アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第125節 もはやそもそも何だこれは

 翌日、大森林帯の標石前へと目指して5人は歩いていた――
「ねえライア、お願いがあるんだけど――」
 ネシェラはそう言うとライアは頷いた。
「ええ、もちろん――」
「お兄様――」
 ロイドは頷いた。
「心配することはないだろ?」
 というが、ロイドの目はネシェラをしっかりと見据えていた。
「そうね、そのとおりよね!」
 そう返すネシェラの目もなんだかマジモードだった。
「しかし、なんとも妙なものです、アルクレアを迎えるだけなのに―― ですが、命が狙われている可能性があると言われると――」
「そうですね、自分の娘のことだから早く会いたい気持ちばかりが強くなっていますが、 こんな、なんとも物々しいようなことでもしないとと考えると―― なんとも胸が張り裂けそうな気持ちです――」
 サイスとアムレイナは複雑な思いだった。

 そして――目的の場所へとやってきた。 森のほうとは反対側の標石の前に立って待っている5人だが――
「ふう――どうしたもんかしら?」
 だが、プリズム族のほうはまるでくる気配がなかった。
「どうしたのでしょうか?」
 アムレイナはそう言うと、ネシェラが気が付いた。
「なんか、風の流れが妙な感じね、そのせいで彼女らが出てくるまでに時間をかけているんじゃないかしら?」
 アムレイナは驚いていた。
「えっ!? でも、確かに――時々、森にはこういうことが起きるって聞いています。 これでは少々時間がかかるかもしれません――」
 すると、ネシェラはおもむろに森の中へと入って行った。
「ネシェラ! 入ると危険です! あなたまで迷ってしまう!」
 アムレイナは注意を促すが、ネシェラは――
「大丈夫よ、風の流れだったら私ならつかめるから。 ちょっと、様子を見に行ってくるわね。」
 得意げに答えると、森の中へと入って行った。
「ネシェラと言えば風、風と言えばネシェラだからな、その点心配はいらないだろう――」
 ロイドはそう言うとアムレイナは頷いた。
「確かに、それもそうでしたね! 頼もしい子です――」

 そして――森の中からネシェラが出てくると、彼女の後に出てきたのは――
「まっ、まさか、本当にお姉様!?」
 ライアは様々な思いと嬉しさがこみ上げてくると、少し涙声になっていた。
「アルクレア――本当に、あなたなのね――」
 お母様も心配そうに訊いた。
「ライア……お母様、それにサイスとロイドまで――」
 しかしその時――
「えっ――!?」
 なんと、アルクレアの胸に1本の矢が! そして彼女はその場に倒れてしまった――
「なっ!?」
 ロイドはすぐさま振り向くと、そこには何者かが潜んでいた!
「おっと! 見られちまったようだな! 仕方がねえ!」
 そいつは暗殺者……得意げな態度で出てくると、そのままアルクレアの身体のところまでやってきた。
「くくっ……どいつもこいつもマヌケなやつらばかりだ――まさか作戦がすべて筒抜けだとは知らずになあ!」
 なんだって!? サイスは訊いた。
「なんだって今更!? お前たちは断念したのではなかったのか!?」
 暗殺者は話した。
「ふん、俺はプロの殺し屋――一旦引き受けた依頼は確実に遂行するのが仕事よ!  だが、この女の居場所がつかめねえもんだから随分と時間がかかったぜ。 クライアント様は見放された話だったが、好きにしていいって言うもんだから好きなようにさせてもらったってわけだ。 しかし俺も年だな、まさか見つかっちまうとは――」
 すると、暗殺者はナイフを取り出して構えた――
「だが、そんなことはどうだっていい。 お前らも今すぐこの女の後を追わせてやるぜ!  この女に仕込んだ矢にはレッサーロプロスの毒が塗りこんである!  このナイフにも……触れた途端に即死だ!」
 すると――
「あら、そう。だったらちゃんと殺す相手を確かめてから狙いなさいな。」
 と、自分の足元に転がっているはずの女から声が!
「何っ!?」
 暗殺者は驚き慌てふためいているが時すでに遅し――
「ぐはっ……身体が……動かねぇ――」
 暗殺者はその場で突っ伏してしまった。そして――
「ライア、出番がなかったわね――」
 ネシェラはその場に現れると、暗殺者のこめかみのあたりを踏みつけながら言った。
「そっ、そうね、確かに――」
 ライアは冷や汗をかいていた。
「なっ、なんだ、何がどうなってやがんだ――」
 暗殺者はそう言うとネシェラは思いっきり見下しながら言った。
「そう――筒抜けだったのね、私たちの作戦。 そんなことまで聞いていてくれたんだったら暗殺者としては合格ね。 けど――まっ、そんなことだろうと思っていたから裏をかかせてもらったまでよ。 あんなにわかりやすく話でもすればきちんと聞こえるんじゃないかと思ったけど正解だったみたいね。」
 なんと、作戦自体がすべてフェイクだった! この女マジでヤバイ。
「ふっ、レッサーロプロスの毒、確かに効き目抜群だったみたいね。 この魔法は毒の効果を利用して身体をマヒさせる効果があるのよ、名付けて”パラライズ・ウィンド”とでもしておこうかしら。 まあいいわ、暗殺者をこのまま野放しにしておくほど趣味悪い人間じゃあないから、そろそろいいわよね?」
 というと、ネシェラはおもむろに――
「待ってください! ダメです! 真の黒幕を突き止めないことには!」
 アムレイナはそう言うが時すでに遅し、ネシェラとロイドは暗殺者を……えっ、ロイドも?
「こいつはプロの殺し屋だ、一旦引き受けた依頼は確実に遂行するだけでなく、 例え自分の身がどんな状況であろうと秘密を守り通すのが仕事――口を割らせるのは無理だと思っていい――」
 ロイドはそう言いつつ、剣を引き抜いた。
「お兄様――」
 ネシェラは心配そうに言うが、ロイドは得意げに言った。
「こういう血なまぐさい事は分け合うって約束だったろ?  だからお前が殺るっていうのなら俺だって咎を負うぜ、 もちろん、リアントスも”兄貴”もシュシュラだって気持ちは一緒だ」
 なんという絆に結ばれたもの同士――
「ちょっ! ちょっと! そんな話聞いていない! それだったら私も混ぜてよ!」
 ライアは苦言を呈していた。
「ああ、そうだったな、悪い悪い――」
 ロイドは悩んでいた。