ヴァルハムスは説明した。
「”太陽の石”と対になるもの……”月影の石”とでもしておこうか、
そもそもそれが天然で作られることはなく、何かしらの人工的な力が加わった場合のみに限られる――
人工的な力といっても大半が魔法的な力を用いた場合だがな」
さらにそのうえで絶望的なことをヴァルハムスは語る……。
「無論、それを生成するには”太陽の石”と同じ刻を経過する必要があるからこれから作るとなるとさらに数億年十数億年以上はくだらない」
つまり、アミラとラグナスのやっていること自体が計画倒れ――
「なんてこったい! ってことはどうにもならないってことじゃないか!」
ヴァルハムスは首を振った。
「いや、それが実現ができるのだ、”太陽の石”があればな。
但し、そのためにはもう一つ道具が必要なのだ」
それはどうすれば? どんな道具なのだ? ラグナスは訊いた。
「この世界には光があれば影がある――
それと同じように、裏の姿となるものを映し出し、実体化させるという不思議な鏡があってな、
それももちろんアーティファクトと呼ばれるものなのだが――」
なんだって!? そんなものが!? 何人かは驚いているとネシェラは考えた。
「なるほど、裏の姿……”太陽の石”があればそれと対になる”月影の石”が複製できるって寸法ね――」
ヴァルハムスは頷いた。
「ある場所は大体わかっている――」
クレメンティル大聖堂にて。アーカネルの騎士も混ざってなんとも慌ただしい状態となっていた。
「末端のほうはクリストファーの目論見については一切伝えられていないのだそうだ、
当然と言えば当然か――」
レイランドが言うとアレスは頷いた。
「そうなんですね。ところで例の部屋なんですけど、状態はどうです?」
アレスが訊くとレイランドが答えた。
「ああ、アーカネル騎士たちがいろいろとやっていたんだけど、
話を聞いて全員部屋からは撤収させたよ。
現場が慌ただしい状態だから私が案内しよう、今から行くかい?」
アレスは頷いた。
「お願いします!」
ということで、一行はその部屋へとやってきた、
例のクレメンティル騎士団とロイドが対決した部屋までやってきた。
「ネシェラ、もう一度作図してもらえないか?」
ヴァルハムスはそう訊くとネシェラは頷いた。
「一度この部屋を作図したんだけどね、見えているもの以外では特に何も見つかんなかったわよ。
でも――”太陽と月の鏡”があるってことなら……どのあたりがポイントになるの?」
と、ネシェラは言いつつ、台の上に様々な砂埃などの砂礫などを魔法の力で手繰り寄せると、それらの礫で作図した――ますますヤバイ能力だ。
てか、もう目的のブツを命名したのか。そしてその図をヴァルハムスはまじまじと眺めると――
「例えばこことここだな。
あとはこことここ――このあたりもそうだな――」
ヴァルハムスは巨体に似合わないほどの小さな指先でそれを指し示した。
ネシェラはそれを眺めると――
「なるほど、まさに鏡ってワケね、
鏡を配置して実際に鏡の力を行使したから故のレイアウトってわけね?」
レイアウト? アレスは図を見て納得した。
「確かに! ところどころ線対称になっている個所がありますね!
これが鏡の力ですか!?」
ヴァルハムスは頷いた。
「問題は鏡が今でもここにあるかどうかだが、
少なくともその力が行使された痕跡だけでもあれば精霊石にその力を宿して作り出すことはできる可能性はありそうだ。
だが、その場合も面倒なことには変わらん――」
アレスは頷いた。
「分かりました、もし、あるとするならばこれらのどこかにあるんですね?」
するとネシェラ――
「もう一度作図するわよ、ちょっとそこ退いて――」
と、彼女は太陽の石を握りしめながら言った。
「まさか――なるほど、それの力を使えばさらに絞り込めるのだな?」
ヴァルハムスが言うとネシェラは頷いた。
「作図される方は太陽の陽の力のほうが強く出るけど鏡があるのなら陰の力が働いて作図されないと思うんだけど――」
だが、彼女の目論見は外れた――
「どうやら、鏡の力が行使された箇所がもれなくそのような状態になっているようだが――」
まあ、それはそうか――ネシェラは複数の作図されない場所……穴ぼこを眺めながらため息をついた、が――
「ん? ここの穴だけ妙に大きくない? ちょうどアレスが立っている場所よ――」
えっ!? そう言われてアレスは焦っていた、何があるって!? そのあたりを見渡すが何か――
「ん? あれ? これは!?」
アレスは何かに気が付いた――
「この光、どこから反射している光ですかね?」
それにはネシェラとヴァルハムスも注目していた。
「これは――」
ヴァルハムスはそう言うと、ネシェラはアレスに言った。
「そのテーブルの上――手でさらってみてよ。」
えっ……そう言われてアレスは言われた通りテーブルをなでるように手を動かしていると――
「ん? 何か当たったぞ?」
その場には一見すると何も見えないようだが、アレスはそれをつまんで取り上げる動作をすると――
「なっ、なんか明らかに何かあります! これ!」
アレスは何かを手に持っている! するとアレスは気が付いた。
「こうかな?」
アレスは鏡についている掛け布を使って鏡を覆った――そこには明らかに円形のものが――
「大手柄よ将軍様。やるじゃないの。」
ネシェラは得意げに言うとアレスは冷や汗を垂らしていた。
「いや……まあ……その――」