アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第149節 流星の騎士団続々

 ということで、数か月後のアーカネルのティンダロス邸にて。
「大冒険してきた割には成果はたったのこれだけよ……まあ、それでもないよりははるかにマシってところだけどね――」
 ライアはネシェラと話をしていた。
「みたいね。こっちも虎穴に入り込んだにもかかわらず、わかったのは連中が何かを隠していることだけよ。 んなこと大体わかってるでしょ? だからなんとも散々たる結果よ。」
 ライアとネシェラはため息をついていた。
「ま、簡単に真相がつかめれば世話ないからな。そしたら次はどうする?」
 ロイドはそう訊くとネシェラは答えた。
「そうね、敵はそう簡単には尻尾をつかまさないハズだからね――まずは一旦様子を見ましょう、戦士には休息が必要だからねー♪」
 そう言いつつ、その場は解散した。

 ロイドはエンダリフと話をしていた。
「あんた、元アーカネル騎士だったのか……」
「ティバリスのところのだな?  ティバリスの親――つまりキミの祖父エウダロにはずいぶんと世話になったもんだ――」
 ロイドは頷いた。
「祖父のことは知らねえんだが――そういう間柄か。 てことはつまり、あんたもセディルも古来型……エターニス出身ってことだな」
 エンダリフは頷いた。
「そうだ。だが、俺たちは使命を帯びてこちらに来ていてね――」
 使命か――ロイドは考えた。
「こき使われてるってわけか、大変だな」
 エンダリフは首を振った。
「言ってしまえばそう言うことになるわけだが、案外そうでもない。 むしろ私たちの目的は人間の世に出て暮らしてこいと言っているようなものだからな」
 まさか――ロイドは訊いた。
「”メシア”か!? いるのか、この世の中に!?」
 エンダリフは呆れたような態度で言った。
「何を言っているんだ? それはキミが一番知っていることじゃないか?」
 そう言われると――ロイドは難しい顔をしていた。
「……まあ、それはそうなんだけどな」
 エンダリフは驚いていた。
「いやいやいや、だとしたら、どえらいことなんじゃないか?」
「それこそ何言ってんだ?  カマかけたように言ってみたって顔してるが、たとえそうだったとしても俺は驚かねえぞ」
「どうしてだ?」
「どうして? そりゃあ……”メシア”だったとしたら、俺はむしろ納得しかしねえからな」
「受け入れるというのか?」
「受け入れるのは俺じゃなくて”メシア”本人だろ。 それに――もし”メシア”だとしたら、他の誰が”メシア”だったってオチなんかよりも一番しっくりくるからな。 だから驚きようがねぇんだ」
 なるほど――エンダリフは納得した。
「それほどまでに”メシア”っぽいということか」
「”メシア”っぽいかどうかじゃなくて、あれが”メシア”だって言われてもあんまり不思議には思わないだけだ」
 ”メシア”の話のようだが、一体誰のことを差して? やっぱり――

 そしてその後、ヴァーティクス兄妹とヴィームラス兄妹とアシュバール姉妹、 そして元白銀の騎士団のメンバーとセディルとエンダリフの姉弟が執行官室におり、 何やら手続きをしているようだ、騎士団入団手続きか。
「いつもアレスがいないわね、リーダーなのに。」
「まっ、リーダーにはまとめるところをまとめてほしいからな」
 ヴァーティクス兄妹が話をしていた、それはその通りだった。
「で? どうするって?」
 ランバートが訊くとネシェラは頷いた。
「敵はそう簡単には尻尾をつかまさないけど――でも、このメンバーで束になってかかれば敵もいよいよ正体を暴くんじゃないかしらと思ってね。 そこでやりたいことがあるんだけどさ、これから騎士団にメンバー入りする者を全員流星の騎士団に引き込もうかと思ってさ。」
 なんと! ノードラスはすぐさま反応した。
「いや、そんなに大勢のメンバーを!?」
 ネシェラは頷いた。
「もちろん、別動隊という形で様々に展開してもらうつもりよ。 それに、このメンバーは一時的なもの、今アーカネルに起きている謎が判明し、解決したら解散する予定よ。 それまでは何があってもこのメンバーで全力で敵と戦っていくつもりだからね。」
 そうか……それならいいかと思ったノードラスだった。だが――
「ん? ちょっと待った! まさか将軍位・副将軍位の者を増やすつもりじゃああるまいな!?」
 ネシェラは頷いた。
「そりゃあそうよね、待遇改善の話をするからには必須事項よ。 しかも今や流星の騎士団の大佐位の者が多いから、ランクアップとなればもちろん次の副将軍位の者が増えることになるわけね。」
「それはならん! 将軍位・副将軍位の者は規定では全体数が定められているのだ! だから――」
「うるさいわね! もう決めたことなのよ!  それに……この件が終わったら私はここから去ることにしているから、そうなったときにあんたの好きにしなさいよ。」
 えっ……ノードラスは固まった。
「俺もだな、そもそも俺は今回の謎を追うために騎士になっただけだからな。 しかも流星の騎士団はそんな連中が何人かいる、今手続きしている者の中にもそういうのがいるしな。 だから終われば終わったでなんとか整理できんじゃねえのか?  でなければ、今回問題を起こしているやつにもんくを言ってほしいもんだ」
 ロイドもそう言った。
「そっ、そうか、そうなのか――止むを得んな……」
 ノードラスは一時的であればと渋々承諾することにした、どうにでもなれという感じである。 だが、それにしても終わりが見えているというのは何とも寂しいものだ――ノードラスは悩んでいた。 いや、そもそもノードラス自身が引退を予定している身である……。

 その後にサイスが加わり、手続きが済み次第、メンバーはティンダロス邸へと流れ込んでいった。
「もー! やっぱりおかーさんだったんだー!」
 シュタルは嬉しそうに言うとナナルは答えた。
「ごめんねシュタル、ランバート! 今まで黙ってて!」
 ナナル=ヴィームラスはナナル=エデュートだったことを打ち明けていた。 だが流石は親子、なんとなく勘づいていたようだった。
「でもそうなると、あのシルルがまさか母さんと一緒だったってことだよな、すごい話だ――」
 ランバートはそう言うと、リアントスはおちょくるように言った。
「だよなー♪ しかも俺の剣さばきはシルルを真似ていましたーってどの面下げて言えばいいんだろうなぁ♪」
 ぐっ……ランバートは悩んでいた。
「あっ、そうか、ランバートさんの二刀流センスって――」
 アレスはようやく気が付いたらしい。
「そうだ、シルルがやってのけているそれだな、あの女は大剣を二刀流にするほどの剛腕の持ち主だ。 ただ――それがプリズム族って言うのがイマイチ納得いかないが――」
 ロイドはそう言った、何故だ? その問いにはアムレイナが答えた。
「腕の筋肉が発達しているかというところですね?  確かに彼女の腕は硬いですが、見た目上はプリズム族に違わぬ美しくてか細いしなやかな腕ですね――」
 やっぱりやばいなプリズム族……ロイドはそう考えた。
「そっ、それはすごい……やっぱりシルル=ディアンガート様って素敵だなぁ♪ 一度会ってみたいなぁ♪」
 シュタルは興奮していた、お母さんの元バディなんだが……
「あっ、そうだった……意外と身近なんだ……」