ライアとレオーナはそのまま町の中を巡っていた。
「ネシェラが言ってた場所って……ここ?」
ライアが言うとレオーナは指をさした。
「あれよ! 見て! 誰かいる!」
そこには怪しいフードを被ったマント姿の者が! そいつはそのまま足早に去ってしまった!
「追いましょう!」
すると、そこで自分の母親たちと鉢合わせになったライア。
母親と共にレイランドの姿もあった。
「ライア!」
「お母様! お姉様! 今、誰かがあの家に入って行ったの!」
アムレイナは頷いた。
「私たちも行きましょう!」
その家はランディオス家――あのバディアス=ランディオスの家である。
だが、先ほどの怪しいフードの者が力づくで入っていったためか、なんとも痛々しい状態になっていた。
「あっ、アムレイナ様……今、怪しい者が――」
ランディオス家お抱えの騎士たちがものすごい力でねじ伏せられていた。
だが、それよりも気になるのは――
「どうなっているのかしら!? この家、やたらと騎士が多くない!?」
レオーナはそう言った、ライアもその光景には何とも言い知れぬ違和感を持っており、
アムレイナに訊くと、レイランドが答えた。
「それについては私もずっと違和感を感じていた――この家には何度か来させてもらってはいるのだが、
妙な感覚を覚えたものだ。見てみろ、これを――」
レイランドは何か家の装飾にはめ込まれているものをもぎ取り、それをライアに見せると――
「これ……まさか、ネシェラが作ったものじゃあ!?」
レイランドは頷いた。
「複製品といったところだろう、見ての通り、本物には遠く及ばない完成度の低さだ。
魔法の力を無理やり注入して似たような機能をつけているものに過ぎん。
それが証拠に、こいつにはそれほど魔法の力が含まれていないようにも見えなくもない――」
言われてみれば確かに……なんとなく力がロストしているようにも見える。
「それにしても――魔法の力を見定める目があるなんて、あなた何者!?」
レオーナはそう訊いた、確かにその通りだ。すると、レイランドは答えた。
「はっはっは、何を言っているんだ?
私は同族だよ、レオーナお嬢様と同じね――」
まさか、ダーク・エルフ!? 見た目は何処からどう見ても人間族にしか見えないが――
「私の先祖には人間族が含まれていてね、見た目は人間族にしか見えないが、
その人間族の劣性遺伝を引き継いでいるんだ、両親はともにダーク・エルフだしね。
だから人間族にしか見えないかもしれないが、実はダーク・エルフ族なんだよ。
そもそも私はこう見えて60年も生きている……キミたち流星の騎士団のメンツの中でも私ほど長く生きている者は少ないだろう?」
レイランドは人間基準で40歳程度にしか見えなかった、
60と言えばまさにディアスがそうだが、彼に比べれば全然若く見える。
「それに、実は私もクリストファーの計略に加担したことさえある――レイランド=クアンドル自身がね。
だが、彼は危険だ――危機感を抱いた私は彼らを避けることを考え、ロードアン伯爵を名乗ってずっと身を隠していたんだ。
以来、人知れずずっと連中のことをずっと監視していたんだ――」
なんと、やはり黒幕はクリストファー……間違いないのか、そう訊くとレイランドは頷いた。
「詳しい話はあとにしよう。それより、早くアーカネルで暗躍している黒幕を暴こう!」
そして、屋敷の最奥部……地下に通づる階段を下りると、そこに隠し部屋が――
「ここまでくればすべてが物語っているとは思うけど、
怪しいフード姿の目的は私たちと一緒のようね!」
ライアがそう言うと、フード姿の者はライアたちに気が付いた。
「ほほう……なるほど、飛んで火にいる夏の虫とはよく言ったものだ、
まさか流星の騎士団がやってくるとはな!」
そして、そのフード姿の者と一緒にいた相手は――
「やはりあなただったのですね、エンドラス!」
と、アムレイナ……そう、かつて例のアルクラドの戦い……フィダンの森の作戦を提案したあいつだった。
「おおっ、これはこれはアムレイナ様とシャオリン様ではないですか、ご機嫌麗しゅう――」
エンドラスはにやけた顔をしてそう言うとさらに続けた。
「だがしかし、あなた方がここへ来たのは間違いだ――
そうとも、ここには大きな罠を仕掛けておりますからねぇ――」
すると、部屋のどこかから怪物の鳴き声が! それにはみんなが驚いた――
「くくっ、バケモノを飼いならすことも簡単なものでしてねぇ――適当なエサでも与えていればおとなしくなるんですよ。
ですから……次はあなた方がそのエサになってもらいましょうか!?」
すると、そのバケモノが横の壁を突き破って現れた!
「まさか! ドラゴン!」
そう、そいつは四足で歩き、立派な角を携えたあのドラゴンと呼ばれる生物である。
だが、その伝説のドラゴンというにはほど遠い大きさ……それでも、そいつの身体が部屋いっぱいに占領している――
「ドラゴンはドラゴンですがドレイクと呼ばれる種類になりますな。
これでも力は非常に強く、なおかつかのドラゴンのブレスはあらゆるを焼きつくすと聞く……
もしかしたらこの屋敷も堪えることはできないかもしれませんなあ!」
そう言いつつ、エンドラスは後ろの壁のほうに――
「くくっ、さて、私は逃げるとしましょう、巻き沿いはごめんですからねぇ!
さあ、そいつらを始末しろ!」
そこには出口が! だが――
「はいストーップ、あんたにはたくさん聞きたいことがあるからそこでおとなしくしときなさいよ。」
なんと! そこにはネシェラが! エンドラスの足めがけて槍を思いっきりぶっ刺した!
「何っ!? ぐぁあっ!」
エンドラスはもがいていた――
「ったく……。さてと、その前に、こいつを何とかするのが先ね――」
彼女らはドレイクと対峙していた――
「ちぇっ、よりによって”ストライキング・ドレイク”じゃないのよ。
ブレス攻撃は退化している種類だからその分は警戒しなくていいけど、
ちょっと骨が折れる作業ね……どうしようかしら――」
ネシェラは悩みながらそう言った。
「とても固そうな魔物ね……それに力が強いって……私たちで勝てるのかしら?」
アルクレアをはじめ、他の者もそいつを相手に身構えていた。
すると、フードマント姿の者が――
「そうか、そういうことなら大したことはないだろう。
こいつは私が押さえつけておく、ネシェラ……トドメを頼んでいいか?」
ん……!? その声には聞き覚えのあった何名か――すぐに反応した――
「まさかあなた!」
アムレイナとシャオリンが声をそろえてそう言うが――
「話は後。それより、こいつを倒してしまおう」
明らかに女性声、彼女はそう言いつつ、か細い腕に見合わない得物……大剣を2本取り出すと、それをそれぞれの手に持って構えた――
「えっ!? まさか――」
ライアとレオーナは驚いていた、間違いない、この人――
「OK! だったら勝てるわね。」
その女性に対してネシェラは得意げに答えた。