アーカネリアス・ストーリー

第5章 深淵へ……

第124節 一大プロジェクト始動!

 それからさらに半日が経ち――
「なるほど、とうとう睨んだ通りの展開になってきたってわけね。 それで、どうしたの?」
 ネシェラは誰かと話をしているようだが話し相手がいる様子はない。
「アテラス――わかった、動き出したってわけなのね。 OK、段取り通りね。それじゃ、うまく言ったらみんなでお茶パーティでもしましょうね♪」
 と、楽しそうに言うと話を切った。
「セディルに調査してもらった通りということですか、遠くのものと話ができるというのは大変便利ですね――」
 アムレイナはそう言うとネシェラは頷いた。
「前に話した通り、エルフ同士なら魔法でコミュニケーションが取れるんだけど――それでも完全ってわけじゃあないけどね。 とにかく、そう言うわけだから、そろそろ動くことにするわね――」
 何の話だろうか――サイスは訊くと、
「そうね、そろそろサイス兄様に話をしないわけにはいかないわね――」
 ネシェラは得意げにそう言った。

 その話にはサイスも驚いていた。
「なっ!? そんな、まさか!? アルクレアを外の世界に解放するのですか!?」
 ネシェラは頷いた。
「すべて計画のうちよ、お姉様の存在を明るみにして黒幕を動揺させるのが真の狙い。 いずれ連中は尻尾をつかませるわ、そうなったら一気に連中を一網打尽にできる――」
 だが――サイスは悩んでいた。
「でも、アルクレアの安全は――」
 ネシェラは得意げに言った。
「大丈夫よ、考えがあるからね。」

 ノース・エンドにほど近いアルティニアの港まで戻ってきた一行。
「それでは、我々はこのままエンチャント素材をアーカネルに送り届けます!」
「ええ、頼みましたよ――」
「置いとく場所はいつもの工房でいいからね、しっかりとやっといて頂戴。」
 他の騎士たちを見送っていたアムレイナとネシェラ、一方のサイスは3人ぐらいの女性たちと話をしていた。
「すみません、そう言うわけですのでお願いいたします――」
 すると、その3人はその場から去って行った。 その様を見ながらロイドはライアと話をしていた。
「雰囲気がライアやお母様と一緒だな、つまり彼女らが里のプリズム族か」
「そうみたいね。それに私らだけでなく、ネシェラとも似たような感じよね――」
 ロイドは腕を組んだ。
「みたいだな――ったく、男でもできれば言うことないんだがな――」
 ライアは冷や汗をかいていた。 これまでお兄ちゃんのロイドを揶揄っていたライアだったが、 流石にある程度一緒にいると彼女も悩むほどだった。
「うーん……ネシェラって、どんな人が好みなのかしら?」
 そう言われると――ロイドは悩んでいた。
「少なくともイケメンが好きなのはわかっているんだが……」
 それはライアもわかっていた。
「なんだかんだ言ってもネシェラだって女の子なのよね――」
 なんとも微妙な存在感を示しているネシェラである。
「まっ、でもネシェラだからな、好きにさせといてもいい気がするけどな」
 そう言われてライアはすぐさま納得した。
「確かに、ネシェラが決めるのだからあんまり悩むほどのことじゃないかもしれないわね」
 言われてみればそうかもしれない、戦術を操るような女なら男の決め方もそれだけしっかりしているに違いないか。 ただ……恋愛興味なし女というのが少々心残りである。

 港では5人はそれぞれが行動していた。
「俺らの出る幕はなさそうだ。ライア、俺らは海でも見に行こうぜ」
「そうね、そうしましょ♪」
 2人はデート気分だった、もちろん、作戦のうちであるが――
「さてと、私は入念な準備をしてくるわね――」
 ネシェラは立ち上がると、アムレイナが訊いた。
「私はどうしましょうか? 一緒に行ったほうがいいですか?」
「そうね、一緒に現場の下見でもしておいてもらえると助かるわね――」
 なんとも入念な準備をしているようだった。
「では、私は里の女性たちと打ち合わせをしておきますので――」
「ええ、お願いします」
 サイスとアムレイナは示し合わせていた。

 そしてその夜、一堂に会して話をしていた。
「とりあえず、不審な動きはなさそうだ。 だから、堂々と作戦に移しても問題はなさそうだな」
 ロイドはそう言うとライアは頷いた。
「ええ、わかったわ。 それなら決まりね、明日の正午ごろ、 大森林帯の標石前で予定通り、アルクレアお姉様をお迎えに上がる作戦を決行するわね!  お姉様の護衛をしながらアーカネルに送り届けるプロジェクト――失敗するわけにはいかないから十分注意をして行うように!」
 ネシェラがそう言うと、サイスは里のプリズム族に言った。
「そういうことですから頼みます――」
「はい、お兄様――」
 プリズム族はその場から足早に去って行った。