ロイドはさらに奥に行くと、そこにはネシェラが大けがをしたまま佇んでいた。
「おい! 大丈夫か、ネシェラ!?」
彼女は頭から血を流していたが、その手には守護宝石が……
「クリストファーから無理やり奪ったのよ、あいつはこの先にいるわ、私は――ちょっと疲れたからここで休んでいるわね――」
しかし、ロイドはネシェラを抱きかかえた、お姫様抱っこである。
「放っておくわけにはいかねえだろ? ったく、世話の焼ける無茶な妹だ――」
そう言われたネシェラ、何も言わずにただただ息を切らしているだけだった。
さらに奥へと進む2人、これは何処に続いているんだろうか。
するとそのうちネシェラは――
「気を付けて、守護宝石の効果範囲から外れるハズよ……」
と、言うとロイドは訊いた。
「クレメンティルでの効果はわかったが、外れると失われるのか?」
「まあ――何かしらのお守りにはなるんじゃないかしら、防御効果を備えた代物なんだしね。」
それもそうか、ロイドは捨てずにとっておくことにした。
「そうそう、悪用を防ぐためにあとでクレメンティルの守護宝石の力場を破壊しておかないとね。」
それもそうだな、ロイドは考えた。
そのうち外に出てきた、そこは――
「なんだ!? 山のふもと!?」
ロイドは驚いていた。するとネシェラは――
「ミストガルド山の南東側かしら? 見てよ、あれ――」
東のほうを指さした、そこには”彩りの大地”が広がっていた――
「なんでここに出てきたんだ!? てか、距離的にはもう少し時間がかかってもおかしくはないハズだが……」
「魔法で距離を誤魔化しているんじゃないかしら?
クレメンティルの力場があるということは、それぐらいの細工を施しておいても――」
そう言うことにしておこうか。するとそこへアレスの声が――
「なんだ!? どうしたんだ!? クリストファーは!?」
「そんなことより、他のみんなは大丈夫なのか!?」
ネシェラはか細い声で答えた。
「言ったでしょ、お兄様なら絶対にわかるって。
んなこといいから、クリストファーがどうなったのか教えなさいよ。」
いや、ネシェラはそれどころじゃあないんじゃあ――アレスは困惑していた。
「この程度で死にはしないから大丈夫よ、ちょっと休めば元気になるってね――」
いや、でも心配だ……。
アレスは2人を案内した。
「この穴の中なんだけど――」
アレスはその場所を指さすと、2人はそのまま中へと入った。
そこにはシルルがいた。
「クリストファーはこの炎の中に消えた――」
炎? すると、そこには泉の上に青く不気味に燃え盛る炎があった。
「これは――ウスライトに訊けばわかるんじゃないかしら?」
ウスライトと言えば――ミストガルド山道の魔導士の中に混じっていたような。
それから数時間後――
「なんてこった! メシアが弱ってる!」
スクライトは泉の脇でぐったりと倒れているネシェラを見て唖然としていた。
「いいから、話しかけないでよ、辛いんだから……。
それより、その炎が何なのか教えなさいよ。」
そこへ、スクライトと一緒に来たセレイナが慌ててネシェラのことを優しく包み込んでいた。
「あら嬉しい♪ これならものの10分で元気になれそうね♪」
いいから――しばらくおとなしくしていろよ――ロイドは頭を抱えていた。
「で――ウスライト、何かわかったのか?」
と、シルル――あんたまで言うのか、ウスライト――いや、スクライトは悩んでいた。
「これは――”破壊の灯”ってやつだね、世界が破滅する兆しを迎えた際に現れるって言う伝説のアーティファクトさ――」
なんだって!? アーティファクト!? 世界が破滅する兆し!?
「こいつがそうだっていうのか!?」
ロイドは訊くとスクライトは頷いた。
「いわゆる、世界が破滅するということをフラグにして具現化する代物ってことさ。
そんなフラグが立っていなければ炎はおとなしくて小さい形だけど、
この大きさではまさにそれを予告しているといっていいだろう、そういうことだね。
恐らく、クリストファーが探っていたアーティファクトはこの炎だろう。
この炎の力を借りれば破壊の力が増大する、まさにそう言うことだと思うね――」
シルルは訊いた。
「だが、クリストファーはこの炎の中に消えていった、どうなっているんだ?」
スクライトは炎に手を当てていた。
「なるほど、そう言うことか。
この炎の中には”亜空間”が展開されているようだ、”亜空間”というのは空間であって空間でないもの、
だけど空間であるという非常にややこしいものだけど、つまり、人工的に作られた空間と言えば正しいか。
なんらかの力で入口を開くことができれば中にいるクリストファーの元へとたどり着くことができるかもしれないね――」
そして、クリストファーの野望を止めなければ――
「世界は滅びる、か……。なら、どうすれば?」
アレスは訊くとスクライトは答えた。
「ここまでくると、流石の私でも手におえないよ、まずは聖獣の話に耳を傾けようか。
さあ、時間はないよ! 世界が滅びるまでのカウントダウンは既に始まっているんだ!
クリストファーを斃すための準備もしっかりと念入りに万全にしておくんだ!」
まさかの急すぎる超展開――彼らに残された時間は限りなく少ない――。