アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第180節 神の奇跡は……

「させません! マジック・バリア!」
 と、まさか、こんなタイミングで救いの手が!  しかもその魔法バリアは幾重にも幾重にも重なり――
「こっ、このバリアは……」
 エルフェリアは驚いていた、ウロボロスの力はそのバリアに遮られた!
「神は亡くなったって不滅です! 信じていれば神の奇跡は起こせます!  さあ皆さん! この世界にはびこる破壊の化身を倒すのです!」
 なんと、彼女はヴァディエスだ! 彼女の後ろから次々と冒険者たちが!
「ここは俺たちの世界だ! 好き勝手させるかよ!」
「いけぇー! みんな続けぇー!」
「この野郎! ウロボロスだかなんだか知らねえがさっさとくたばりやがれ!」
 次々とウロボロスに立ち向かってゆく――
「また破壊の光だ! やばいぞ!」
「怯むな! 後ろの仲間を信じろ!」
 と、言う通り、再びウロボロスは力を展開するが――
「行きますよ! マジック・バリア!」
 ヴァディエスを中心とする魔法使いの集団がマジック・バリアを展開し、冒険者たちを一度に包み込んだ!
「これは……」
 エルフェリアはその光景を見て嬉しそうにしていた、人間界の者たちが一堂に会し、それがたとえ破壊の化身たる存在だったとしてもひるまずに戦っている……。 時にはマジック・バリアを貫くほどの一撃を受けている者がいたとしても、それでも立ち向かっていく冒険者たち……
「私もうかうかしていられないな!」
 エルフェリアは再びウロボロスに立ち向かった!

 イセリアはすぐさま回り込んでとある冒険者のもとへとやってきた。
「やっぱり、イセリアさんでしたね!」
 彼はライブレードだ!
「無事だったのね!」
「私は、3人とも無事であることを信じていました!  ヴァディエスさんからウロボロスを倒すためにやりましょうって声をかけてくださったので、 こうしてやってきたんですよ! もちろん、”奇跡”というものが起こるのを信じてね!」
 すべてはイセリアが言っていたことに端を発するようだ。

 なるほど善戦しているようには見えるものの、それでもやはり衰え知らずのウロボロス―― イセリアはそいつの顔を眺めていた。
「なによ……ったく、偉そうなやつね! もんくがあるんなら何か言ってごらんなさいな!」
 するとイセリアはその場で大空めがけて大ジャンプ!
「えっ!?」
「何っ!? まさか、ヴァルキリーか!?」
 ライブレードとエルフェリアは驚いていた。
「やれやれ、まーだ隠し玉をもってやがったのか。 でも大丈夫だ、俺の女のことだから今更驚かねえよ」
 テュラスは呆れていた。

 イセリアはウロボロスの上半身めがけて跳び上がり、 そのまま蛇の頭を狙って攻撃!
「あの位置――危なくないですか!?」
 ライブレードはイセリアのいる場所に気が付いた、マジック・バリアの効果範囲外――
「ちっ、マジかよ! イセリア! 無茶すんじゃねえぞ!」
 テュラスはそう言いながらイセリアを追ってウロボロスの身体を少しずつ登り始めた。

 イセリアは一旦ウロボロスの背中めがけて着地するとともに勢いよく武器を突き刺すが――
「ちぇっ、全然びくともしないわねぇ――こいつ、まさか抜け殻!?  いや、この感じ――思いっきり身体をぶち抜かないとダメそうね――」
 そう言いつつ再びウロボロスの頭部めがけて跳び上がった!
「だけど固くて刺さりにくいのよっ!」
 イセリアは再び全力で攻撃を繰り出した!
「イセリア! ったく、そんなことよりお前はどうなっているんだ!」
 テュラスは勢いよくウロボロスの胴体に剣を差し込むが、それでもまったく応えないようだ――。 するとテュラスはイセリアの様子を見て気が付いた。
「……芯食わせねぇとダメってことか、しゃあねえ、やってやるぜ!」
 テュラスは勢い良く振りかぶって大剣をウロボロスの身体に突き刺した!
「くぉんのやろおおおおお!」
 しかし、それでも――
「くそ! いい加減にしろよこのバケモノが!」
 すると――
「ん? マズイ! 破壊の光が!」
 その兆候に気が付いて焦っていたテュラス、その場から退こうとしていた。
「マジック・バリア範囲外だからな、下がるしかねえか……」
 そして剣を抜こうとしたテュラスだったが……
「ちっ、結構深く差し込んじまったな、一旦出直してくるか……」
 そう思って飛び降りようとしていた、だが――
「あっ! イセリア!」
 テュラスは彼女の様子に気が付いた、一旦降りてくるが――
「マズイ! 今降りるとちょうど破壊の光のど真ん中に突っ込んじまう!  イセリア! 滞空しろ! できるだけその場から動くな!」
 イセリアの危機に気が付いたテュラス、だが、イセリアは――
「えっ……!?」
 気が付くのが遅かったようだ――
「イセリア! ちっ、ダメか……いや! 構うもんか! イセリアを助けるんだ!」
 そしてテュラスは全力を振り絞ってイセリアめがけて跳び上がった!
「俺が助けてやる! 待ってろ、イセリア!」
「テュラス! ダメ! あんた、死んじゃうから!」
 イセリアは覚悟を決めていた、だが――
「俺はお前に生きていてほしいんだ!  言っただろ、お前は俺が好きになった女なんだ!  それに俺なんかよりもお前のほうに可能性があると思っている!  お前は何でもできるし、なんでもやれる! だから――お前は生きろ!」
 と言いつつ、テュラスはイセリアの身を受け止めると、テュラスはそのままイセリアの身を下界に向けて思いっきり放り投げた!
「エルフェリア! 俺の女を頼む!」
 テュラスは真下にいるエルフェリアに向かって叫んだ!
「テュラス!」
「……テュラス、承知した――」
 イセリアは心配そうに、エルフェリアは辛そうに言うと、次の瞬間――
「テュラスー!」
 破壊の光が完成し、イセリアの悲痛な叫び声と共にテュラスは……。