アムレイナは何とも落ち着かない様子で右往左往していたが、
それとは対照的にライアは酷く落ち着いた様子で考えていた。
「ライア……なんか、すごい差があるわね――」
レオーナはこの2人のギャップに違和感を覚えていた。
そこへライアは訊いた。
「ねえ、”トラクロス・サークレット”って何!?」
ライアはそう訊くとセディルが答えた。
「トラクロス=アーケディルが身に着けていたとされるアーカネルの3つの国宝のうちの1つよ。
そう、トラクロスこそがアーカネル国を開いた存在なのよ。
最近は王位不在のせいか学校でもあまり教えてはいないようだけど――」
3つの国宝――ライアは考えるとアムレイナが続けた。
「他にも2つの国宝がありますが、サークレット同様にいずれもアーカネル国を開いた英雄の遺品なのです。
もう一つがアルオーン=ブリュータルの遺品”アルオーン・バングル”、
そしてもう一つが我が家の家宝にもなっているマーディアス=アシュバールの遺品”マーディッシュ・リング”よ」
なんだって!? ライアは驚いていた、そういうことか――
「どおりでアシュバール家が……どうしてアーカネルで影響力が強いのか初めて知ったわ――」
要はそう言うことである、アーケディルこと、現在のアーカネルは王位不在を唱えているし、
ブリュータル家は既に途絶えていない――ゆえに唯一残っているアシュバール家様様というわけである。
「ところで――その”トラクロス・サークレット”はどこにあるんですか?」
セレイナはそう訊いた、それもそうだ、何故要求してきたのだろうか、それも気になるところである。
そもそも国宝というからにはアーカネルにあったっておかしくはないのに、それを今夜に持ってこいというのは――
「それに、要求している金額があまりにも莫大です、10億とは――とてもではないが今日中に集めたところで――」
と、アウロディは悩みながら言った。するとその時、ライアは閃いた。
「ふっ、なるほど――なんとなく見えてきたわね」
どういうこと!? アムレイナは訊いた。
ということでその夜――彼女らは約束の場所に向かった。
眼帯の男は先に約束の場所にいたが、アルクレアの姿が見当たらなかった。
「人質は無事なの!?」
ライアはそう訴えた。
「ふん……その前に約束のブツをこちらに渡してもらおうか!」
「人質が生きていることを確認するのが先よ!」
「だったら品があるかどうかその場に置いて見せてもらおうか!」
そう言われて悩んでいたライア――仕方がなく要求を一旦呑むことに――
「さあ、早く!」
アウロディがあのラウドオリスに指示していた。
「こんな短時間で10億なんて到底無理だ! だが、とりあえずここに1,000万ある!
これではダメかね!?」
アウロディはそう訴えると、男はニヤっとしていた。
「1,000万か――フン、まあいいだろう。
よし、それならば次は”トラクロス・サークレット”を見せてみろ!」
それが難解な代物である、アウロディは言った。
「そんなものはない! あるとしたらアーカネルだ! ドミナントにあるわけがないだろう!」
すると、眼帯の男は――
「そうか、それではあの女を返すわけにはいかんな。
そうだな、あの女はなかなかいい女だ――殺すのはあまりにも惜しい……。
だから――私のものにするかな――」
なんだって!? 何人かは焦っていた、特に母親。
「やめて! 娘を返してください! お願いですから……お願いですから!」
お母様は泣きながら訴えていた。
「ならばさっさと用意するのがよろしかろう。
繰り返しにはなるが、あの女は殺したりはしない――いい女だからな、簡単な話だ。
それだけは約束しよう。
それがわかったらさっさと持ってくることだな!」
と、何とも激しい言い合い合戦が始まった。
そんな中、ライアは特に何も言わず、そのままずっと一人で黙り込んでいる――するとそんな中――
「くそっ! おのれぇ!」
なんと、あのラウドオリスが、槍を持って眼帯の男に襲い掛かっていた!
「いいから返せ! アルクレア様を返すんだ!」
眼帯の男はその攻撃をかわした!
「ふん、やはりあの女はアルクレア……正真正銘の本物のようだな、あたりだったということか。
だが、残念だがお前のようなやつにこの俺が倒せると思ってか!」
眼帯の男はナイフを手に取ると、そのまま兵士に投げ飛ばした!
「なっ!? くっ――」
兵士はとっさにガード! だが――
「ぐわあああああ!」
なんと、強烈な雷撃がラウドオリスの背後に襲い掛かった!
「何っ!?」
眼帯の男はその光景を見て驚いていた。それもそのはず――
「らっ、ライア!? どうしたというの!?」
と、アムレイナはライアに聞いていた、そう――雷撃の魔法を兵士に飛ばしたのは――
「ライアさん!? どうしたんです!? 兵士さんに当たってしまいましたよ!?」
「ライア! こんな時にミスしちゃうなんて!」
セレイナとレオーナと、次々と彼女の行動を糾弾するが――
「いいえ、ミスなんかしていないわよ。
私はそもそも、あの兵士を狙っていたからね――」
なんだって!? すると、ライアは前に出て、眼帯の男の前に立ちはだかると、得意げな態度で訊いた。
「なるほど、あんたが噂のマドラスさんなのね♪」
意外な展開!