ということで話の続き。アミラが話を始めた。
「高位の精霊たちもあんたたちを支援しているということが分かったところで話を続けようか。
あんたたちが戦おうとしている敵がいかに強大かわかったかい?
だからそれだけの準備と覚悟が必要なんだよ。
まあ――覚悟は個人個人の問題だからね、それを乗り越えたらあと必要なのは準備だけさ」
準備……例の破壊の剣が必要なんだろうか。
「そういえば――こういう時に必要なピースが足りていないね、まずはそれを探そうか」
何の話だろうか、アミラは続けた。
「この世界には必要な時に備えて必ず現れる精霊というのがいるんだよ。
それがいないということはまだ戦いの時ではないということだね」
セディルが訊いた。
「もしや、”封印の精霊”?」
アミラは頷いた。
「そう。封印の精霊はその名の通り、何かしらに封印されているのさ。
それと同時に、封印を破る力を持っている――破壊の灯を開くすべを持っているかもしれないね――」
なんと、そんな簡単に!?
「問題は、何にどこに封印されているのかだ。
あれは複数の場所に封印されている――封印の力の都合、
どれかの封印の力を破ることで封印解除が成立する――」
ヴァルハムスはそう言うがアミラは言った。
「複数って言ってもせいぜい3つか4つが限界だよ、
複数って言うのはあくまで必要な時に封印が解かれないと困るから予備が用意されているっていうだけのことさ。
だから、そうそう簡単には見つからないか、必要な時っていうぐらいだから既に見つかっているかのどちらかってことさ」
既に見つかっている――するとネシェラは思い立ってそれを出した。
「クレメンティルの地下の施設で精霊石と一緒に見つけたんだけど――」
それは箱のような代物だった。それにサーディアスが反応して目の前までやってきた。
「それは”封印の篭”だね、対象を亜空間に放り込んで封印させることができるっていう代物だよ。
なるほど、どうして亜空間なんていうものがあっさりできたのかと思ったら、
そいつの力を精霊石を使って増大させたってことだったんだね」
なんと、そんなことが!?
「普通に使うのでは力が足りないから精霊石を使うことでより本格的な亜空間を形成したということだね。
ということで早速封印の精霊を呼び出すこととしようか――」
と言いつつ、アミラは杖を掲げたが――
「いや、既にクリストファーの手に渡っているぐらいだからこの程度で封印が解けたらわけないね」
だったらこれに封印の精霊が封じられているのではないのでは?
「違う違う、手順が違うんだよ。
確かにこいつには封印の精霊が封じられているような感じがする、だからあとは正しい手順でなければダメなんだ」
アミラはそう言うとスクライトが言った。
「だが、我々はその手順を知ることはない。
しかし、そんなことを知らずとも金色に輝くマスターキーがあれば容易に封印を解除できるんだよ」
金色に輝くマスターキー? リアントスは思い出してポケットの中からあれを取り出した、そう――
「アーティファクトにはアーティファクトをってか?
そういうものだったらここにあるが――これでなんとかなるか?」
そう、黄金の鍵である。
「おおっ! 都合がいいところに! よく持ってきてくれたね!」
お前が必要だって言ったんだろ――リアントスは呆れていた。
「さて、問題はこれでめでたく現れてくれるかどうかだ。
ここへきて、まだ必要な時じゃないって言われたら私もお手上げだからね――」
その場合、逆に言うとまだ世界が滅ぶ刻ではないというふうにも捉えられる気がするが。
「さあ、いくよ! 僕も手を貸してあげるよ!」
「だな、聖獣が眺めて見ているのもよくないからな」
「封印の精霊様、力をお貸しください――」
「よーし! そういうことならいくよ! さあ、出てきておくれ!」
サーディアス、ヴァルハムス、ヴェラニス、そしてクロノーラの力を合わせると、黄金の鍵を介して”封印の篭”から何かが現れた!
「おっ、おい! 本当に何かが現れたぞ!」
ランバートが驚いていた。
「そいつはいいんだけど――俺、正直、何をやっているかわからねえんだ――」
スティアは悩んでいた。
「そんな疑問は持たなくたっていい。
ほぼ世界の管理者とかそう言う領域に入っている以上は流れに身を任せるしかないからな、
斃すべき敵はクリストファー、それ以外はやつをどうしたら斃せるか、考える必要があるのはそれだけだ」
というロイドもあまり理解していないようだ。
「概ね、高位の精霊が話をややこしくしているのよね、
連中の管理が怠慢だから下々の者がしなくていい苦労をするのよ。」
ネシェラが皮肉っぽく言うとリアントスがつっけんどんに言った。
「んだよ、つまりは俺たちは高位の精霊の尻ぬぐいをさせられてんのか?」
セディルが答えた。
「そもそも”邪悪なる者”がどこからどうやってやってきたのかがわかりません。
言ってしまうと、ローア創世と共に生み出された存在とも言われています。
精霊界ではそれを消し去るためにいろいろとやりましたが、いずれも失敗に終わっています。
そのため、精霊界では”邪悪なる者”が現れたらその都度対応するというやり方を取っています。
ですが、その方法はローア期に倣い、こちらの世界の者に任せるという手法を取っているのです」
本当に尻ぬぐいじゃないか――そんな空気の中で、封印の精霊が申し訳なさそうに言った。
「尻ぬぐいをさせてしまってごめんなさい――」
アカン! 今の話を聞いていた! 何人かはそれに焦っていた。女の精霊様か。
「いっ、いえ、その……」
ネシェラはどう取り繕うべきか悩んでいるが、封印の精霊は話を続けた。
「いえ、本当のことですからお気になさらないでください。
私がいるのもそういった理由です。
みなさんのもんくやクレームは甘んじて受け入れましょう――」
……いや、逆に言いづらいんだが……。