ディアはヴァルハムスとサーディアスと共にとある場所へとやってきていた、エルナシア大連山のふもと、シュリウス遺跡である。
「太古の古代文明――もうちっと高度な文明だと思っていたんだけど、まさか魔法――」
ディアは悩んでいるとサーディアスが答えた。
「高度文明でも魔法は必要とされた証だってことだよ。
そもそも魔法が廃れた文明っていうのは意外にも最近のアーカネリアス期ぐらいしかないんだよね」
そうなのか!? ディアは驚いているとヴァルハムスが答えた。
「それこそこのシュリウスが栄えたのはマーシャの話にもあったグローナシアの時代のことだ。
それから長らくは世界がいくら滅びを迎えようとなんらかの形で細々とこの土地には何かしらが出来たりもしたもんだが、
シュリウスが栄えた頃に比べれば特に長続きせず、ほとんど現状の形をとどめているのが通例のようだな。
この地には何かがある、それは間違いなさそうだ――」
そう言いつつ、ヴァルハムスは遺跡の奥へと行き、山の斜面のほうまでやってきた。
「クロノリア山の麓へと行くぞ」
ヴァルハムスは言うとディアが訊いた。
「そうそう、なんでクロノリア登山道とかじゃダメなの?」
サーディアスが答えた。
「登山道は登山道としてクロノリアの民が加工してしまっているからね。
僕たちが探しているのは上の方で魔法が長らく使用されていた未加工の地質だよ。
だからクロノリアのフィールドから漏れ出してくる魔法エネルギーの影響を受けていることはもちろんだけど、
加工されずに手つかずの状態で保存されていなければ”マーシャ・ライト”は作られないんだ」
なるほど……ディアは頷いた。
少しだけ話は遡り――
「ティルフィングの材料はあとは……何かしら?」
ネシェラが訊くとマーシャが答えた。
「”ルーン・メタル”ですね――」
またしてもミスリルと並ぶ伝説の鉱石の名前が……。
「ローアの時代に精霊界でそろえた材料?」
ライアが訊くとマーシャは頷いた。
「これが生成される過程は聖獣様もよく知っておいでかと思いますが、心当たりはありますか?」
ヴァルハムスは頷いた。
「昨今のアーカネリアスの魔法事情からすると、エターニスかクロノリアの麓が適切だろうな。
エターニスは……まあ、いろいろと面倒だからクロノリアの麓、シュリウス遺跡側で探すのが適当だろう。
だが――あんな鉱石、加工するにも大変だぞ? 本当に使えるのか?」
マーシャは頷いた。
「古のシルグランディア様からやり方は窺っています、ネシェラさんにお伝えすればできるのではないかと――」
「なるほどね、精製の仕方は知っている、と……。
んじゃあマーシャさんにお任せな石ってことで未精製のルーン・メタルのことを”マーシャ・ライト”って呼ぶことにしようかしら?」
ネシェラは得意げに言うと、言われたマーシャは照れていた。
「そんな、私の名前を付けていただけるなんて……」
ロイドとリアントス、そしてディライドが瀕死の状態でティンダロス邸へとやってきた。
「あら♪ 早かったわねぇ♪」
ネシェラは得意げに言うが、3人はそんな彼女の態度に腹を立てていた。
「じゃねえだろ……あれはマジでやばいやつだろ――」
「よくもあんなの簡単に斃して来いって言うなお前……」
「まったくだ、できればもう少し人選考えてくんないか……?」
ネシェラは得意げに答えた。
「あら! 泣き言?」
「違う、ただのクレームだ! 大昔のやつはもっと強かったんだろうが今の時代のやつでも十分やばいって言ってんだ!」
なるほど……ロイドに言われてネシェラは悩んでいた。
「ま、でも、その様子じゃあうまく行ったみたいね。
で、問題のブツは?」
するとそこへ外からシルルがやってきた。
「流石に大きすぎて城下に運び出すことができない。
だから悪いが外に来てくれるか?」
その光景にネシェラは圧倒されていた。
「えっ、嘘でしょ……よくこんなデカイの持ってるやつを相手にすることができたわね……」
だからそうだって言ってるだろ! 3人は呆れていた。
「うわっ!? なにこの大きいの!?」
そこにやってきたシュタルも驚いていた、オーレスト門の入り口には金色に輝くとんでもなく大きい物体が街道を塞いでしまっていた。
「これ? これが正真正銘の”キング・ベヒーモス”の角ってやつよ。」
でかっ! キングの大きさはもはや山に違いない……。
アルクラド大平原で現れたということでネシェラから角を持ってきてほしいと頼まれた男3人とシルル、
斃すのはもちろんだが、よくこんな大きなものを持ってきたもんだ……。
「パタンタのわきにおびき寄せたからな、そこでトドメを差したら山脈の上に項垂れるように倒れこんだ。
あとは山脈上で角を切り出して持ってくるだけだ、私としてはそっちのほうが骨が折れたがな」
流石シルル、斃すことは二の次……いや、てか、つまり山よりもデカい魔物とか、とにかくやばくないか!?
とはいえ、少なくとも山のようにデカいというぐらいの事なんだろうが、大きいと言っても流石にたかが知れているし。
「シルルお姉様もありがとう! よし、これだけあれば精霊石の生成は十分そうね!」
えっ、それを作るために……
「生物系の物質で生成するとは言ったがまさかそのための材料?」
シルルは訊くとネシェラは答えた。
「そういうことね。
しかも驚異的な魔力を振るう魔物のパワーだから角の芯のほうのパワーはものすごい力を含んでいると思うわね。
これを採取できればいいんだけど、とても堅そうね……」
すると、シルルはおもむろに――
「はぁっ!」
なんと! まるで細長いアメを切るかの如く角を両断!
「これは確かに硬いが……これでいいか? さらに小分けにするか?
そこまでするのは流石に大変だが……」
「ええ! でも、できればこれを車輪状にしたら転がして持っていった方がいいわね!」