アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第188節 アーカネルの栄光の裏で

 そして、この通りにあるのが例の工房である。
「ほら♪ 最後の戦いだって言われても全然違和感のないこれこそが伝説の金属ミスリルで作られた”ミスリル・ソード”よ♪」
 ネシェラは無茶苦茶嬉しそうだった。するとそこへセクシーなおねーさんが通りかかり――
「あらネシェラ♪ 素敵な武器ができたのね!」
 ネシェラを誉めていた、誉められた彼女は得意げだった。
「あらそこのセクシーなデビルのおねーさん♪ いろいろと試したい新作があるから後で付き合ってくださる?」
「まあ! それはなんだか楽しそうねぇ♪」
 もはやレミアンナは彼女の言いなりか――
「相変わらず、女の子に人気があるのもよくわかるわねぇ――」
「ほんと! やっぱりそういうところはネシェラよねぇ!」
 アルクレアとレオーナは絶賛していた。
「お前の妹さ、ますますどうなってんだ?」
「御覧の通りだ。 御覧の通りのクリエイタータイプだからな、 作ったものを自分で生かすよりも他人に生かしてもらうのが性に合っているのかもしんねえな」
 ディライドが訊くとロイドはそう答えた、裏方タイプか―― 確かに、自分が立ちそうな性格をしているくせに実際には相手を立たせたいというのが彼女の性格か。
「クリエイターゆえってことね」
 ライアは納得した。すると――
「言われてみればそうかも?  だって、騎士よりも執行官やってるってことはまさにそういうことですよね!」
 セレイナが的を射た発言をした、まさにその通りである、 騎士団の花形に徹するよりは裏方に徹する……今はむしろ目立ってしまってはいるが、 そもそもの執行官のスタンスはそういうポジションのハズである。

 ということで、戦いの準備もある程度整った、問題は敵の出方と目的である。
「目的は――まだつかめないわね。 だけど、一連の事件は大体クレメンティル……いえ、クリストファーの一味の仕業なのはだいたい確定よね。」
 ネシェラはそう言うとレイランドが答えた。
「ああ。すべてはやはり白銀の騎士団の団員の一人、エルメルダ=クアンドルの死亡がカギを握っているようだ――」
 そう、彼女はレイランド=クアンドルのお姉さんだった。
「姉の死については公式記録からは抹消されていた。だが――」
「アルクラドの戦い――あの戦いについては直接は関係していないが、 どうやらあの裏で暗躍しているやつがいたってことだな――」
 リアントスがそう続けるとエンダリフが言った。
「つまりアルクラドの戦いについては、 裏で暗躍しているのを隠すための目くらましとしてエンドラスが提案したってことだな」
 ということは――
「その裏で起きていたことが肝心?」
 シュタルがそう訊くとレイランドは頷いた。
「その通り。そして、その裏で起きていたのが――」
「なるほどね、それで青光の騎士団のリーダー死亡の話になるわけね。 名前はなんて言ったっけ?」
 ネシェラは訊くとシャオリンが言った。
「アルザック=ウェラシェンド……私も青光の騎士団に現地執行官として属しておりましたが、結成3年後に私たちは結婚しました」
 っておい! あんたも騎士と執行官の間でか! やってんな! もとい、アムレイナは続けた。
「ちょうど私とエラドリアス、そしてナナルとレギナスが結婚した時期も同じでした、 どうせだから同じ時期に結婚をしようと言っていたことをよく覚えています。 これを機に、私たち4人は正式にアーカネル騎士団を休職することにしました」
 ナナルもか……まあ、ここは騎士同士なのでギリギリセーフだが。そこへシルルが――
「もっとも、私は既に騎士団を離れて1人で活動していたけどな。 3人には当時付き合っていた彼とそれぞれ幸せになってほしい―― 私はそう思って1人で活動していたのだが――」
 というと、ナナルが訴えるように言った。
「もう! シルルってば! そんなに1人で頑張らなくたっていいの!」
 そう言われてシルルは頭を掻いていた。
「それで、青光の騎士団は解体したの? アルクラドの戦いのことが原因?」
 ナナルはそう訊くとレイランドは頷いた。
「そう――アルザックが亡くなり、当時聖剣騎士団に所属していたエラドリアスも亡くなった――」
 そこへアレスが気が付いた。
「聖剣騎士団!? お父さんが騎士団に入って最初に所属していた騎士団だ――」
 ロイドは頷いた。
「うちの親父も聖剣騎士団に誘われたって言ってたな、ハンターの力を借りたいんだとかなんとか――」
 エンダリフが言った。
「私もティバリスとは同期の同い年でね、 聖剣騎士団はディアスの黒曜騎士団とセディルの光天騎士団と同時期に結成されたんだ。 エルヴァランはエラドリアスと共に聖剣騎士団の初期メンバーで、 エルヴァランがアーカネル騎士団に入団した翌年に聖剣騎士団を結成している。 私とティバリスはその4年後に入団して聖剣騎士団に配置されたんだ」
 なるほど。そしてシャオリンが言った。
「青光の騎士団はさらにそれよりも時期が古く、王剣の騎士団と同じ時期に結成されています。 王剣の騎士団は執行官長だったアムレイナの休職により解散が決定しましたが、 青光の騎士団は私が辞めた後をラバリフ=アルマドスが引き継いでいます」
 あれっ、ラバリフってまさか――ディアスは頷いた。
「そう、青光の騎士団の解散後に我が黒曜騎士団に再配置された現地執行官だ。 黒曜騎士団には当時現地執行官がいなかったこともあり、ちょうどよい人選だったのだが――」
 しかし、2年前に毒を飲んで自殺をしてしまっていた――
「クレメンティルとつながりがあったのかしら?」
 ネシェラは訊くとディアスは首を振った。
「それはわからん。が、クリストファーとは何らかのつながりがあったのは確かだろう。 そもそも、黒曜騎士団にラバリフを配置するように命じたのはクリストファーの指示だからな――」
 なるほど、確実に何かあるってことか。