一方、時同じくして、最後の戦いに備えてスティアはリオルダート島に向かっていた。
彼は自分の家に戻っていた。
「ただいま――」
そこに待ち構えていたのは――
「ふん! なんだぁ? ハンターになってアルクラディオスへと飛び出していったかと思えば今度はアーカネル騎士になっているだぁ?」
それは自分の兄貴、フラームス=オルダートだった。
「しかも分家のやつと一緒だそうだな? 例のエターニスのライト・エルフとかとも一緒だってな!
まあいい、結局弟とはいえ、所詮は腹違いの者――俺とお前とじゃあそもそもが違うからな!
そしてお前の仲間たちも所詮は同じ穴のムジナだな!」
腹違いの兄弟じゃあ無理もない、どうやら兄貴との確執があるようだ、リアントスが言っていたのはこのことだったのか。
するとスティアはそう言われたことに対して憤慨していた。
「黙れ! 黙れ! 黙れぇええええ!」
それにはフラームスも流石に驚いていた、自分には一切抵抗してこなかったスティアが初めて抵抗した瞬間だったようだ。
「なっ、なんだよ!? やるのか!?」
「俺はなんと言われようとも構わない! でも、頼むから仲間のことまで悪く言うのは辞めてくれ!
あいつらはすごくいいやつらで、一緒にこの世界を平和にしようと考えているんだ!
そんなやつらまで悪く言うようだったら俺はたとえ相手が兄貴だろうと許さねえ!」
そう言いつつ、スティアは槍を取り出して構えていた。
その様子におつきの者が警戒して慌てて武器を取り出すが、フラームスはそれを静止した。
「一緒に世界平和だと……!?
ほう――お前が世界平和とやらをもたらしてくれるって言うのか?
そいつは面白れえじゃねえか、やれるもんならやってみろよ!」
そう言われてスティアは得意げに答えた。
「へん! 上等だ! そんなの簡単だ! やってやろうじゃねえか! じゃあな!」
スティアはそう言いつつその場を去ろうとした、すると――
「おい、待て――」
フラームスは静止した、スティアは何事かと思って振り向くと兄貴は頷き、おつきの者に何やら合図した。
「えっ、よろしいのですか?」
「いいからさっさと持ってこい、
どうせ俺には無用の長物、ちょうど処分に困っていたところだしな――」
そう言われて慌てておつきの者は何かを持ってきた、それをスティアに手渡した。
「こっ、こいつはまさか――!?」
フラームスは答えた。
「お前も知っての通り、リオルダートの開発現場で発掘された古代の兵器とやらだ。
俺が使おうかと思ったが、お前も知っての通り俺は手足が少々不自由でこんな重たい武器を扱うのにはちと骨が折れる。
結局持て余しているだけだから処分しようと思ったら都合よくお前が現れてな」
スティアは嬉しそうに答えた。
「ありがとうな兄貴!」
しかし、フラームスは素直ではなく、
「礼を言われる筋合いはねえ、処分するつもりだったからな。
適当なところに捨ててこいって言ったつもりだが――まあ、お前の好きにすればいいんじゃないか?
そうと分かればいい加減目障りだからさっさと消え失せろ」
そう言われてスティアは今度こそ屋敷を後にしようとしていたが――
「おい、スティア……別にお前みたいなのを心配するつもりはねえんだが、
それでもお前みたいなのでも本当に死んじまうとそれはそれで胸糞悪いからな。
だからお前がどこで何をしようと構わねえが――少なくとも生きて帰って来いよ」
なんだかんだでスティアのことをとても心配している兄貴だった。
「俺は死なねえ!」
スティアは元気よく屋敷を去って行った。
「ふう、やれやれ……あいつに限ってそんな心配はなさそうだな。
おい、そこのお前――」
フラームスはおつきに対してそう言うとおつきは慌てて言った。
「いや、あの、ですが――心臓のことはお伝えしなくても――」
「いいんだ、あいつにはどうせ助からねえ俺の命のことで心配してほしくはねえからな、
俺を心配したせいであいつに死なれたらそれはそれで困るだろ?
少なくともあいつがもたらしてくるって言う世界平和だけでも拝められれば俺は十分だ。
俺の遺産や屋敷のものはすべてあいつに譲ることにする、残念なことにそれしか道はねえが――
でも、久しぶりにあいつの顔を見て、それも悪かねえかと思っただけだ。
気が変わんねえうちにそれで話をつけるようにしてもらえるか?」
態度が横柄な彼ではあるが、余命いくばくもないということから少々自暴自棄になっているということである。
だが、どうやらスティアに対する見る目は変わったようだ。
「俺はあいつのことがずっと気に入らなかった。
それで俺はずっとあいつにはつらく当たっていたが、
あいつは俺に対して一切反抗しようなんてそぶりを見せることはなかった。
なのに……こんなんなってから初めて反抗され、初めて礼まで言われるとはな――」
ディアはスティアがフラームスから譲り受けた古代の兵器……大きな槍を磨いていた。
「ふーん、リオルダートにこんなものがあったんだなぁ。
リオルダート島って昔から”邪悪の眠る島”って言われていたからね、
昔の勇士たちによってそいつは封じられたっていう逸話があるけど、その時代のものなのかもしれないな」
そうなのか、スティアは頷いた。
「でも、今の時代の勇士は俺たちだ! そうだろ!」
こいつのこんな前向きなところはいいことだな……ディアは考えた。
「そうだ、その通りだな!
いよっし! 待ってろよ、可愛くて綺麗なお嬢様方~♪」
こいつはそればっか。ネシェラにハイキックされろ。