ロイドもネシェラも父親を追ってここにきているのだ。
アリバイとしてはもっともらしいものではないのだが、
これまでアーカネルに寄与した経歴を考えると、それはそれで可能性ゼロとは言い切れなくても犯人説としては微妙だろう。
それを考えるとティバリスも同じである、そもそも彼は黒幕によって行方不明にされているし、
彼を知るランブルやサイスにしてみれば、ティバリスはそんなことをするような人物ではないと言うことだろう、
随分とお世話になっているのだから。
では、サイスはどうかというと――
「確かに、アリバイなしと言われれば否定できませんが――」
だが、この人もまたロイドやネシェラと同じくアーカネルに寄与した人物であり、
そもそもアルクレアを守っている側の人物だ、単にアルクレアだけは守りたかったという見方もできなくはないが、
容疑者の度合いとしてはロイドらと同じぐらいの人物であることは否めない。
もちろん、ランブル容疑者説もサイスなどと同じぐらいのレベルであるため、
彼だと断定するわけにもいかず、決め手に欠けることは避けられない。
「私たちが犯人ということもあり得ますけどね、アリバイもありませんし――」
と、セディル。
だが、彼女らについては精霊界からのお使いでやってきているため、それに反して行動することはどうなのだろうか?
いろいろと疑問の残る行動と言える。
「それをやったら恐らく、私らはすぐさま精霊界からおしかりを受けるでしょうね――」
エンダリフはそう言った、つまり、この2人に関してはそれがアリバイとなっているのである、
もし、変なことでもすれば、今はこうして話ができているような状況ではないということである。
「んで、この獄潰しなんだが――
こいつは他人をおちょくり、とにかく小馬鹿にするのが得意という飛んでもねえクソ野郎だが、
こいつのほぼ唯一と言えるほどの貴重な救いようがある点と言えば、世界を破壊するようなことを考えないことぐらいだな」
ロイドはそう言った、スクライトのことである。
「ですね……だからこそ、中途半端に腹が立つともいえますが――」
サイスも少々腹を立てたような面持ちでそう言った――お察しします。
「あははっ! 2人とも! 私がそんなことをするような人間じゃないって言ってくれて嬉しいよ!」
マジで腹が立つ……ネシェラがスクライトの腹に見事なキックを決めたところで話を続けた。
「で、残るのは根クリストだけってわけね。
さて、昔から根クリストをよく知るみんな!
こいつが実は世界をぶっ壊しています――って話だったらどう? 信じる? 信じない?」
それは――
「信じる人は挙手!」
ネシェラはそう言うと、昔から根クリストをよく知るみんなは全員堂々と手を挙げていた。
「おいおいおい、マジかよ――」
リアントスを初め、何人かは頭を抱えていた。
「元々何考えているかわからんやつだからな、感情の起伏も妙に激しかったりと言動にも怪しいところがある」
「同感ですね、それゆえに、少々近寄りがたい所があります。そう言うこともあって、私もあんまり関わり合いになりたくないですね――」
ロイドとサイスがそう言うと、スクライトは腹をさすりながら話をした。
「彼はいつも私から逃げるような感じだった。
いつも触れてほしくないという感じがにじみ出ているんだ。
私の能力から逃れようとしているつもりだったんだろうけど、
まさかそれを精霊石を持ち出してまでやることだったとはねぇ――流石に追うことはできなかったよ」
「エザント先生もクリストファーは危ないって言ってたわね、
そのうち、とんでもないことをしでかすかもしんないって――」
ネシェラは考えながら言った。さらにランブルは――
「この際ですからはっきり言わせてもらいますけど、
クリストファーさんは自分以外はどうでもいいという感じの印象を受ける人ですね。
それに……彼が”やる”って言うのであれば間違いなく”やる”のでしょう、そんな雰囲気があるような人です。
正直なところ、近寄りがたい人ですね――」
クリストファーはあくまでランブルの家柄よりも上の人なので”さん”付けなのは仕方がない。
ということで、クリストファーが犯人であることをそろいもそろって肯定しているのが実情である。
「ここまでくれば、彼だって諦めるだろうね。
アーカネルでいろいろとやらかしている上に、ある程度はネタも割れている……
次はどう出てくるのか見ものだね――」
スクライトは得意げに言うと話を締めた。
その一週間後――
「オッケー、ありがと♪ これですべての準備は整ったってワケね――」
ネシェラは何かしらの連絡をしていた。するとそこへ――
「ドミナントでの件は片が付いたようだよ」
と、そこへエンダリフが現れた。
ドミナントからの使者の話で、作戦は大体整ったというところである。
何故かというと――
「エサにかかったクレメンティルの息のかかった連中を一網打尽にしたらしいわよ」
と、ライアが言った。
そう、ドミナントは粗方”掃除”されたというのだそうだ。
「ドミナントまでにはアルお姉様の生死の話については連携していないみたいね、
つまり、アーカネルから離れるとお姉様の身が危ないってことか――」
ネシェラはそう言うが、セレイナが言った。
「ですね! でも、アルクレアさんのことは私が守っていますから大丈夫です!」
それに対してアルクレアが嬉しそうに言った。
「セレイナちゃんったら、私のことを何度も守ってくれたのよ!
本当にすっごいバリア! 感謝しないとね!」
「そんな――当然のことをしたまでです――」
やはり侮ることはできないな、セレイナ――彼女は照れていた。
「ところで、こっちは?」
ライアが訊くとネシェラは得意げに答えた。
「ええ、こっちも”掃除”完了よ。
さーて、相手の出方を見てみようかしら? ……ふふっ……」
なにやら、とんでもないことをしたらしい――
お前が悪の権化かと言わんばかりの得意げかつ邪悪な様相でニヤッとしていたネシェラだった。