アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第127節 不在の執行官の謎

 そして――6人はそのままアーカネルへと帰還した。 そのままネシェラは執行官室へと向かった。
「アテラスはいるかしら?」
 ノードラスに訊くが、ノードラスは驚いていた、それもそのハズ――
「なっ!? なんと! まさか……アルクレアか……!?」
 そう、彼女が一緒である。アルクレアはにっこりとしながら訊いた。
「久しぶりねノードラス! 今じゃあすっかりと執行官長の座に落ち着いて、胡坐掻いて座ってるのね!」
 そう言われてノードラスは困惑していた。
「ま、まあ――おかげさまでな。 ひとえに風雲の騎士団の活躍のおかげでこうしていられるのだ、アルクレアには感謝してもしきれないな……」
 ノードラスは当時まで風雲の騎士団を主に担当する執行官だったそうだ。 彼らが活躍すれば彼の実績にもなるのである。
「あれ? 現地執行官だったんじゃないの?」
 ネシェラは訊くとアルクレアが言った。
「最初はね。 だけど――クリストファーからの依頼だっていうからってクロノリア行きの際に現地執行官の任から解かれたのよ、 執行官抜きで騎士たちだけで事に当たってほしいってことでね。 そしたらこいつ、なんて言ったと思う?」
 ネシェラは頷いた。
「なるほど、話が見えたわね。 ノードラスはへっぴり腰だからね、 さしづめ、僕はもともと戦いには向いていないからちょうどよかったです、とか何とかいったんじゃないの?」
 そう言われてノードラスは焦りながら訊いた。
「キミ、本当はいくつだね!? 当時の話を聞いていたのか!?」
「なっ!? ……て、アタリかよ!」
 ネシェラは驚きつつツッコミを入れていた。アタリどころの話ではない、原文ままだそうだ。
「だったらなんで最初に現地志望してんのかしら?」
 ネシェラにそう言われるとノードラスは悩んでいた。
「ま、さしづめ、そっちのほうが待遇いいからってところでしょうけど――」
「なっ!? いや……決してそんなこと――」
「はぁ!? ウソでしょ!? 図星かよ!? ……ったく、やれやれ……」
 ネシェラは呆れていた。
「……確かに、滅茶苦茶当てていくわね――」
「そうなのよ、ネシェラちゃんってホントすごいのよねぇ……」
 ライアとアルクレアは冷や汗をかいていた。

 話を戻して。
「それより、アテラスは何処?」
 ネシェラに言われてノードラスは我に返った。
「アテラス? 今日は休みを取っているが――」
 ネシェラは頷いた。
「ええそう、そのアテラスよ。 今すぐ呼び出してくんないかしら?」
 どうしてもか――ノードラスは仕方なく呼び出すことにした。

 ところが――
「何!? アテラスがどこにもいないだと!?」
 ノードラスは兵士から話を聞いていた。
「はい――自宅はもちろん、アーカネル内のあちこち…… すべてではありませんが探してみてもアテラスの姿はありませんでした――」
 兵士から話を聞くとノードラスは頷いた。
「そうか、となると、大方オーレストかエドモントンあたりにでもいるのだろう」
 と、ノードラスはネシェラに言うが――
「じゃあ、すぐにでも呼び出しなさいよ。」
 ネシェラからは逃げられなかった。

 そして――
「何!? オーレストかエドモントンにもいないとな!?」
 騎士兵士たちが集まって報告しているのを聞いてノードラスは驚いていた。
「町の中にいるかは完全に確認しているわけではありませんが入り口はチェックしているようです――」
 それに対してネシェラは反応し、立ち上がって話に参加してきた。 それにはノードラスもビビっていた。
「いや……ネシェラ執行官! 流石にこれ以上探すのは――」
 ネシェラは言った。
「いいわよ、これでわかったから。 もしオーレストかエドモントンの中にいるとしても正規ではない別の手段で入っていることは確実ね、 しかも誰にも知られずに行っているってこと、なんのために?  今受けた報告だと、アーカネルにはいないことが分かったし、 そのうえで隠れているとしたら――なんのために隠れているのかも気になるところよね。」
 騎士の一人が訊いた。
「アテラス執行官ならアルトレイとかランペールとか、ほかの場所にいるんじゃないですか?」
 ノードラスは頷いた。
「ああ、もしかしたらその可能性もあり得るだろうな。 だが――その場合は規定により届け出がなければおかしいのだ」
 そう、そう言うことである。 届け出なしで行けるのはオーレストとエドモントンとその間を結ぶ街道のみと定められている、 他に行くことは許可されていないのである。
「ノードラス、アテラスのことなら私に任せて。」
 ネシェラは言うとノードラスは悩みながら言った。
「本当は任せたくないのだが、当てがあるということだな――それなら止むを得まい……」

 そして次の日――アテラスはいつも通り出勤してきた。
「あらおはよう、アテラス♪」
 ネシェラは意味不明なぐらいに上機嫌で話しかけてきた、もはや嫌な予感しかしない。
「えっ、ネシェラさん……? おはようございます、何かありましたか……?」
「昨日は何処に行ったのかしら?」
 そう言われてアテラスは何食わぬ顔で訊いてきた。
「昨日ですか? 昨日は休みですよ?」
「そうよ、だから呼び出そうとしたんだけど、 アーカネルにもいなかったみたいだしオーレストやエドモントンにもいなかった。 で、どこに行ってたのかしら?」
 そう言われてアテラスは焦っていた。
「えっ? ええ、そうですよ? 私はクレメンティルにいましたからね――」
 クレメンティルだって? ネシェラは訊いた。
「えっ、届け出ないじゃん?」
 そう言われてアテラスはあっけにとられていた。
「えっ? クレメンティルですよ? 届け出は必要ないでしょう?」
 ネシェラは首を振った。
「クレメンティルは必須。忘れたのかしら?」
 そう言われてアテラスはさらに焦っていた。
「えっ、だって、トラキアスさんとガルデスさんが――」