適当なところに座って話をすることにした3人、イセリアはその精霊に事情を話した。
その人は女性の精霊のようだ。
「……なるほど、そうだったのか……まさか今現れているウロボロス相手に挑んだ後だったとはな――」
イセリアの話に精霊は悩んでいたようだ。
「役に立たなくてごめんね――」
精霊は首を振った。
「いいや、確かに、あれは強すぎるのだ。
無論、私もあれには挑んだのだが、1人の力では無力もいいところだ――」
それに対して先ほど2人を注意していた精霊が慌てて訊いた。
「まさか! その状態で挑まれたのですか!?
それでは世界のパワーバランスに影響を……」
上位の精霊――以前にもフォース・ゾーンの際にも説明したが、まさにそういうことである。
「あれだけの存在がいるのだ、それに邪悪なる者たちも大勢いる、
だからと言って私のその行為を弁明する理由にならんことは百も承知だが、
状況は一刻を争う、猶予はないのだ――」
それは――その精霊は納得せざるを得なかった。
「まあいい、それについてはそのうち控えることにしよう。
つまり、今の状況が解決してからの話になるな」
すると、女性の精霊は手を出し、にっこりとしながら言った。
「自己紹介がまだだったな。
私の名はエルフェリア、エルフェリア=フラノエルという。
イセリア=シェール、テュラス=フェルナスト、よろしく頼む」
そう、この人こそがアーカネルの世においても今なお語り草となってるフラノエル様その人なのであった。
その後、どういうわけか彼女は2人を連れて例のプリズム族の里まで逆戻りなのであった。
「そうか、一度来たことがあったのか」
「来たというよりは助けてもらうために連れてこられたって言うのが正しいかもしれないけどね。」
エルフェリアとイセリアは話をしていた。
「それにしても、外の世界を旅するプリズム族というのもなかなか珍しいな、掟とか、大丈夫なのか?」
「掟? うーん……私はそもそも自分がプリズム族ってそんなに自覚してなかったしねぇ……、
それに、私はそもそも里の外で生活しているから、掟も何もないのよ。
けど、それを言ったらエルフェリアだって――」
「確かに、私の身体はプリズム族を基礎にしている身体だが――
イセリアと同じ、プリズム族故の身体の恩恵はことごとく台無しにしているな」
と、エルフェリアが言うと、2人はなんだか嬉しそうにしていた。
「なんとも気が合う2人だな」
テュラスは悩んでいた。だが、一方の台無しにしているほう、イセリアは一応彼氏いる。
そして再びプリズム族の長のもとへ。
「フラノエル様!」
そう――時の英雄ことイセリアとフラノエル、このタイミングのみ聖獣とプリズム・ロードの伝説の双方で語られていることである。
ともかく、フラノエルは長に訊いた。
「目的のものが”アトランド”にあるそうだ。
アトランドに渡りたいのだが、方法はあるか?」
長はスカートの裾を広げてていねいに返事した。
「もちろんでございます! アトランドはこの大陸より北西にある半島でございます!
海の機嫌次第で半島の先端部は海に阻まれた孤島となってしまいますのでお気を付けください!」
そう――位置的には現在のアトローナがある場所がそのアトランドである。
さらに数日かけてアトランドへと赴いた一行、ゴツゴツとした岩場を抜けてアトランドへと赴く。
プリズム族の長も言っていた通り、当時は陸路で渡れる手段があったということであるのだが、
反対に船で行く手段がないということでもある、流石にセント・ローアの刻では長距離の渡航自体が危険そのものだからである、海路の地形的にも……。
当時のアトランドは何ともみすぼらしい集落であり、アトローナの技術としたる面影は一切見受けられなかった。
しかし、3人はそこへ赴くとそこにある洞窟に入り、目的のブツを手に入れることに成功した。その目的のブツについては後に語ろう。
3人はその足でエターニスへと一路リターン、早速目的のブツを用いて何かしようとするが――
「エルフェリア、こいつは流石に俺の力を以てしても難儀な代物だ。
純粋に力ずくで何とかなるような代物じゃねえ、こいつに見合った技量も必要になってくるぞ」
当時の力の精霊、ガリクラス……頭を悩ませながらそう言った。
「やはりそうか――私も先ほど試したのだが、やはりそう言うことか……。
ということは腕のいい鍛冶師を探さねばなるまいな――」
するとやはりと言うべきか、イセリアが名乗り出た。
「なっ!? まさか、人間界の生物に……これを扱えるものがいるとは……!」
エルフェリアとガリクラスをはじめ、彼女の所業には驚かされていた。