アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第138節 深い闇

 ところが、犯人はいち早く自白した。 すべてが片付いた後の病院にて――
「ディアス……」
 ロイドは腕を組んで彼に話を聞いていた、一応言うが、自白したのは彼ではない。
「面目ない、メンバーの管理不行き届きで――」
 ディアスはベッドの上で申し訳なさそうにしていた。
「ったく、踏んだり蹴ったりだな、メンバーが誰かにそそのかされてスイッチをオフにした、 そのせいで魔物の襲撃にあって重傷を負う羽目になるとは――」
「しかも当の本人は重症だ、意識だけは戻ったが今はまともに話ができる状態じゃない、 今じゃあ口を割っただけでも十分と言える状態だ」
 ロイドとリアントスはそう言うとディアスは悩んでいた。
「そうか……。して、彼は今どこに?」
 ロイドは答えた。
「ああ、地下牢に閉じ込めてある」
 なんだって!? 重症なのに地下牢だって!? ディアスは驚いたが、
「心配するな、実はこのほうがいいんだ。 誰かにそそのかされてやったというのなら、その誰かから死にかけている状況めがけて口封じされる可能性がある――」
 ロイドは言うとディアスは納得した。
「そういうことか……」
 そして、リアントスからさらに悪い知らせが。
「黒曜騎士団の団員だが、あんたと牢屋の中のやつ、あとはもう一人隣の病室にいるやつ以外は全員死んだ。 隣の病室のやつも意識不明の重体で予断を許さない状態だ、 あんたらはそろいもそろって引退間近だったってのに最後の最後にとんでもないことになったな――」
 そう言われてディアスは落胆していた。
「くっ……我らが黒曜の名はこれで終わりということかっ……」

 ティンダロス邸にて、ネシェラは考えていた。
「お母様やライアたちまでもが留守の間に仕掛けてくるなんて……」
 ロイドは訊いた。
「予測してなかったのか?」
 ネシェラは首を振った。
「いや、実はなんとなくだけど、そんな気がしてはいたのよね。 だけどまさか、こんな手を使ってくるなんて――」
 予測していた? リアントスは訊いた。
「クレメンティルに行くって先方には伝えておいたでしょ?  そしてライアたちはドミナントに行く計画をしていた、 これを好機ととらえて何者かがアーカネルを陥れてくる――かもしれないとは思ったわね。 だから泳がせておけばなんかしてくるんじゃないかぐらいには考えていて対策だけはしていたんだけど、 超えてきたわね――。」
 超えてきたか、うーん……。
「確かに、アーカネルを何らかの形で攻撃してくるという感じはするな、 アルクラドでの戦いといい、アテラスの件といい…… それ自身はそう思うが、敵は何がしたいんだ?  そして、それがやっぱりクレメンティルの目論みであっているのか?」
 ネシェラは首を振った。
「流星の騎士団がある意味ターゲットになっているのは間違いないわね。 だけど、それは攻撃対象としてではなく、避けるべき対象となっているのは確実なのよ、 わざわざ私らがいない間に狙ってきているぐらいだしね。 それに……あの装置の電源を切った騎士の行動も気になるのよ。 だって、そんなことしたらどうなっているかわかっているでしょ普通――」
 ロイドは考えた。
「確かに……魔物を妨害する装置を停止したら魔物が襲ってくるはずなのに、よくもまあ停止させたもんだな」
「だとしたら……どうやってスイッチを切らせたって言うんだ?」
 リアントスは訊くとネシェラは頷いた。
「停止させられる方法は1つしかないわね、 定期メンテナンス……機械の調子を見ないといけないから一旦スイッチを切ってくれって。」
 そう言われてロイドは気が付いた。
「そんなこと言えるやつ、そうそういないな――」
 そう言いつつ、ロイドは立ち上がるとネシェラが先に飛び出していった。
「先に行ったな、他の話が中途半端のままなんだが――」
 リアントスは呆れながら言うとロイドは座り直した。
「だな、まあいい、犯人はまた執行官の中にいることは確実らしい。 でも、クレメンティル首謀者説はありそうだな。 俺らがいないことを確実に狙うとしたらやつらが絶対的にわかっているはずだ。 あのアテラスのことを思い出してみるといい、 クレメンティル信者ならクレメンティルから言われれば確実に何かしでかしそうだ、結果がどうなるとも知らずにな――」
 するとそこへネシェラがため息をつきつつ戻ってきた。
「ったく、とうとうやりやがったわね――」
 どうしたんだ? ロイドは訊いた。
「犯人は黒曜騎士団おかかえの現地執行官のラバリフ=アルマドスだったわよ。 最初は青光騎士団を担当していたのに解散と同時に黒曜騎士団へと再配置された人物みたいね。 ただ、残念なことにさっき遺体で見つかったそうよ、毒を飲んだみたいね――」
 なんてこと……。
「だんだん闇が深くなってきたな……」
 リアントスは悩んでいた。