アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第162節 とうとう現れた伝説と恐怖の応酬

 フード姿の女性は正面から勢いよく切り込んだ!
「ふん! このっ!」
 ドレイクは怯んでいる!
「つっ、強い――」
 ライアはそう言いつつ、他の何人かがフード姿の女性に圧倒されていると、
「彼女の実力は本物です、彼女ほどの腕の持ち主はそうはいないでしょう――」
 と、アムレイナやシャオリンたちもその様子を見ながら固唾をのんで見守っていた。
「グシャア!」
 と、ドレイクの反撃! 勢いよく突っ込んできた!
「くっ!」
 女性は大剣を前にしてそれを受け止めた! だが――
「スチール製なのにヒビが!?」
 レオーナは気が付いた、強烈な突進を前に2つの武器が割れそうだ!
「ちっ、限界か――」
 すると女性は武器を両方投げ捨てると豪快に割れてしまった!  さあ、武器がないのにどうする!?
「グアアアア!」
 だが、ドレイクは無情にも再び突進してきた!
「危ない!」
 レオーナは心配していた、だが――
「うそっ!?」
「あんな魔物相手に!?」
 なんと、女性はそれを素手で受け止めていた!
「まったく――手のかかる魔物だな」
 そしてそこへ――
「バカねぇ……正面からやりゃあいいってもんじゃないのよ♪」
 と、ドレイクの背後にまわっていたネシェラが強襲!
「クリスタル・クロス! さあ、氷漬けになりなさいな!」
 ネシェラは大剣を取り出すと、激しい猛吹雪から繰り出される剣閃による連続斬りの応酬!  そして最後に氷漬けとなったそいつめがけて激しく叩き割った!
「グアアッ!」
 だが、魔物はまだ諦めない!
「なんだ、この死に損ないが――」
 すると、女性はそのままドレイクを投げ倒すように叩き落した!
「ふう、やれやれ――忙しいやつだ」
 ドレイクはその場で息絶えた――。

 そして、瀕死のエンドラスのもとへと駆け寄った女性たち。
「ばっ、バカな――これほどの魔獣を倒せる者など……どうなっている!?  貴様は一体、何者だ!?」
 すると、女性は……
「何者か? それはいい質問だ。 いいだろう、特別に教えてやろう――」
 すると、女性はフードとマントを脱ぎ去った――
「なっ!? きっ、貴様はシルル!?」
 やはり……この女性はシルル=ディアンガートだったのか。 ハンターの間でももはや伝説として知られるほどの存在であり、唯一のカイルフレアザードのマスター位を持つ存在……。 プリズム族らしく美人と言えば美人なのだが、ネシェラよろしくその印象はそんなものに興味がなさそうな感じがしてきた。
「久しぶりだな、エンドラス。私はずっとお前たちを追っていた―― アーカネルに残り、貴族会を通じてアーカネルを陰から牛耳っていたのはわかっている。 しかしまさか、こんなところに潜伏していたとはな」
 そう……そういう存在がいることは何となくわかっていた、 しかしどこにいるのかがわからない……それだけが唯一の悩みどころだった。 だが、ネシェラは――
「けど、情報操作に踊らされてバカを見るなんて――ただひたすらに滑稽なだけよね。 いいこと教えてあげようか?  クレメンティルを締め出しましたって言うあの話、全部ウソに決まってんじゃん!  んなことできるわけないでしょ? そんなことしたらアーカネル中で批判を浴びるの待ったなしだからね!  それなのにまんまと引っかかって! あんたもクレメンティルにいる連中も!  もう、まるでそんなことされたらとっても都合が悪いとしか思えないわね!」
 と、もはやお馴染みの得意げな表情でそう言うと、エンドラスは非常に苦しそうな顔をしていた。
「さてと、主犯格は――エルヴァランとレギナスを殺した犯人はあんたよね?」
 ネシェラはそう訊いた……まさか、そうなのか!? すると――
「ふっ、ふふっ……ククククッ……フハハハハ!  この小娘が……貴様を執行官におき、放置しておく判断は誤りだったか―― アシュバールの手の者がしゃしゃり出てきた段階でツケが回ってきたというところだな……。 いいだろう、どうせ貴様らは早いうちに死ぬのだから教えてやる―― エルヴァランとレギナスに暗殺者を差し向けてを殺すように命じたのはこの俺だ!」
 それは何故だ、シルルは訊いた。
「何故? それはもちろん貴様の元部下の死の真相に近づいてきたからだよ!  まさか、そんなこともわからぬのか?」
 すると、ネシェラはそいつの怪我している方の足を踏みつけながら言った――
「害虫の分際で生意気言ってんじゃないわよ――」
 と言いつつ、さらにネシェラは槍を引き抜くと、そいつの身体を勢いよく……
「待って! ネシェラ!」
 しかし、ためらいなくネシェラは突き刺しつつ、得意げに言った。
「大丈夫よ、急所は外しているから――この程度で死んだりしないからね。 それに――こいつにはすぐには殺さないわよ――」
 と言いつつ、ネシェラは――
「聞いての通りよ。 とにかく――貴様のような命を粗末に扱うような地べたを這いずり回ることだけしか能のない虫けらが―― 殺してくれと泣いて頼んでも絶対に許さないからな――」
 と、エンドラスに向かってそう言ったネシェラ。 その時の彼女の表情は完全に隠れており、確認することができなかった――
「うっ……ぐあああああ!」
 エンドラスはものすごい悲鳴を上げて苦しそうだった。
「痛いでしょう? そりゃあそうよ……全部洗いざらい吐くまではこの地獄がずっと続くことになるのよ?  さあ、全部、洗いざらい吐いちまいなさいな。」
「くっ、さっさと殺せ……」
「はぁ? 聞こえなかったのかこのウジ虫が!?  言っただろ? 殺してくれと泣いて頼んでも絶対に許さねぇってなぁ!?  貴様には死なないように自然治癒魔法かけてやってんだよ! 永遠に痛みを感じ続けられるようになぁ!  ほら! さっさと言えよ! そしたら望み通りぶち殺してやるからさぁ! なぁ!」
 怖い……もはやネシェラではなく恐怖である……。