2人は寝室らしき場所からそのまま居間らしき場所のテーブルの所に促された。
家の作りは何とも質素な作りであり、純粋に丸太を組んでできたような家だった。
と言ってもこの時代の建物はどこもかしこもそんな感じなのだが。
「女ばかりだな――」
テュラスは唖然としていた、これまでの町などに比べると何とも珍しい光景だったかもしれない。
「女ばかりというより、恐らく女だけでしょうね。」
イセリアはそう言うとテュラスは驚いた。すると――
「気が付かれて何よりです。
事情はテュラスさんからお聞きしました、イセリアさん――
こうなったそもそもの問題はウロボロスですね?」
ある女性がそう訊くと、イセリアは頷いた。
「私たちはあれを何とかしたいのよ、だから――これから先、どうしようかと思って――」
すると、その女性が話した。
「力になるかはわかりませんが、このまま東に行くつもりでしたら”彩りの大地”へと赴くのがよろしいでしょう。
そこには高位の精霊たちがいます、もしかしたら何か力になってくれるかもしれません――」
高位の精霊だって!? 2人は驚いた。
「まさか――創造神ユリシアンの!?」
テュラスがそう訊くと女性は頷いた。
「ええ、つまり、神の手の者ですね。
それだけに気難しい方々ではあるのですが、かつて”邪悪なる者”をうち滅ぼしたあなた方ならもしかしたら――」
女性は改まって話をした。
「あの、ところでテュラスさんは――イセリアさんの彼氏さんですか?」
そう言われてテュラスはぎょっとしていた、べっ、別にそんなんじゃ――彼は顔を真っ赤にしていたが、
あろうことか、イセリアの反応は――
「えっ!? ええ、実はそうなのよ♪ ねっ、テュラス♪」
と言いつつ、イセリアはテュラスの手を握っていた――
「なっ!? ななっ!?」
テュラスは焦っていたが、イセリアの目を見ると何かを訴えているようだった、何故か話を合わせないといけないらしい……。
「うっ……まあ、その、えっと――」
それに対して女性はにっこりとしながら言った。
「そうでしたか、やっぱり――お似合いの2人ですね♪」
そう言われてテュラスは顔を真っ赤にしていたが、イセリアはただただ得意げな態度をしているだけだった。
夕飯をいただいた後、2人はそのまま寝室へと促された。
「なんか、俺ら付き合っていることになっているんだが、どういうことだ?」
テュラスは早速問いただすとイセリアは答えた。
「ここは”プリズム族の里”よ。
聞き馴染みのない種族だと思うけど、ここにいる美人のおねーさんはみんなプリズム族、
彼女らは精霊族の一種で私もその血が流れているの――つまり私もプリズム族なのよ。」
プリズム族は女系社会で男児の獲りかたなどイセリアは説明していた。
「つまり、ここにフリーの男がいるって話になったら取り合い合戦が起きるのは必至ってことよ。
彼女らの武器は誘惑魔法だからね、取り合い合戦で身も心も奪ってくるわけよ。
でも、精霊族故なのか、魔族系の妖魔ラミア族とは違って心に決めてる女がいる男には絶対に手を出してこないみたいよ。
だからテュラス、ここにいる間は私ら付き合ってることにするからそのつもりでいてよね。」
なんか、とんでもないところに来てしまったようだ――テュラスは悩んでいた。
「やれやれ、本当に付き合っているもんだと思い込んでるのね――」
と、イセリアは部屋を見渡して悩んでいた、ベッドが1つしかない……。
「マジかよ……くそっ――わかった、俺は床で寝るから、な?」
だがしかし、イセリアはテュラスをベッドに押し込むと――
「……えっ!?」
「そんなわけにはいかないわよ、ここはプリズム族の里、男はプリズム女から逃れることはかなわないからね。
明日は早いからさっさと寝るわよ。」
と、イセリアはベッドに入り込むと、テュラスの顔を自分の豊満なバストに――
「えへへっ♪ つっかまえたー♪ あんたって案外可愛いわよねぇ♪」
そしてしっかりと抱くと、そのまま彼の頭をなでていた……
「なっ!? ななっ!?」
だが――何故か力が入らない――!?
「ねっ、言ったでしょ。
これがつまり、妖かしの血から繰り出される誘惑魔法の力ってワケ。
私は自在に操れるすべまでは持ってないんだけど、少なくとも潜在的なものは持っているみたいね。
あんたイケメンだし、しかもカワイイし、おまけに私のこと何度も守ってくれたみたいだし、
だからこれはトクベツだかんね♪」
と、イセリアはむしろ得意げな態度で優しい眼差しを向けていた――
もはや彼女はおねーさんという感じである。どうにもならないテュラスはこのおねーさん相手に観念した。
次の朝――
「その割には恋愛には興味なし女って言うんだよな――」
テュラスはベッドのへりに座りつつ悩んでいた。
「ええそう、そこまで男には興味ないんだ私。
イケメンとかカワイイ子とかは好きだけどねー♪」
イセリアは調子よさそうに言った、彼女はベッドの中にいて、上半身を起こしていた。
「プリズム族にもいろいろありってわけか、取り合い合戦するほどの女もいれば――」
「そういうことね。言っても、これでも女だからそのうち男と一緒になるかもしれないな程度には考えてるけどね。
ただ――その時の自分の姿は全然思い描くことはできないわね――」
そうなのか? テュラスは訊いた。
「恋愛には興味なし女とはよく言うが、子供でも作って幸せな家庭を築きたいとか――ないのか?」
イセリアは考えた。
「子供ね、それもいいんだけどね、
私なんかむしろ一人で何か違うことに没頭しているほうがすごい楽しいんだけどね。
必ずしも結婚することが幸せってわけじゃないじゃん?
こうやって、旅の仲間と一緒に楽しくやっているだけでも私はすっごく嬉しいよ?」
そういう世の中か――テュラスは考えた。
「それに――プリズムの女の出産確率は1回の”行為”につき3%未満らしいのよ、
生まれてくること自体がほぼ奇跡に近い確率よね。」
……え!?