セディルとディアスはエドモント門で待っていると、そこへアムレイナとナナルがやってきた。
「ナナル=ヴィームラス、まさか本当にあのナナル=エデュードだというのか……?」
ディアスは恐る恐る言うと、ナナルは両手を腰に当てつつディアスの顔を見上げて覗き込むように言った。
「これが天下のディアス将軍……昔っから全然変わってないわねぇ――」
そう言われてディアスは面を食らっていた。
「ななっ!? もしや、面識が!?」
ナナルは呆れながら得意げに言った。
「ないわけないでしょ、白銀の騎士だったんだから元同業者、
ちょっとぐらいは一緒に働いたことあるわよ、もっとも、当時は私のほうが上だったんだけどねー♪」
「すっ、すまん……何しろ、若い頃は厳しい先輩が大勢いたものでな――」
ディアスは冷や汗をかきながらそう言うと、ナナルはにっこりとしながら言った。
「ふふっ、ええ、それも覚えているわよ。
ま、私としても当時のあんたはひよっこの青二才、
それぐらいしか印象なかったのに、いきなり将軍位を授かってたから意外だったわねー、
それもこれもひとえにアムレイナとセディルのおかげかしらねー♪」
ディアスは悩んでいた。
「やっ、やめてくれ……」
とにかく、なんとも若そうな印象のナナル、態度も見た目もしゃべり方までもがなんとも若そうだが、
前にも説明した通り、印象の幼さこそがダーク・エルフの特徴……それゆえの彼女である。
そんなナナルがディアスを揶揄っているさまにアムレイナとセディルはにっこりとしていた。
ということで女性陣ばかりが集まったチーム編成、
ティンダロス邸へと一堂に会していた。
「あなたがライアちゃんね!」
ナナルは彼女に食いついていた。
「シュタルのお母様――」
ナナルはにっこりとしていた。
「いつも娘と仲良くしていただいて! ありがとうね!」
その顔の印象はまさにシュタルと瓜二つ……これは間違いない、親子だ。
「いいえ、こちらこそ、いつも仲良くさせてもらってありがたいわね――」
そして、ルルカとリリアン、そしてディアスにも見送られてドミナントへ向けて出発した女性陣、
馬車を走らせつつも、セディルとレオーナは自分たちが浮いているのではないかと思って悩んでいた。
それをナナルに打ち明けると――
「確かに、他はみんな”プリズム族”だもんねえ――」
と、彼女は楽観的に答えた。さらに続ける。
「言っても、私も昔は4人でつるんでいたけど3人ともプリズム族だったからねえ。
でも、その時にシルルは”ナナルはナナルなんだし”って言ってくれて、
アムレイナは”シルルとずっと仲良くいたんだし、
今度は私たちも一緒なんだから今更孤独を感じることなんてないでしょう”って言ってくれて、
シャオリンは”女同士仲よくしよう”って言ってくれて、
なんだかんだで楽しく過ごせていたのよね♪」
アムレイナが反応した。
「あら、なんだか懐かしい話をしていますね!
確かに、プライベートでもだいたい一緒でしたね――」
ナナルはにっこりとしていた。
「また昔みたいになれるといいんだけどな――」
「ええ、もちろんです。
お互いに愛する旦那とも死に別れ、そして子供も大きくなって自立したことですし、
ゆっくりとお茶でもしましょうね♪」
ナナルとアムレイナが嬉しそうに話をしていると、アムレイナの娘2人も嬉しそうに話をしていた。
「ですってよ。
知らない間に私たち、お母様から認められているみたいね」
アルクレアが言うとライアも言った。
「確かに。
それにしても、私、お母様が実はお城に従事していたって話、全然知らなかったのよ――」
アルクレアは頷いた。
「私も全然知らなかった。
サイスも知らなかったみたいだし、ましてやシルル=ディアンガートと一緒だったこともあるだなんて――
正直とっても驚いたわね――」
それに対してナナルは悩んでいた。
「そうなんだよね、4人みんな一緒だったんだけど――」
「どうしたんです?」
レオーナは訊くと、ナナルも訊いた。
「あの――セディル……? 失礼を承知で聞くんだけど、結婚ってしている?」
急に何の話だろうか、とりあえずセディルは答えた。
「ええ、まあ――彼は随分と早く亡くなってしまいましたが、一応子供もいますね」
「だよね……うーん――」
ナナルは悩んでいた。すると、アムレイナはそれを察して言った。
「まさか――シルルはまだ結婚する気がないのですか? 他人には勧めておいて!?」
えっ、まさかそういう話……?
どう生きるかは自由だとは思うのだが、他人には勧めておいて自分は……それ、どうなんだろう……。
「自分には必要ない、私が選んだ道はそれじゃないって言って全然その気がないのよ」
と、ナナルは友人を心配しながら言った。
「私たちに相手ができると子供でも作って幸せになれ、
面倒ごとは私が1人で片付けるからついてこなくていいって言って――」
それでシルルは1人で奔走しているのか――
「確かに1人で危ない目に合う生き方を続けるというのは感心しませんね――」
そんな事情にセディルも悩んでいた。
「なるほど――自分には必要ない、私が選んだ道はそれじゃない――どこかで聞いたようなフレーズね……」
ライアも悩んでいた。私も似たようなことを聞いたことがあります。