ということで、シャオリンは一部を引き連れてドミナントの町へと繰り出していた。ところが――
「なんだか穏やかではない様相ですね――」
シャオリンは不思議そうに町の様子を見渡していた。
「さっきはこんな感じではなかったのですが――」
アムレイナは悩んでいた。すると――
「実はここ最近、ドミナントの町の様子が変だと里の使いの者が言っていましたね――」
と、1人のプリズム族が言うとシャオリンは頷いた。
「今日もなんだか妙なことが起こりそうです、嫌なことでなければいいのですが――」
問題はサンレイクの近くで起きていた。
「殺人だぜ――」
「マジかよ、またか……」
「この間、人が襲われたばかりだぞ?」
「先週は死んだやつも出てきたけどな」
野次馬が集まっていた、どうやら誰か死んでいる現場のようだ。
すると、そこへアーカネルの兵隊たちが慌てた様子でやってきた。
「退いて! 退いてください! いいから退け!」
兵隊たちは野次馬をかき分けて遺体の元へとやってきたようだ。
「ほら! あっちに行った行った!」
そして、野次馬を追い払っていた。そこへ――
「殺人ですか?」
アムレイナは何食わぬ顔で訊いた。
「何だ貴様は! いいから、あっちに行きなさい!」
と、怒り気味に言うが、兵の一人が気が付いた。
「なっ!? まさか――おい! お前は下がっていろ!」
と、アムレイナを追い払おうとした兵に言うと、その人がアムレイナの前にやってきて言った。
「アムレイナ様! 大変失礼いたしました! まさか、こちらにいらっしゃるとは――」
アムレイナは頷いた。
「いえいえ。それより、最近はこちらではこのような事件が多発していると訊いたものですから、気になって――」
アムレイナたちは事務所へと促された。
「なんてことだ――まただ、また当時の関係者だ――」
「ったく、何がどうなってるんだ?」
兵隊たちが話をしている中、先ほどの兵士……駐在隊長がアムレイナの元へとやってきた。
「すみませんね、そんな粗末な椅子に座らせることになりまして……
生憎、それしかありませんでして……」
アムレイナは安物のソファの上に座っていたが、
「いえいえ、そんなことはお気になさらず。
それより、お話を聞かせていただけますか?」
と、アムレイナはにっこりとした面持ちで聞いた。
「はっ、はい、かしこまりました――」
話についてはシャオリンとナナルも参加していた。
「まさか、かつての白銀の騎士団の3人がこうして集まるとは壮観な光景ですなあ!
しかもそろいもそろってまるでかつてのままの美貌!
いやあ……引退前にこんな光景が見られるとは嬉しいですなあ!」
駐在隊長アウロディは無茶苦茶嬉しそうだった。
こいつはアーカネル系のダーク・エルフか、それだけに寿命も長めで、かつての白銀の騎士団の存在を知っているのだそうだ。
「そんなお世辞とか要らないからさっさと話をしなさいよ!
特にこの2人、もういい加減聞き飽きているんだからね!」
そう言われ、アムレイナとシャオリンは遠慮がちだった――定番のイジリ……。
内容についてはだいたいアーカネルにいる間でも聞いていた報告の通りだったが、
その背景については何とも大変なものだったようだ。
まず、ドミナントで起きている殺人事件などの問題は、
そもそも当時の風雲の騎士団や、さらには前の白銀の騎士団が活躍していた頃のアーカネルの関係者がターゲットとなっていた。
ちなみに、今回の被害者もそのうちの一人だそうだ。
そこまではわかっているのだが、それが何故ドミナントなのか? そこがイマイチわかっていなかった。
だが、その答えについては、一つの結論にたどり着いた、それは――
「レギナスさんですね、
風雲の騎士団結成からまもなくして――正確にはクロノリアに行った直後に受けた指令で亡くなっています」
アムレイナは頷いた。
「2年半後にですか――」
しかし、そこへナナルは――
「あの……本当に2年半後なんでしょうか?
風雲の騎士団は結成してすぐにクロノリア遠征を言い渡されています。
クロノリア遠征については1年もかからずにあの人は戻ってきていますが、
その後はリオルダートに行くといったっきり戻ってくることはありません。
確かに、戻ってきたときは2年半後に遺体で戻ってきて――」
そう言われてアウロディは両手を上げて答えた。
「そうですね、奥方がいらっしゃるというので話をしておきますか。
実は――レギナスさんはリオルダート遠征を言われたのですが、
急にドミナントに向かうことになったらしく、この地にきています。
実際にこの駐在所に顔を出すと、怪しいやつがいないかと訊いてきたのですが、
ある日彼はサンレイクのほとりで亡くなっていました――」
なんだって!? アムレイナたちは驚いていたが、ナナルは真剣な表情で聞いていた。
「そうですか……つまり、あの人は騎士団結成の年には亡くなっていたということですね――」
まさかの事実だった。