ヴァナスティア組は神殿の中で礼拝をしていた、
クレメンティルと比べるとなんとも質素……佇まいこそ堂々としているも、
飾りっ気がないのが特徴であるが、内装もそんな感じだった。
「あれはなんだ?」
スティアは礼拝堂の奥にある女性の像を指さして訊いた――少しは考えろよ……アレスはスティアの指を抑えながら焦っていた。
「あれは”フラノエル”様という御方よ。
言ってしまうと、唯一無二の絶対神ユリシアン様よりも彼女のほうが人気があるから彼女の像がこっちに移設されたのよ」
シュシュラはそう説明した、フラノエル様? アレスは訊くと彼女はさらに説明した。
「セント・ローアで活躍なされた精霊様よ。
ユリシアン様はセント・ローアで亡くなられてしまったみたいだけど、
ユリシアン様に成り代わって精霊たちがこの世界の管理を引き継いだのはロイド君から聞いてる?」
アレスは頷いた。
「えっ!? そうだったのか……!?」
だが、一方のスティアは驚いていた、こいつは話を聞いてねぇだけだな……ディライドはそう思った。
「それでフラノエル様……ですか?」
シュシュラは頷いた。
「ええ、彼女は当時の精霊たちの1人で、その中でも最も影響力のあった精霊様だったみたい。
カリスマ性もあったみたいで今の世でもずっと人気者なのよ」
絶対神差し置いて……でも、そんなものなのか――アレスたちは考えていた。
「それにしても、華美なものを一切排した設計って感じですね――」
周囲を見渡しながらアレスはそう訊くとディアスは頷いた。
「ゆえにクレメンティル大聖堂については賛否の声があるのも事実だ。
ただ――ヴァナスティアも元々はクレメンティル大聖堂のような佇まいだったらしい。
つまり、クレメンティルの主張としては元のヴァナスティアを再現しただけというものだったそうだ」
だが――ディライドが言った。
「だったらクレメンティルも今のヴァナスティアを見習えよ――
結局そんな意見があって賛否があるまま今日に至るってのが今のアーカネリアスの世の中ってわけだな。
とはいえ、ヴァナスティアは寛大だからな、クレメンティルがたとえどうであれ歓迎するのが我が教えのやり方ってわけだな」
なるほど――アレスは頷いた。
「ヴァナスティアの教えか……。
言われてみれば、俺、あんまり知らないんだよな――」
それに対してシュシュラが訊いた。
「えっ、そうなの?
まあ……そこまで関心がなかったのならそうなのかもしれないわね、私も最初はそうだったし。
だったら聖獣様から訊いてみない?
聖獣様は特別な話を知っているって言うのよ、
以前にお会いした時に教えてくださるって言ってたから行ってみましょうよ!」
特別な話か――アレスは頷いた。
「聖獣ヴァリエス様から聴けるというのはなんだか面白そうですね! ぜひ、お聞きしましょう!」
「ほう、聖獣ヴァリエス様――なんとも興味深い……」
ディアスもそう考えていた。
アーカネル残留組はシャオリンがヴァナスティアの教えについて話をしようとしていた。
「フランネル様は人気があるんだね! 多分、ネシェラお姉様みたいな人なんだよ!」
シュタルは嬉々として喜びながら言うが、それに対してレオーナが言った。
「フランネル様は女性ながらになんともパワフルな女性だって言われているわね。
だから私としては、シルルさんのほうがイメージとしては近いような感じがするけどね――」
えっ、私!? シルルは焦っていた。
「確かにそうね! ヴァリエス様から訊いたフランネル様は確かにものすごい力で邪悪をなぎ倒すような方だって聞いたことがありましたね!
