シャオリンはアムレイナとナナルと話をしていた。
「なんか、久しぶりにこちらに来ましたね――」
「そうですね――あとはシルルがいれば――」
「ホントだよ、シルル……どこ行ったのかな?」
シャオリンは頷いた。
「2人が来る数か月前にはドミナントにもいたんですけどね――」
アムレイナは考えた。
「その前にはアーカネルにもいました、アーカネリアス全土を移動しているようですね――」
「もう! いい加減に戻って来なよー! シルルー!」
そこへネシェラが加わり、席に座っていた。
「シルル=ディアンガートって美人よね。」
そこへライアとシュタルのような女性陣が集まってきた。
「ネシェラは会ったことあるの?」
ネシェラは頷いた。
「ええ、私が戦って唯一勝てなかった相手。」
おい、いくらなんでも勝負挑むんじゃないよ、相手はハンターの最高位カイルフレアザード・マスターだぞ。
「大学時代だったわね、今思うと、あの頃からシルルは何かを探していたような気がするのよね――」
あんた、大学時代が人一倍長いでしょうが、いつの時代だよ。
「ああそうそう、あれはちょうど私が10歳のこと、つまりお兄様がアーカネルの騎士になる4年前のことだから――」
まさかの意外と最近のことだった。すると、ネシェラは何かを思い出したかのように立ち上がると、ロイドを呼んだ――
「なんだ!? どうかしたか!?」
ロイドは慌ててやってきた。
「クレメンティルに関して忘れていること! 思い出したのよ!
お兄様! お父様は失踪前にただアーカネルに行ったんじゃない!
シルルお姉様から訊いたの!」
なっ!? なんだって!? シルルだって!?
その当時、アルティニアの雪の上でネシェラとシルルは――
「はぁっ、はぁっ……流石に強いわね――」
ネシェラは息切れをしつつ、その場で伏せていた。
対するシルルは微動だにせず、長剣をくるくると回していた。
そう、2人は戦い合っていたのだ。
「別に自分の力を誇示するわけではないのだが、
それでも、ネシェラのように若い者が私に挑むなんて――」
ネシェラは嬉しそうに答えた。
「やった! お姉様に名前を覚えてもらえたわね!」
シルルは頷いた。
「私が偉そうに言うのもなんだが、あえて私のこれまでの経歴から言わせてもらいたい。
ティバリスの娘――確かにとてもいい筋をしている、
戦術そのものを操って戦うネシェラ――一太刀浴びせられたときは驚いたわね――」
えぇ……やっぱりやばいなこの子……。
「忙しいのに変なことに突き合わせちゃってごめんなさいね!」
ネシェラはにっこりしていると、シルルもにっこりとしていた。
「いいんだ、別に。
それに私のほうこそ新しい戦い方を教えてもらった気がする。
だからお礼を言わないといけないわね」
「いいえ! 私のほうこそいろいろと教えてもらえたわね!
これだけのことを駆使すれば――」
すると、ネシェラは”あのハヤブサ・アタック”を駆使し――
「よし! これなら確実にセディルを打ち破れるわね!」
そこにあった雪だるまを粉砕してしまった!
「なっ!? なんだこの娘――もう自分のモノにしてしまっているのか――」
そんな彼女の様子を見ていたシルルは絶句していた――。
いや、てか、セディルを打ち破るって例の格闘の大会のことかよ、
後に大会に優勝してエキジビション・マッチに望み、予定通りにことを進めてんな……。
ネシェラはシルルを家に誘い、そして一緒にご飯を食べていた。
「もはやネシェラは一人前のような感じだな、すること成すこと私の想像のはるか上を行く――」
大丈夫です、そう思っているのはあなただけではございません。
ただ、私としては”上”というより遥か”斜め上”を行っているように見えますが。
もとい、シルルはネシェラの作った料理に驚いていた。
そして、その日はシルルはこの家に泊まった。
翌朝、朝食の後でシルルはその家を発とうとしていた。
「ティバリスの家を訪ねてみただけだったのだがすっかりと世話になってしまったな――」
「いいよ別に、シルルお姉様ならいつでも大歓迎!」
シルルは嬉しそうだった。
「お姉様か――」
ネシェラは嬉しそうに言った。
「シルルお姉様♪ やっぱりプリズム族由来の美女は違うなぁ♪」
シルルは遠慮がちに答えた。
「美女……私には無縁な言葉だが――でも、それでネシェラが私のようなものを目標にしてくれるというのなら悪くはないな――」
するとネシェラは――
「ええ! 美人で強いなんてもうサイコーだからね!
あっ、でも……いくら何でも男は要らないかな……」
いつもの発言をした、どうして? シルルは訊いた。
「えっ? だって、私……そんなものにはまったく興味ないもの。
それこそシルルみたいに自由にあちこち行っていろんなことをするのが好きだな。
それが例えなんかしがらみみたいなもので縛られた旅だったとしても、
あちこちに行っていろんなものを見てみたいんだ――」
なるほど、シルルは頷いた。
「確かに、いろんなものを見て回るのも悪くないわね――」
そして、ネシェラは彼女を見送った。
「いろいろとありがとう! とても楽しかった!
いつでも来てね! シルルお姉様だったら勝手に入れるようにしておくから!」
おい、どういうカラクリだよ……なんとなくわからなくもない気がするが(ネシェラだから)。
するとシルルは立ち止まり、ネシェラのほうを向いて言った。
「そうだ、大事なことを忘れていた。
ネシェラ、当時ティバリスはクレメンティルに向かったそうだ。
あくまで噂に訊いただけだが参考になるというのならありがたい。
ただし、くれぐれも無茶だけはしないでほしい――」
というと、ネシェラは頷いた。
「ありがとう、シルルお姉様!
でも――私としては、それよりも先にアルクレアお姉様の足取りのほうが知りたいな――」
アルクレア――シルルは悩んでいた。
「それはすまない、力になれそうにないな。
彼女についてはまったくもって情報がない状態だ。
それこそ言いたくはないが、まさに幽霊のごとく完全に喪失している――
恐らく、最も厄介なのが彼女の足取りと言えるだろう――」
そして、彼女は去ると、ネシェラは考えた。
「アルお姉様――足取りが何もない……むしろ逆に気になるわね……」
何気にアルクレアを探すための大ヒントであった、
これにより、サイスから聞き出すことになる日まではそう遠い日ではなかった。
そう――ネシェラは重大なことを聞かされたのだ。
アルクレアについてはもちろんだが自分の父親であるティバリスの足取りである。
その標的はやはりクレメンティル――連中は一体何を隠しているというのだろうか。