゃない? すごいと思わない?」
言われてみれば確かに――ライアは考えた。
「本当は2人とも、どこか寂しいところがあるハズなんだけど――でも、全然それを感じさせないんだ――」
アルクレアと話をした後、ライアは次はテラスにいるネシェラのもとへとやってきた。
ネシェラと言えば、戦いが終わったらアトローナに行くと決めていたはずだ、
だから案外いつでも会えそうだが――
「そうね、これで終わりなのよね――名残惜しいわねぇ……」
ネシェラは悩んでいた。
「やっぱり、ネシェラさんも寂しいですよね――」
セレイナが訊くとネシェラは頷いた。
「それはもちろんよ。
だって――誰にでも会うことは多分できるだろうけどね、でも覆水盆に返らず――この日々は二度と戻らないのよ、
だから……いつそんなことがあっても悔いのないように生きていないとやってられないわね――」
あっ、ナナルと同じことを言うのか……年齢差にして彼女とは40歳差もあるのにそれを言い出すネシェラ……
それだけに達観しているということである、なんだかすごい。
「そうですね! 私も後悔したくないです!」
やっぱりネシェラには敵わなかった。
次にやってきたのはミストガル門のやぐらから外を眺めているリアントスのもとである。
「よう、何かあったのか?」
「ええ、この戦いが終わったらアーカネルを去ろうと思ってね――」
リアントスは頷いた。
「ロイドと一緒に行くか、まぁ……あんたにはそれが一番なんだろうな。
知っていると思うが俺もここを去るつもりだ、セレイナと一緒にな――」
ライアは頷いた。
「ええ、そうしてあげて。
彼女はあなたを追ってきたんだから、そうしてあげないとぶつわよ」
リアントスは頭をかいていた。
「怖いな、ここの女共は……」
リアントスは改まった。
「だが、ロイドは第4級精霊ってやつだ、言ってしまえばデカイことを成し遂げようとしているらしいが……
あんたはそんなやつについて行こうって言う腹だ――あんたはそれでいいのか?」
ライアは頷いた。
「もちろんよ! 私はロイドが行くって言うのならついていく覚悟よ……もう決めたのよ」
リアントスは悩んでいた。
「やれやれ、あいつもとんだ女に惚れられたもんだな――」
ライアは得意げに答えた。
「あなたもそのデカイことというのを成し遂げてみたらいかが?」
えっ、俺……リアントスは呆れていた。
「俺、あいつと違って人間なんだが」
「どうかしら? 関係あると思う? この世界に等しく生きる者でしょう?」
いや、だからどういうことだよ、リアントスは悩んでいた。
サイスとルイスが話をしていた。
「サイスも去ってしまうんだってな」
サイスは頷いた。
「はい。まさか、ルイスさんもですか?」
ルイスは頭をかいていた。
「ま、続けられて、あと4~5年ってところだな。
若い頃から結構無茶ばっかしてたからな、これ以上は流石にやめておいた方がいいなと思ってな――」
と言いつつ、ルイスはサイスに右腕を差し出した。
「確かに、それもそうですか――。でしたら早めに退役されてもよかったのではないですか?」
ルイスは首を振った。
「いやいや、それはそうなんだが、でも、身体がまだしっかりと動くうちはやるだけのことはやりてえなと思ってな。
それに、せっかくネシェラ執行官からいい右腕をもらったんだから、どうせだったらもっと動かしてえなって思ってな――」
そう、ルイスは右腕はまさかの義手だった。サイスは呆れていた。
「やれやれ……ルイスさん、戦いは今回で本当に最後ですからね。
その後もどうしても続けるというのでしたら、実働隊は控えてください。
裏方に回ってくださいね――」
ルイスは力強く答えた。
「おう! それはもちろんだ!
だってな――滅茶苦茶なままのアーカネルへこれからやってくる若者に後始末をつけさせるわけにはいかんだろう――」
それもそうか……サイスは考えた。