アーカネリアス・ストーリー

第6章 伝説との邂逅

第152節 犯人は最初から決まっていた説

 ネシェラは話をする前に、セレイナと一緒にカフェでお茶をしていた。
「こんな優雅なひと時を過ごすって言うのもいいわよね♪」
 ネシェラは嬉しそうだ。
「そうですよね! 私も嬉しいです! ネシェラさんと一緒にこんな時間を過ごせるなんて!」
 セレイナも嬉しそうだ。

 ネシェラは話をしだした。
「こういう時に考えるのがちょうどいいかなと思って。 セレイナ、これまでのことを整理したいからちょっとだけ付き合ってね。」
 セレイナは頷いた。
「犯人はクリストファーさんで間違いないですか?」
 ネシェラは答えた。
「ええ。 なんていうかもう、既に最初から根クリストが犯人だって言っているようなものなのよ。 途中の話、アーカネルの陰謀とか、そのあたりは判断材料としては割とどうでもいいところはあるんだけど、 とりあえず目星としてはそれしかないのよ。 ねっ、うっすら魔導士! あんたもそう思うでしょ?」
 うっすら魔導士……いるのかよ。
「あははははっ! バレちゃったね!  そうとも、私も最初からクリストファーが怪しいと思っている。 無論、大きな力が働いているせいで見えているわけではないが、何故か知らないが私の中の何かがそうだといっているんだ」
 えっ、そうなの!? セレイナは驚いていた。
「そっ、それって……根拠はともかくとして、クリストファーさんは容疑者にされていることに気が付いているのですか?」
 そう、スクライトがそうだと見ていることは、あっちもそれを考えていてもおかしくはないのだ。
「もちろんさ。 だからこそ彼は自分が犯人であることを極力隠そうとしている―― カモフラージュにカモフラージュを重ねてクリストファー犯人説を隠蔽しようとしているってわけだ。 けど、私はそんなことでは見逃さないからね――」
 スクライトはそう言った。一方のネシェラは――
「魔法が使えるべきって言う理由とその背景――」
 そう言うと、セレイナとスクライトは驚いた。
「たっ、確かに! となると、容疑者は必然的に――」
「うむむ、なるほど――それは盲点だったね、そんなところに気が付くとは――」
 そこへスクライトは話を続けた。
「しかしそうなると、アーカネルで暗躍している犯人であると、必ずしも説明がつくわけではないんじゃないかな?」
 ネシェラは首を振った。
「それはそうなんだけどね。 ただ――それでも一部はそれで説明がつくから困るのよ。 そもそも根クリのやつ、クロノリア行きを指示したでしょ? 何のために?  魔法を使わせるようにするため? いや、違うわね。 これまでに、クロノリアで何かしらの事件があったでしょ?  ランブルから話は聞いたわよ。それを考えれば――」
 スクライトは思い出した。
「なるほど、そういえばアルトレイで”雲”が盗まれたって話をしたね。 ということは――クロノリアの封印を解いたのが間違いだったってことかな?」
 ネシェラは頷いた。
「アーカネルが大きな力によって脅かされている状況――これであんたの予測能力に不具合を生じさせる下地ができた。 そうなれば、あんたが”雲”が取られる状況を予測することができなくなる。 クロノリアさえ入り口をこじ開けてしまえば、あいつにとってはあとはなんだってよかったのよ。」
 なるほど、ということはつまり端っから目的は”雲”の入手のため――
「しかし、あの書は何が書いてあるかわからないんだぞ? そんなもの、どうして?」
 ネシェラは頷いた。
「もし、わかっていたとしたらどうする?」
 そう言われるとスクライトは悩んだ。
「ローアの時代からあるような代物だ、最悪のケースも想定できるね――」
 どんなこと? セレイアは訊くと――
「どんなことをしても処分できない書物――もしかしたら、書物ごと処分する魔法とかが書かれている可能性もあるわね――」
 えっ!? 書物ごと処分って――
「もしかして書物ごと、この世界を……ですか!?」
 セレイナはそう訊くとスクライトは頷いた。
「古い魔法にもあるからね、 ほかのいかなる手段を以てしても破壊できない代わりにすべての者を巻き込むほどの破壊手段を以てすれば破壊可能となる――そんな魔法さ。 もちろん、そんな魔法は古の精霊たちによって封じられているけどね、使用手段から完全に抹消されているんだ。 だけどそれがもし、あの書物に書かれていたとなれば――これは大変なことになる……」
 でも、そんなことしたらクリストファーだって……セレイナはそう言うが、ネシェラは――
「いえ、多分、それが根クリの目的なんじゃないかなって思うのよ。 それに、魔法が使えるべきって言う理由とその背景――それを考えたら犯人は根クリしかいないのよ」
 というと、セレイナは悩んでいた。
「たっ、確かに……その通りですね……」
 ネシェラは話を続けた。
「そのうえで、じゃあ根クリが何をしてきたか、それぞれ起こしてきた所業がどう根クリに結び付くのか、 それを考えることにしましょう。」
 犯人は根クリ前提であれこれ考えるそうだ。
「なるほどね、クリストファー……キミってやつはますます根暗なやつなんだね――」
 スクライトはそう思った。