アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第137節 アーカネル危機

 一方、クレメンティル組はというと、一部はそのままクレメンティルへととどまったが、 ネシェラなど一部は手前の宿場町まで戻ってきていた。
「とりあえず、一通り怪しい場所を調べてみたけど――」
 と、ネシェラ……おいおいおい、あれだけ言っておいてどうやって調べたんだ。
「”エーテル干渉”か?」
 ロイドはそう訊いた、なんだそれは。
「そう。早い話、魔法による探知手段ね。 大気中にごく微量の魔法を断続的に流し込んどいて、 空間の物理的接触や魔法的接触を計測する方法を取ってみたのよ。 そしたら――」
 そう言いつつネシェラはおもむろに机の上に紙を広げると、 その上に手をかざした――
「なっ、なんだ!? 地図か!?」
 ランバートは驚いていた。紙の上にはクレメンティル大聖堂の見取り図が!
「すごーい♪ やっぱりネシェラ姉様ってすごーい♪」
 シュタルは感動していた。
「可愛げのないかくれんぼ……」
「そうそう、すーぐ見つけるんだもんな……」
 ディライドとリアントスは悩んでいた。そういう使い方をしてたのか、とにかく、お察しします……。
「とにかく、クレメンティルの蟻んこ一匹逃さず構造を分析した結果、 ”調べられた範囲”では怪しい場所はなかったわね――」
 隅々まで探したということか。 しかも蟻んこ一匹という通り、当時ネシェラが調べた際の人の配置まで鮮明に表示されていた。 だが――
「でも、ここは? ここって例の二手に分かれた通路で、騎士が塞いでいた通路じゃないか?」
 ロイドはそう言いながら指をさした。しかし、その通路の先は――
「何もないんじゃないか?」
 リアントスはそう言うが、ネシェラは首を振った。
「いいえ、この先はエーテルの探知が及ばなかった所ね。 その理由はただ一つ――」
 ロイドは頷いた。
「なるほど、別の魔力による干渉を受けたせいってことか。 簡単に言えば、ここには魔法による壁があって、 物理的には通れるんだが魔法的にはここで阻まれてしまったってことだな」
 ネシェラは頷いた。
「そう。つまり、魔法的な何かがあの先から発せられているか、 純粋にあの場所に私のこの探知能力を阻むために魔法バリア的なものを張ってあるのか―― そのどちらかってわけね。」
 いずれにせよ、あそこには直に踏み込まないといけないということか。
「でも……魔力干渉ったって――ほかの場所もそういう場所があってもいいと思うんだが、 この地図だとどれがそれに相当するんだ?」
 確かに、昨今のアーカネリアス事情では魔法が使われている文化でもおかしくはないが――自粛しているとか……?
「いえ、そういうものは透過するようにしているわね、 魔法を使っている場所まで探知するようだとキリないし、 そもそも魔法が使われているのならこんなことしなくたって私ならわかるし。」
 ネシェラが言うとロイドも言った。
「俺もわかるからな、多分エターニス由来かクロノリア由来ならだいたいわかることなんじゃないか?  でも、この魔法バリアの部分に関してはあからさまな魔力量が働いているから探知できなかった―― それぐらいでないと説明は付かないってところだな」
 ネシェラは頷いた。
「ええ、いずれにせよ、この奥には何かがある――ということになりそうね。」

 クレメンティル組はアーカネルへと帰還した。 だがしかし、そこで問題が――
「ちっ……取り逃がしたか――」
 ディアス率いる黒曜騎士団がアルティ門でなにやら戦いを展開していたようだ。
「何、ちょっと、どうしたのよ!」
 ネシェラはいち早く反応してディアスに訊いた。
「ネシェラ殿か……ここはいいから早く、ミストガル門へ……!」
 ディアスもなにやら瀕死の重症を負っていた……。
「ミストガル門だな、行くぞ――」
 そう言いつつリアントスは町へと入るとそのままミストガル門のほうへと向かっていった。 ロイドとシュタルとランバートも彼に続いた。
「どうしたのよ!? 何があったの!?」
 ネシェラは言うとディアスは答えた。
「魔物が現れたのだ――強力な魔法を使うやつが現れ、1人また1人とやられていった……。 とりあえず、ここは追い払うことに成功したが――」
「他の門は!?」
「わからん……。 とにかく、クロノリアの者がそれを教えてくれて、いち早くこうやって駆けつけてきたのだがこのざまだ――」

 ミストガル門へと向かっていった4人は――
「スティア! 大丈夫か!」
 その場にいた彼に向かって叫んだリアントス、彼は腕を押さえてたたずんでいた。 その隣にはクレアがいた。
「なんとか大丈夫だぜ、クレアさんが防御魔法を展開してくれてるからな……。 だが、連中はぞろぞろと来やがる、急になにがどうなっているってんだ――」
 魔物は結構な数で迫ってきていた。 すると、ロイドは気が付いた。
「こいつは……犯人捜しをしなければならなそうだな」
 なんと、例の魔物の妨害装置のそれが機能していないようだった、 それについてロイドが言った。
「おい! いるんだろ! 機械の機能を復旧させてこいよ!」
 誰に言っているんだ――と言いたかったが、そいつはすぐに姿を表した。
「なんだいロイド君、私を呼んだかい?」
 スクライトだった。
「いいから、言った通りにして来い!」
「言った通りって? 何を言っているんだい?  その機械の場所はシークレットだろう? ましてや、私にそんなことができるとでも?」
「いいから、四の五の言わずにさっさとやれ!」
 そう言われてスクライトは頭を掻いていた。
「やれやれ、人使いが荒くなったもんだね。 まあ仕方がない、どうやら私にしかできないようだからね。 くれぐれもそっちは頼んだよ――」
 そう言うと、スクライトはその場を去って行った。 すると、なんだか空気がすっきりとしたような感覚が――
「……そういうことか、それでやつがいるってわかったのか――」
 と、リアントスが言うとロイドは剣を構えながら言った。
「ああ、ヤローがいなくなったから寒々とした気配がなくなっただろ?」
 というのは冗談で、スクライトが展開していた魔法で町に魔物が入るのを妨害していて、 ロイドはそれに気が付いただけのことだった。
「とにかく、やつがいなくなったから復旧するまではここを守り続けろってことだな――」
 リアントスはそう言った、魔物たちは町をめがけて襲い掛かってきた――