アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第172節 まだ終わらない

 しかし、イセリアの言うことに反してさらに悪いことが続くことになる。 それは再びウロボロスと対峙した時の事であった。 またウロボロス――滅びたハズではなかったのか……そんな葛藤を胸に挑戦した4人だったが、 かつての”邪悪なる者”をも凌駕するほどのそいつの力に耐えきることができなかった4人はウロボロスの最後のものすごい一撃を喰らい、 それぞれ吹っ飛ばされてしまっていた――。
 なお、ここから先の話は、主にプリズム・ロードの伝説での語られていることであり、 ヴァナスティアの教えはおろか、聖獣の伝承にも語られていない。
「うっ、くっ……ここは……どこなのよ――」
 イセリアは気が付いた、すると――
「ん……? あっ、あら……なんかちょっとラッキー?」
 なんと! 自分の上にはテュラスが!
「う……ん……? なんだ……?」
 彼は気が付くと――
「んん……!? ……って……んなっ!?」
 テュラスは彼女の豊満なバストの上に……! 慌ててイセリアから離れた!
「わっ、悪かった! 本当にすまん!」
 テュラスは平謝りだが、イセリアはむしろ嬉しそうだった。
「いいえ! 私は全然気にしてないからね♪」
 なんでだよ――テュラスは悩んでいた。

 イセリアは空を見上げていた、やや遠くの方に自分たちが相手にしていたウロボロスらしき者がいたように見えた。
「随分と吹っ飛ばされたな――クソッ……」
 テュラスは悔しそうだった。
「ん? どうしたんだイセリア、何してるんだ?」
 イセリアは反対の方向を見て何やらいろいろと眺めて考えていた。
「こんなところに森なんてあったかしら?」
 そう、その近くには森があったのである。
「そういえばここまで来たことがない気がするな。 東の方は森が広がっているらしい――」
 するとイセリアは身体をさすり始めていた。
「どうした? 寒いのか?」
 イセリアは答えた。
「ええ――そういう気候帯みたいね。 見てよ、今までは比較的暖かかったから葉っぱも大きいけど――」
 そう言われてテュラスは感心していた。
「お前、何でもよく知っているよな、 寒いと葉っぱがこんな針みたいになっているものなのか――」
 イセリアは頷いた。
「そうなのよ、平たく言えば、太陽をあんまり浴びないから葉っぱを作り出すことにパワーを注がないのが針葉樹の特徴ね。 もちろん、寒い中でも葉っぱを出して可能な限り太陽光を浴びたいから一応針のような葉っぱを出すけど――」
 ということは――テュラスは訊いた。
「じゃあ、少なくとも森はまだ生きているってことだな!  大地は生きているんだ! この世界が邪悪に飲み込まれて死んじまうのはまだ早いってことだな!」
 イセリアは得意げに答えた。
「ええ、そういうことね!」

 ライブレードとヴァディエスがどうしても見つからないので2人はそのまま旅を続けることにした。
「2人が無事でいてくれればいいんだけどね――」
 イセリアは心配しながら言うが、テュラスは考えていた。
「そういえばウロボロスの力を受けた際の立ち位置からすると、 もしかしたら西のほうに飛ばされたんじゃないか?」
 そう言われてみればそうかもしれない……イセリアは悩んでいた。
「なら、あっちに戻るべきかしら――」
 テュラスは止めた。
「いや、あっちはウロボロスがいる、 4人でも斃せなかったのに2人で行くのは無謀すぎる、ヤツを倒す方法を何とかして見つけるのが先だ――」
 それもそうだ、イセリアは悩んでいた。
「俺たちにできることは……神の奇跡であいつらが無事であることを祈ることだけだ」

 東へと赴き、どんどんと雪の様相へと変わっていく……。
「うひゃー! しっかりと雪じゃんこれ!」
 だが、イセリアは雪の上を走ってはしゃいでいた。なんか妙に可愛い。
「これが雪ってやつなのか!? 冷てえ――」
 テュラスは雪を触ってその感触を確かめていた。
「もしかして、雪を見たことがない?  私は雪国生まれの雪国育ちだからこんな光景そんなに珍しいもんだとは思わないんだけどね。 もっとも、年中雪が降っているようなとこではないんだけどねー。」
 そうなのか……イセリアに言われてテュラスは呆気に取られていた。

 だが――それからまもなくして問題が起こる。 森林帯の間に伸びている雪の街道を歩いている2人――
「寒いわね、このあたりでそろそろ宿場町があるといいんだけど――」
 イセリアは悩んでいた。すると、テュラスは気が付いた。
「おい、あれ! 魔物じゃねえか!?」
 前のほうから魔物がぞろぞろとやってきた――。
「忙しいわね、やったろうじゃないのよ――」
 2人は剣を引き抜いた。