シャオリン=ラトリス、彼女もまた結婚をし、今ではシャオリン=ウェラシェンドを名乗っているのだという。
「彼女は”プリズム・シャドウ”族、私たち”プリズム・エンジェル”族とは祖を同じとする者同士、
彼女たちもまた私たちと同じように掟の中で社会性を営む種族なのですよ」
ルルカはそう説明するとライアは悩んでいた。
「ん? ウェラシェンド……?」
アムレイナは頷いた。
「ええ、シュシュラ=ウェラシェンドはシャオリンの娘です。
つまり、シュシュラも”プリズム・シャドウ”族ということになりますね」
意外とつながりは近いのか、ライアはそう思った。
でもまあ、一般的には閉鎖的で世の中に進出していないようなプリズム族がどうして世の中にいるのだろうと考えればむしろ納得はできそうだとライアは考えた。
「で、その”プリズム・シャドウ”族はドミナント地方に住を構えている……というわけね?」
ライアはそう訊くとアムレイナが話した。
「ええそう、正確にはドミナントから南の沖にある小さな島――
そこにある森の中に隠れ住んでいると聞いたわね。
そこからドミナントにお使いを出して世の動向を探る――
このあたりの性質も私たちとは同じような風習の中で暮らしているということになるわね」
ちなみに、結婚をした相手のほうの姓を名乗ることが多いのもまた彼女らの特徴なのだそうだ。
「ドミナントにってことは――シルルもプリズム・シャドウ族ってこと?」
ライアはそう言うとアムレイナは頷いた。
「多分そうだと思うけど、彼女についてはあまりよくわかっていないのよ。
彼女は孤児だけど、いざプリズム・シャドウの里で彼女のことについて話をしても、
彼女のことは誰もわからないそうなのよ。
それに、プリズム・エンジェルとプリズム・シャドウという違いがあっても見た目では区別はしにくいから、
はっきり彼女がそうだとも言うこともできないのよね――」
故に”プリズム族”とまとめて表されるのである。
「シャオリンに訊いてみたいことがあります。
だからドミナントに行ってみようと思いますが、いかがでしょうか?」
セレイナは嬉しそうに頷いた。
「私も会ってみたいです!」
白銀の騎士団……かつて闇に葬られた騎士団のメンバーはどのように過ごしているのだろうか。
そして今は何をし、何を思うのだろうか。
次の日のこと――
「ネシェラたちは10日ほどこちらには戻ってこないハズですから、くれぐれもお願いしますね――
もっとも、黒曜の騎士団に任せておけば問題はないかと思いますが――」
セディルはディアスにそう言うとディアスは悩んでいた。
「余計なプレッシャーをかけるんじゃない。
ただでさえネシェラ執行官がアーカネル中をひっくり返している――
いや、それ自身は大歓迎だが……」
セディルも悩みながら言った。
「お世辞は言わなくてもいいんですよ、
慣れないのであれば慣れないでいいのではないですか?」
ディアスは首を振った。
「いや、ネシェラ執行官はいいのだ。
ただ……その変化の流れについていけないことで私らもいよいよ”老害”と言われるようになってしまってな――」
セディルは驚いていた。
「そうなんですか!?」
ディアスは悩みながら言った。
「はっきりとな、若い騎士たちに陰口を叩かれていた。
それでメンバーの1人が気を落としてしまってな、この流れが広がらなければよいのだが――」
セディルも悩んでいた。
「昔の私たちを見ているようですね、
つまり、私たちもいよいよ言われるようになったということです。
ただ――その様子では……」
「ああ、そういうことだな。
まあ、あいつはもうじき引退することが決まっている、
それまではゆっくりと過ごさせてやりたいのだ、
たとえ老害と言われようがな――」
セディルは腕を組んで言った。
「あなたも流星の騎士団に拾われる日も近いのではないですか?」
セディルは話を続けた。
「実は私も数年前に”老害”と言われました。
それでメンバーの1人がやはり気落ちしてしまいましてね、
既に引退するような年齢だったこともあり、退役することを決意したのです」
なんだって!? ディアスは驚いていた。
「セディルまで言われたのか!?
だが、お前は精霊族、そんなことを言われるとは――」
「アーカネルは人間の世界です、人間が圧倒的に多いです。
それなのに頭にいる者は精霊族ばかり、納得がいかないのでしょう。
それに私はあなたと同じ、この世界に入ってからとても長いです。
老害と言われてもおかしくはなくなっていますからね――」
セディルは達観していた。
「そうだったのか……。
だが、私は流星の騎士団に配属されることはないだろう。
あと2年後には60を迎える、知っているとは思うが人間で言えば還暦と言って、
これを機に仕事に見切りをつけ、余生を過ごすのだ。
ライト・エルフでは88がその年齢だったか?」
ディアスは訊くとセディルが答えた。
「私は”古来型”と呼ばれる種類なのでさらにもう14年先、
つまり、その考えで言えばまだ44年も現役でいけるということになりますね――」
それに対してディアスは驚いていた。
「なんと、セディルまでもが”古来型”だったのか!?
しかし、もう44年も働き続けようというのか――」
セディルは首を振った。
「いいえ、私は今回の件が終わったらアーカネルを去ろうと考えています。
この世界は思ったより深いです、だから未知の領域というものにも興味が沸いてしまいまして――」
ディアスは頭を抱えていた。
「ネシェラ執行官の影響か――」
セディルはにっこりとしていた。
「それも一つありますが、私は”古来型”ですからね、
言ってしまえばネシェラのおかげで”決心した”というのが正しいでしょう。
恐らく、流星の騎士団はほとんどの者が今回の件が終わればいなくなり、解散することとなりましょう。
私もその流れに身を委ねてみることにしたのですよ、
流星の騎士団に配属されることを引き受けたのもそういった理由ですね」
そうだったのか、ディアスは納得した。
「つまり、流星の騎士団にとっては、今アーカネルに起きている負の連鎖を食い止めることこそがすべて――」
「その後にはアーカネルには正しい流れを紡ぐべく、皆がそれぞれの道を歩むのですよ」
セディルは何を決心したのだろう。