クロノリアの西にある”シュリウス”の遺跡……辺りは荒廃した土地が広がっていた。
「これがシュリウスですか――かつては高度文明が発達した地だと聞いていますが、
世界崩壊のあおりを受け、それから幾年もの時間を経ているというのにこの地はこのままなのですね――」
セディルは憂い気にそう言うとディアはマジメな顔で言った。
「そうだね、ここには機械の部品みたいなものもある、建物も恐らくビルディングというものが建っていたんだろう、
それも今のリオルダート島のそれなんかとは比べものにもならないようなかなり文明の進んだものだ。
だけど……すべては無へと帰してしまった、形あるものはみな壊れる運命をたどっているということのいい例だね――」
やはり作り手としてはかなり深刻な問題なのだろう。だがしかし、ディアは前向きだった。
「なぁに、壊れたらまた作ればいいんだよ、
俺の役目は作ることだけ、俺はそう教えられて育ってきた。
例えモノが壊れたところで俺たちのやることは変わらない、俺は作り手だ、だから作ることが使命なんだ」
セディルはにっこりとしていた。
「ネシェラと同じことを言うのですね?」
ディアは頭を掻いていた。
「まあ――そうだね、シルグランディアの教訓ってやつかな?
シルグランディアの考えについては俺らも同じ考えなんだよ、
アトローナはシルグランディアが築き上げた土地だから、その流れは俺たちにも受け継がれている――
彼女がまさに”シルグランディアを継ぐ者”だというのなら、ネシェラがそう言うのはごく自然のことだと思うね」
シルグランディア……セディルは訊いた。
「セント・ローアの英雄ですか……。
確か、プリズム族の間では”イセリア=シェール”というのがいると言うことですが……」
ディアは考えていた。
「そう言われるとなんとなく心当たりがありそうなんだよな、何だっけな……。
もしかしたらヴァスハムスが知っているかもしれないから、訊いてみるよ」
そんな話をしながら、さらに西にあるというドミナントへと歩を進めることとなった。
そして、アーカネルを出発して約4か月、ようやくドミナントへとたどり着いた。
そこはなんとも開放的な佇まいの建物が並び、
しかも外の人を受け入れるかのような全体的に明るめの色合いの素敵な街並みだった。
「すべてが始まる地、ドミナント……」
ライアはそう言うとセディルが言った。
「ローア期の英雄たちもこの町から旅だったそうですね――」
そう、由緒ある土地なのである。
そして、その土地を旅立つ者は町の中央ほどにある”サンレイク”のほとりにある
”太陽の祭壇”で安全を祈願するという風習があるのだ。
「ここがそうなのね……」
レオーナはそう言った、彼女らはその場所までやってきたのである。
「誰もが通る道ってところ?」
アルクレアが言うと、ライアは頷いた。
「だったら、他のみんなにもここに来てもらう必要がありそうね」
そうかもしれないが、
「でも、ロイド君やネシェラちゃんあたりなら来ているんじゃないかな?
あちこちに行ったことのあるハンターなんでしょ?」
と、ナナルが言うと確かに――何人かは頷いた。
その後、彼女らは町から離れ、南のほうへと向かっていった。
そこは海岸であり、南の海が見えるところだ。
「本当に、随分と遠いところまできたものね――」
ライアはそう言うと、アルクレアも空を見ながら言った。
空と海の青を見て嬉しそうだった。
「そうね! 魔物は強いけど、それでもいろんなところにいけるのだから、私はうれしいな!」
ライアは訊いた。
「サイスさんとは仲がいいのね――」
アルクレアは嬉しそうに答えた。
「まあね、既にいろいろと聞いていると思うけど、まあ……そういうことなのよ。
それよりも、ライアこそ、あのロイド君といい感じだって言うじゃないの♪」
ライアは嬉しそうに答えた。
「ええ、彼はとてもいい人よ。
口はちょっと悪いけど仲間想いだし、頼りにはなるわね――」
アルクレアは頷いた。
「だね、だって、お父さんもお母さんも亡くなって気を張っているハズだもん――
それだけしっかりしているよ、ロイド君もネシェラちゃんもね。
私なんかよりもすごいしっかりしてる……だから、ライアはすごいよかったんじゃない♪」
「お姉様こそ――あのサイスさんよ、すごくいい人と一緒になれそうじゃない……」
「ふふっ、そうだね! お互い、いい人に巡り合えてよかったね♪」
アシュバール姉妹はとても嬉しそうだった。
そんな2人の背中を眺めながらお母様も嬉しそうだった。
アムレイナは海岸であちこち探し回っていたが、目的の者は見つからなかった。
「彼女らは……”プリズム・シャドウ”族はドミナントよりも南にある島からやってくると言いましたが、
つまり島なので渡航手段はもちろん船でということになりますが、それらしいものが見つからないようですね……」
アムレイナは悩んでいた。だが、彼女は何かを思い出し――
「そうです、エデュート邸です! エデュート邸に行きましょう!」
エデュート邸……ナナルは複雑な気持ちだった。
「家出娘が舞い戻ってきたということか――」
セディルはなだめていた。
「そうでしょうね、お気持ちはわかります。
帰ってきて、今更どんな顔をしていいかわかりませんものね。
それなら、私と一緒に宿屋に――」
だが、ナナルは首を振って答えた。
「ううん、大丈夫よ、どうせ顔を合わす家族もいないし――」
えっ、どういうこと……? セディルは訊いた。
「エデュート邸はがら空きなの、つまり、元の家主はもういないってことよ、いろいろとあってね――」
いろいろ……セディルは考えていた。
「がら空きだった? 元の家主?」
セディルはそう言うとアムレイナが言った。
「ええ、誰もいない無人の家に彼女はいるハズです、この近くですから行ってみましょう――」