さらに数日かけてアルタリアと呼ばれる町へと到着した2人、
アーカネルの世ではアルティニアと呼ばれる町に相当する位置にある町である。
とにかく、雪の中を進んできた2人は疲れたのでそのまま宿屋に止まることにした――。
だが――
「ベッド1つ――」
どうやら手違いのようでテュラスは悩んでいた、またプリズム族の里の時と同じように――
「いいじゃないの♪ 私は全然大歓迎なんだけどねー♪」
テュラスは言い返した。
「それ、マジで言ってんのか!?」
そう言われてイセリアは意表を突かれていた。
「えっ!? ああ――えっと、大歓迎ってわけじゃないんだけど、
それでも私は別に気にしないってところかなー?」
何で気にしねえんだよ……テュラスは呆れていた。
「お前、一応嫁入り前なんだろ? それなのに――」
それに対してイセリアはにっこりとして答えた。
「ん、だって、テュラスだからね。
別に完全に赤の他人ってわけでもないんだしさ、信頼し合った仲間なんだからさ、
だからどんなことがあっても、こんな手違いがあったとしても、
私は乗り越えるつもりでいるのよ。それに……テュラスはイケメンだしね!」
そう言われてテュラスは真っ赤になっていた。
「ばっ……バカヤロウ! そっ、そんなんで――そんなんで自分の身体を!
もっと大事にしろよ!」
なんともマジになっているテュラス、イセリアは焦っていた。
「そっ、それはもちろん……私にだって選ぶ権利はあるわよ、
どこぞの馬の骨なんてのは却下よ却下、
見た目イケメンでも性格馬の骨ならそれももちろん生きていることを後悔すべきとは思っているけどね――」
イセリアはさらに続けた。
「とっ、とにかくごめんね――とりあえず――どうしたらいいかしら?」
テュラスが言った。
「どうもこうも……これは絶対にダメなやつだ。
プリズム族の里の時は事情が事情だから我慢したが、ここはそんな世界じゃない。
もう一つ部屋を取るぞ――」
だが、イセリアは――
「そんなの、もったいないじゃない。雪国の宿は結構割高だったじゃない?
これからの旅に支障も出てくるだろうし、だからここは腹をくくって――」
「くくれるわけないだろ! 俺にはそんなことはできない!」
なんでよ、イセリアは呆れ気味に訊くと、テュラスはとうとう――
「なんでって!? 決まってるだろ! 俺はお前のことが好きなんだ!
そんな女と一緒に寝たら、俺、何をしでかすかわかんないんだぞ!」
ふぁっ!? それはまさかの告白だった、イセリアは固まってしまった。
部屋の中で2人は落ち着いて話をしていた。
「私が好きって、いつから――」
「アルゴーティア行きの船で出会った時からだ」
つまり最初のファースト・コンタクトから……完全に一目ぼれじゃないか――イセリアは悩んでいた。
「でも、よくもこんな無茶苦茶な女が好きになったわね――」
「確かに無茶苦茶だけどな。だが――あんたはそれ以上にすごい優しいんだ。
道行く子供を心配してみたり、困っている人を無償で助けたりとかな。
こういうところは人間ができてねえと絶対にやれないことだ――
こんな世の中だからな、本来なら自分のことで手いっぱいで他人の面倒まで見ている余裕なんてないハズなんだ」
「そうかしら? それを言ったらあんただってそうじゃない?
率先して魔物退治に名乗り出るほどだし、魔物退治するなんて私が言っても嫌な顔一つしないしさ――」
「そりゃそうだ、自分の住まいが脅かされていて良しとする考えは俺にはない。
もちろん――それが隣の大陸で起きていることだからと言って安心するわけがない、次の日にはわが身だ。
それに――好きな女がやるっつったらな、一緒に行かないわけにはいかねえだろ。
でもなあ……その女は自分の恋愛には一切興味ないし、将来の相手を求めていねえってもんだから、
どうしたもんかと思ってな――」
すべてはイセリアのため――彼女のそれを尊重して自分を押しとどめていたのか、イセリアは悩んでいた。
するとイセリアは――
「じゃあ、こうしましょうよ! そういうことなら一緒に寝ましょうよ!」
えっ、なんで――テュラスは耳を疑っていた。
「だからお前、今の話を――」
「ええ、ちゃんとあんたの気持ちは受け取ったわよ。
そう言うことだったらあんたの気持ちに応えてあげてもいいわよ。
だって――こんな恋愛とは対極の位置にいるような女のことがいいって言うんだもん、
私としてはそんなこと言ってくれる貴重な男、逃す手はないわね。」
えっ、マジで!? テュラスは驚いていた。
「私は本気よ。
あんたはいいやつだし、それなのに私のことそう思ってくれているんだったらむしろ大歓迎よ……
いえ、こんな女が上から言うのはよくないわよね、だから――」
と、最後は申し訳なさそうに言うイセリアだが、テュラスはおもむろにイセリアを――
「あっ、あら……」
「いいんだそれで……俺はイセリアのことが好きだ、だから――」
2人の仲は完全にデキあがっていた――。