アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第160節 ヴァルキリーの神髄

 ランバートは果敢に攻撃を繰り出していた。
「このっ! くそっ! くらえっ!」
 だが、相手となるランド・グリフォンほどの大きな魔物はびくともしない!
「くそっ! 攻撃は入っているようだが、これでは――」
 すると、グリフォンは大きく腕を振りかぶり――
「くそっ、どうにもならないってのか!」
 しかし、そこへ――
「やぁっ! たぁっ! はぁい!」
 セディルの激しい棍さばきでグリフォンをいなしていた! グリフォンはあからさまに怯んでいた!
「うぉっ! すっげ!」
 ランバートは感動していた。
「私よりも若いんですから、もう少ししっかりしてくださいな!」
 ランバートは少々悩んでいた。
「悪い悪い――」
 しかし、それにしても――
「以前のランド・グリフォンってのとはまた全然強さが違うなこいつ……」
 ランバートは構えていた。
「これは”ドズメーア”と呼ばれるグリフォン種でもかなり強力な種類の魔物です。 こんな魔物が登場するほど……世界は窮地に立たされているのですね――」
 セディルは憂い気に言った。するとそこへ――
「あー! こんなところにこんなデカイのがいるよー! おかあーさーん!」
 シュタルが現れ、そう叫ぶと――
「あらまあ……これはちょうどいいのが現れたわね! シュタル、行くわよ!」
「おっけー♪」
 そのまま2人はドズメーアに対して瞬時に襲い掛かった!
「いっくよー! ミラージュ・ファントム!」
 シュタルはもはや視覚で捉えることが不可能なスピードでドズメーアを掻っ捌いていた! さらに――
「行くわよー! シャドウ・フォックス!」
 まさに影の襲撃! 数多の彼女の影が一度にドズメーアへと襲い掛かる!
「シュタル!」
「お母さん!」
 さらに親子は息を合わせ――
「ダブル・ミラージュ・ステッチ!」
 ドズメーアの胴体をズタズタに切り裂くと、ドズメーアは地面に縫い合わされてしまったかの如く、動けなくなっていた!
「影縛り……すごい能力だ、これがナナルの親子技……」
 セディルはあっけにとられていた。するとそこへランバートが――
「親子技だったら俺が締めないとだめだな!」
 すると、ランバートが剣を構えなおし……
「くらえ! バーニング・ファントム・スプラッシュ!」
 その場で剣を勢いよく振り上げると、紅蓮の業火による剣閃が勢いよくはなたれ、ドズメーアに直撃した!
「グギャアアア!」
 ドズメーアはもがき苦しんでいる!
「やったー! 最後まで畳みかけるよー!」
 シュタルはそのままドズメーアに追撃! 他の3人もさらに畳みかけていた!
「うふふっ、頼もしくなったんじゃないの、シュタル、ランバート♪」
 母は嬉しそうだった。
「親子……いいものね――」
 セディルもなんだか嬉しそうにしていた。

 ライアとレオーナは魔鳥に囲まれていた。
「うるさいわね! いい加減になさいな!」
 ライアは果敢に攻撃を繰り出すも、なかなか技が決まらない。
「レオーナ、大丈夫!?」
 ライアはそう訊くとレオーナはひたすら魔法を展開したまま言った。
「大丈夫よ、今は何とかね。ライア、こいつ何とかならない……?」
 これまで見たことのないタイプの魔物……同じ魔鳥でもサンダー・フールなどよりは大きく、 グリフォンよりも身軽で空を飛ぶような大型の魔鳥だった。
「こいつ、遠隔攻撃も通じないし魔法も効いてはいるようだけど決定打に至らないようなのよ――」
 そうだ、こいつがコアトルか――ライアは気が付いた。
「ネシェラがそんな魔物がいるって言ってたわね、だから直接叩くのが一番効果的だって……。 でも、こんな空を飛ぶ魔物に対してどうやって!?」
 すると、その場にシュシュラが現れると、彼女は勢いをつけて――
「こうするのよ!」
 なんと、大空へとダイブ!
「シュシュラ!? ウソっ!?」
「やっぱりすごいわね……」
 ライアとレオーナは驚いていた。するとそこへ――
「しかし、それゆえに一度に叩けないのも事実です、地上部隊は必死になって粘るしかなさそうですね――」
 彼女らの背後から強力なバリアが――
「ランブル!」
「一度に叩けない!? そうか……一体ずつ叩くしかないのか――」
 ライアとレオーナが彼に反応した。 すると、上空からシュシュラがコアトルの頭部めがけて一撃粉砕!
「はぁ……ったく、これは骨が折れるわね――」
 周囲にはまだ5体のコアトルが!
「これは……相当覚悟を決めないといけないわね――」
 ライアはそう言うと、4人そろって身構えた。 するとその時――
「ん? あれは……!?」
 シュシュラは何かに気が付いた。
「ん? おや……これは手間が省けたようですね――」
 ランブルもその様子を見ると、リラックスしていた。 それに気が付いたライアとレオーナは驚いていた。
「えっ、嘘でしょ、まさか……」
「なるほど、これがヴァルキリー・クラスの神髄ってやつなのね――」
 上空から、まるで工事現場で鉄資材が落ちてきた事故があったかのようなものすごい音を立てながら何かが一体のコアトルの頭上へと降ってきた!  それと同時にその場はものすごいパワーで吹っ飛ばされ、周囲のコアトル諸共すべてを破壊してしまった!
「ふう……、ずいぶんと高く飛んじゃったからどうなるかとは思ったけど、うまい具合に足場があってよかったわね。」
 と、その破壊現場の廃塵の中から女性が一人、髪と服を整えながら現れた……言うまでもないが、ネシェラだ。
「すっ、すごい破壊力……空を飛ぶ魔物なんて目じゃないわね……」
 ライアは唖然としていた。
「ネシェラちゃん……また飛翔高度を伸ばしたようね、どこまで跳ぶ気なの!?」
 シュシュラは訊くとネシェラは得意げに答えた。
「そうね、せっかくだから、この世で一番高い山の頂上でも目指してみようかしら?」
 いやいやいやいや……本気でやりそうだから怖いよこの人。
「あら、まだいるのね、仕方がないわね――」
 ネシェラ次のコアトルを見つけるとそう言いつつ、おもむろに再び大空に向かってダイブ!
「あれは魔法だけでできるような所業ではありません――」
 ランブルは唖然としながら言った、まさか、本当に自分の脚力で!? 3人はあっけにとられていたが、
「いやいやいや! 私たちにとってはシュシュラのも十分高いわよ!」
 ライアは慌ててそう言うと、シュシュラは舌を出して照れていた。