エルフェリアはイセリアを受け止めた……、彼女は両手で顔を押さえて泣いていた――
「……イセリア――」
そして彼女はそのまま悔しそうに立ち上がると、剣を持ってウロボロスに立ち向かおうとして――
「待った! イセリア! そんなんで行けるのか!?」
もはやボロボロの状態のイセリア――そう言われてがっくりと肩を落としていた――。
すると――
「あの! 取り込み中のところすみません! あれはなんですか!?」
ライブレードは2人にそう訊くと、エルフェリアは気が付いた。
「あれは……破壊の光!? また来るのか!? くっ、こんなに連続で来て、バリアが耐えられるのか――」
彼女はそう言うと、イセリアは我に返った。
「えっ!? あれはまさか――!」
イセリアはその場所めがけて一心不乱に突き進んだ!
「そうか! そういうことか! 私も行くぞ、イセリア!」
エルフェリアは何かに気が付いたようでそう言いつつ、ライブレードに話をした。
「見たところ、かなり高尚な使い手のようだな、マジック・バリアは張れるか!?」
ライブレードは頷いた。
「はい、もちろんです! 援護しましょうか!?」
「頼む! イセリアを守ってくれ!」
するとライブレードはエルフェリアに魔法を展開!
「一緒に向かわれるのならあなたにも必要だと思います!」
なんと気が利くイケメンなんだろう。
そしてイセリアは再びウロボロスの背中に乗り込むと――
「そう――こんなにしっかりと差し込んでくれていたのね――」
テュラスが使っていた例の大剣、ウロボロスにしっかりと刺さっていたが、
その剣は破壊の光を浴びて激しいオーラが立ち上っていた……。
イセリアの目からは涙が――彼女は涙を拭うと、覚悟を決めた――
「あなたの最期、無駄にはしないわ!」
イセリアは意を決して剣に手をかけると、そのまま力の限り――
「くっ……動かないっ――」
思いっきりウロボロスの身体を引き裂こうと剣を動かそうとするが全くびくともしない――。
そうこうしているうちに次第に破壊の光の兆候が――
「イセリア! この剣を引けばいいんだな!?」
エルフェリアがその場に何とかよじ登ってきた!
「エルフェリア! お願い! 力を貸して!」
「聞かれるまでもない!」
そして2人は力の限りその剣を動かした!
「こんのおおおおお!」
「ふん!」
すると――剣は一気に動き出し、ウロボロスの身体はその剣によって勢いよく引き裂かれた!
「さあ喰らいなさい、”破壊魔剣ティルフィング”!
破壊の化身の身体をそのまま喰らい続けるのよ!」
そしてそのまま2人は下界めがけて一気に剣を叩き落した!
ウロボロスの身体はそのまま徐々に破壊されていった。
それにより、参加していた冒険者たちは安心し、その場は解散しようとしていた。
そして、ウロボロスがいたその場にはなんとも禍々しい破壊の剣だけが残されていた。
イセリアはその剣を取り上げ、背中に背負っていた。
「これの処分は任せて、このままにしておくわけにはいかないからね――」
これについては彼女に任せるしかないだろう――エルフェリアはそう判断した。
ライブレードは心配そうにイセリアに話しかけた。
「ありがと、慰めてくれるのね――」
ライブレードは頷いた。
「テュラスさん、私にはよく話してくれたんですよ、イセリアさんのことが好きなんだってね……。
だから彼女に何かあったら自分が守るんだって言ってました――」
そっか――イセリアは頷いた。
「みたいね、彼のことは全部受け止めることにしたのよ、だけど、こんなことになって――」
エルフェリアも心配そうに訊いた。
「本当に、残念だ。
なんとも仲のよさそうな2人だっただけに私としても残念でならない――」
だが、イセリアはなんとも明るくふるまっていた。
「いいのよ、戦いに身を置いているんだからね、こうなることはお互いに覚悟を決めていたこと、
もちろん悲しいことは悲しいけど――でも、いつまでもくよくよしていると彼にも申し訳ないしね。
だから私は彼のためにも旅を続けることにするわね。」
するとエルフェリアが訊いた。
「待て! イセリア、お前ほどの者なら精霊界にいてくれたほうがいい!
お前のものづくりの能力は本物だ! だから――どうだ?」
イセリアは答えた。
「ものづくりか――精霊界で……多分、世界のシステムみたいなのを構築しろってことになるのかしら?
それはそれで面白そうだけど――少し、考えさせてもらってもいいかしら?
私にはまだ斃すべき敵が大勢いるからね――」
エルフェリアは頷いた。
「そうか、それならいつまでも待っている、気が済むまで世界を均してくるといいだろう、
これからお前の技にかかる悪しき者どもは運が悪いな――」
そしてイセリアはにっこりとしながら2人の前から去って行った。
「お前は一緒に行かないのか?」
エルフェリアはライブレードに訊いた。
「ええ、そのつもりでしたけどね――でも、あの様子だと、1人にしてあげたほうがいいと思いまして。
それより、私は彼女と共にいて他の冒険者をも凌駕するほどの力をつけてしまいましたから――」
エルフェリアは頷き、にっこりとしていた。
「なるほど、それならエターニスへと来るといい、お前ほどのものなら皆歓迎するだろう――」
イセリアはそのままヴァディエスの元へとやってきた。
「神の奇跡――起こしたのね。」
「はい! やっぱり信じれば奇跡は起こるんだなって思いました! ただ――」
テュラス――ヴァディエスは残念そうにしていた。
「ちょっとちょっと! まさか、私だけ、テュラスが私に気があることに気が付いてなかったってこと!?」
ヴァディエスもそれは知るところだった。
「まったく――女やっててもこれだからね、私は――。
だから、しばらくはテュラスと一緒に世界を均していくつもりよ。」
「はい! それがいいと思います!」
ヴァディエスは冒険者たちを集めてウロボロスに立ち向かおうと呼びかけたのだった。
そう――すべては神の奇跡を信じて――イセリアが言ってきたことやってきたことを彼女なりにまとめ、
それを冒険者たちに伝えたことで冒険者たちは一丸となってウロボロスに立ち向かったのである。
この世界にも教えが必要だ――人々が一つになり、そして決起するためにも――
イセリア、テュラス、ライブレード、そしてヴァディエス本人が過ごしてきた大事な時間――
それはすべてヴァナスティアの教えとして再編されることとなったのだ。
そう……彼らは時の英雄、名もなき冒険者の一部に過ぎないのだ、
あの当時、共に立ち上がった精霊フラノエル様に導かれて……。
ヴァナスティアの教え最終章、フラノエルと世界を均す者たち、完――。