アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第192節 大激突!

 さらに先ほどの部屋の奥の扉へと向かった7人、その先をさらに進むと――
「これはなんだ!? まるで何かの研究室みたいだ――」
 そこにはいろんな研究道具が置いてあった――
「ネシェラちゃん、サイス、わかる?」
 アルクレアはそう訊くと、サイスはとあるものを目の前にして考えていた。
「これは――まさに独自に魔法を研究していたようですね。 というか、どこかで見たような設備ですが――」
 ネシェラが言った。
「エザント先生の研究室ね。 先生はこういうのは専行じゃあなく、 私が先生の厚意に甘えて構築したんだけど、その設備にそっくりよ。 だけど、これはまさにクリストファー自身が作った設備とみていいと思うわね。」
 サイスは頷いた。
「はい、所謂、魔法というものを科学的に扱って物理的なものに対して加工などを行う”エンチャント”と呼ばれるものの研究設備です。 そしてその結果――」
 と、サイスはそう言いつつ、とあるものの目の前にやってきた、そこは――
「これ――! まさか、キマイラ!?」
 アレスが驚いていた。
「そのようですね、キマイラはクレメンティルが生み出している―― まさに魔物そのものを生み出しているのがクレメンティルだった、レイランドさんの話の通りですね――」
 そう、レイランドはクリストファーの話には乗っていた、最初は慈善事業ということで引き受けていたのだが、 その裏ではこんなことをしている――それですぐさま関係を切ったということだった。
 すると――
「グオオオオオ!」
 シルルは反応した。
「またドレイクか!?」
 だが、研究容器に入れられたまま眠っているようだった。
「このドレイク――エンドラスの時に見たやつと同じやつ!」
 ライアはそう言うと、ネシェラは答えた、そして――
「悪いけど、そのまま一生眠っていてくんないかしら?」
 と、なんとネシェラはおもむろにその近場にあったレバーを思いっきり引いた!
「グギャアアアアア!」
 ドレイクの上から激しい放電が! ドレイクはそのまま息絶えた――。
「作られた命――いや、これは改造された生物ってところだな」
 シュタルは悩んでいた。
「うーん、聖地の上でこんな罰当たりなことを……趣味悪いなぁ……」

 そして――ネシェラはとあるところまでやってきた、そこには――
「これは……?」
 ネシェラはその場にあるものを手に取って確かめてみていた。 そこには石のような物体と、台座のごとく箱のようなものが置いてあった――
「あっ、それ! まさか!」
 アルクレアはすぐさま気が付いた。しかし、そこへ――
「うふふっ、そうよ! さあ、それをそこに置いてさっさと立ち去りなさい!」
 と、なんと、クレメンティル聖堂騎士団が! しかも――
「なっ!? まさか、エルメルダ……!?」
 シルルは驚いていた、殺されたはずの彼女が―― だがしかし、ネシェラが――
「<リターン・ブリーズ>!」
 エルメルダに生命の息吹が! 立ちどころに彼女の生命力が見る見るうちに――
「いっ、いやあっ……いやあああああ!」
 身体が崩れ去っていった――
「なっ!? どっ、どういうことだ!?」
 シルルは彼女の死体が音もなく崩れ去ってゆく様を見て愕然としていた。
「やれやれ、やっていることがとことん悪趣味ね。 まあいいわ、今のは所謂”ターン・アンデッド”ということにでもしておこうかしら?」
 ターン・アンデッド! まさか! シルルは再び驚いた。
「不死の存在か!?」
 まさか!? それには他の者も驚いていた。
「このままじゃあ完全に暗黒時代に逆戻りね。 ったく、他人の遺体を弄んで……何が楽しいのかしら?」
 ということはつまり……? シルルは訊いた。
「死んだ事実を隠蔽したいのはつまりはこれ……ネクロマンシー(屍霊術)を使って古の戦士たちを利用したいためよ。 クリストファーが隠蔽したのは彼が当時執行官をやっていたから、 だからこそアルクラドの戦いではあんな戦い方を行うことにしたってワケ。 恐らく、エルメルダはそのうちの最初の被害者であり、彼女の身体を使って研究しようと考えたのが始まり……」
 そして、ネシェラは先ほど手に取ったものを掲げて言った。
「だけど、これを使う術を思いついたからその必要もなくなった。 ただ、これの存在を知る者を生きて返すわけにもいかなくなった、 知られると困るからね、”精霊石”の存在を――」
 やっぱりそれは精霊石だったのか……。 するとなんと、奥からクリストファーがやってきた!
「やはり、ネシェラ=ヴァーティクス……お前が一番厄介な存在だったようだな。 無論、お前についてはどうするか考えてはいたが――かのウロボロスをも破る存在、 どうやら私の手で自ら決着をつけねばなるまいか――」
 すると、クリストファーは精霊石を掲げ――
「さあ、お前たちに見せてやろう、これが世の理というものだ!」
 クリストファー率いるクレメンティル聖堂騎士団が襲い掛かってきた!

 一方で、ロイドとシャービスの真剣勝負は続く――。
「ふん、無駄が多いな、リミテッド3段の腕というのはその程度のものか!」
 シャービスはスキを突いてロイドを思いっきり切りつけた! だが――
「ああ、リミテッド3段だからな、相手に余裕を見せることも可能ってわけだ!」
 ロイドはすかさず攻撃をかわすと反撃! シャービスは慌てて攻撃を避け、一気に距離を引き離した。
「そういうお宅はカイルフレアザード3段のクセして大したことがないな」
「ふん、なるほど、少しはやるようだな。 カイルフレアザード3段で辞めたのも大昔の話だ。 もっとも、もはやハンターなんぞに興味もないんでな。 それなのに――アーカネル騎士団はいつハンターのたまり場になったんだ?  やたらとアーカネル騎士共がハンターの仕事にも手を出している光景を見るぞ?」
「興味ないとか言いながらずいぶんと未練たらたらな発言だな。 もっとも、ハンターは辞めるっていう概念がない業種だからな。 来るもの拒まず、仕事したけりゃ勝手に引き受ければいいって言うだけの話であって、 したくなければ引き受けなくてもいい、それだけだしな」
 ロイドは剣を構えなおして話を続けた。
「アーカネル騎士団の今の方針では仕事を失った時に備えて食い口だけは確保しておけって言う奨励制度があってな、 騎士はもれなくハンター・ライセンスの登録に積極的なだけだ」
「そうか、アーカネル騎士も地に落ちたもんだ、騎士の仕事を追いやるようなマネまでするとは――」
「まったくだ。 でも、その根本の原因はお宅らのような世間を乱すような輩がいるせいだからな、 そのせいで過剰に人手を拡充しなければならねえのが現状さ。 要はあんたらのせいだからな、そんぐらいは自覚してもらえると助かるぜ」
 するとシャービスは剣を振りかぶり、その場から勢いよくロイドに向かって切り込んだ!
「そうか! そいつは良かったな! だったらその手間を省いてやる!  この俺がアーカネル騎士団の仕事を増やしてやるからありがたいと思え!」