だから案外シルルのイメージにピッタリあてはまるのかも!」
シャオリンは嬉しそうにそう言うと、シルルはさらに焦っていた。
「私みたいなのがその時代にいたのか……?」
だが、女性陣みんなの視線は彼女に向けられており、みんなニコニコとしていた。シルルはなおも焦っていた。
「女性陣はみんな仲良しですな」
「まとめ役が強力な方ですし、それが2名もいらっしゃいますが、あの様子では彼女もそのうちの1人ということでしょう。
無論、強力な女性のまとめ役お三方共に仲良しのようですので、この結束力は絶対に破れないものと――」
ルイスが訊いたことに対してサイスが冷静に考察していた。
「ああ、それでね、そのヴァリエス様から訊いたヴァナスティアの教えの話なんだけど――」
シャオリンは話をし始めようとしていた。
一方で、アトローナ組は……
「ぃよう! おはよっ! 今日もいい朝ですねっ!」
デカイウサギは上機嫌でメンバーにそう話かけたが――
「はいはいおはよ――ったく、朝っぱらからクソ暑苦しいクソウサギね、どんだけクソなのよあんた。
とにかくクソうるさくてクソ目障りだから、クソはクソらしくクソおとなしく引っ込んでなさいよ。」
ネシェラにクソイラつき気味にそう言われると、クソウサギはシュンとしていた。
「私も同じこと言おうと思ってた――」
流石辛口ライア様である。
「ネシェラとライアに同意ではあるが――本当にネシェラと同じことを言おうと思ったのだろうか……」
「ネシェラと同じとは考えたくねえな……」
リアントスとロイドは悩んでいた。
メンバーは歩きながら話を続けた、クソウサギは未だに沈んでいる……。
「ところでこれから先、どうするんだ?」
リアントスが訊くとネシェラが答えた。
「これから最後の戦いに向けて、しっかりとした装備を整えたいからね。
とりあえず、当てがあるからそろそろ聞きに行こうかと思ってね。」
当てがあるのか、ロイドは訊くとネシェラは作業用エプロンをして髪の毛を一本にまとめて縛りながら答えた。
「アーカネルに入団する前にアトローナを経由してきたって言ったでしょ? そこで話をつけてきたのよ。
ちょっと時間がいるからって言われて諦めてあっちに戻ることにしたんだけど、
まあ――そろそろいいんじゃないかしらねぇ?」
と、最後に腕をまくっていたネシェラ。
アトローナの街並みは古き良き騎士の国アーカネルなんかとは程遠く、
田舎の民家や商店が立ち並ぶような何とも言えない古臭さ漂うものだった。
言ってしまえばモノづくり者のための町であるため、アーカネルのような街並みはあまり求められていない。
もちろん、そのあたりのデザイン性を重視した区画もあるにはあるのだが、
それはその手の作り手集団の住まう区画なので、ある意味理にかなっていると言えば理にかなっているのだが。
そして、聖獣ディヴァイアスの家へとやってきた。
「えっ、聖獣なのに家に住んでいるのか!?」
ロイドは驚いた。
「ここの聖獣の最大の特徴だな、作り手だらけの町だから聖獣もまた作り手、
そもそもここの聖獣候補はアトローナでも優れた作り手の中から選ばれるからね、
そうなると必然的に元々家に住んでいた者から選ばれるってことになるわけだ」
ディアはそう説明した、てことは――ライアは訊いた。
「ということはつまり――あなたはアトローナでも優れた作り手だってこと!?」
それに対してディアは無茶苦茶嬉しそうに答えた。
「そうなんだよぉーおねーさまぁ♪ だから俺が選ばれたんだよなぁー♪
いやぁー! 流石おねーさま! お目が高い!」
そう言われてライアは片手で頭を押さえて呆れている中、ネシェラが――
「ま、そうみたいね、こんなドヘタクソが聖獣として選ばれてるんだから、
次代の聖獣なんてこんなもんなんでしょうね。」
そう言われてディアは嬉しそうに答えた。
「いやぁー♪ ネシェラにそう言われたらかなわないよねぇー♪ 参ったなぁー♪ あははっ♪」
ドヘタクソって言われてなんで嬉しそうなんだ、全員呆れていた。
まあ――ネシェラよりも下だってこと自体は事実だから言っているのだろうが……。