さらに時が進み、ロイドたちはアルティニアのアシュバール家の別荘へと到着した。
「いい家だな――」
流石はアシュバール、とてもいい別荘を構えている、なんとも豪華な佇まいの邸宅がそこにあった。
雪に少々埋もれている様は雪国ならではと言ったところだが、それもかえっていい感じである。
ロイドは圧倒されているとアムレイナが言った。
「私の思い入れのある土地だからと、結婚した後に一番最初に作ってくださった別荘がここですね」
だが、彼女のリクエストに倣ってか、比較的こじんまりとしている規模だった、1部屋2部屋程度しかないらしい。
「私もこの別荘に来るのは初めてね、ここにこんな別荘があるなんて――」
だが、何が驚くかって、何を隠そうこの家――
「まさか隣の家だとは思ってもみなかったな――」
そう、まさかのヴァーティクス家の隣だった、ロイドは頭を掻きながら言った。
「えっ!? ウソ!? そうなの!?」
ライアは驚いているとサイスは頷いた。
「ですね。アルクレアは何もおっしゃってなかったので、恐らく彼女も知らないのではと――」
アムレイナは頷いた。
「はい、別荘については誰にも伝えていません。
そもそもこの家、別荘というよりは私の個人宅という向きが強い家ですからね――」
そういうことか――ロイドは考えていた。すると、ネシェラが言った。
「確かに、よく似た家が隣にあるなと思ったけどお母様の家だったのね。」
ロイドは頷いた。
「そうだったのか。にしても、なんで似たような家ばかり――」
ネシェラは言った。
「理由はとっても簡単、雪国だから。
特にここは雪がとっても深い地域だから、こんなところに作れる家なんてなると相場が決まっているわね。
そうとなると、作る家なんて大体にたような仕様になってしまうわけよ。
それがたとえ別荘であっても例外なく。
その分快適に過ごせる仕様になっていることだけは確かだけどね。」
なるほど、ロイドは頷いた。
「そういうことだったのか――」
だが、ヴァーティクス家だけは違っていた。
「私オリジナルに好きなようにデコらせてもらったわ。これだけおしゃれな家だと全然違う家に見えるでしょ。」
周りはまるでユニットタイプ丸出しのそれなのに、この家だけは見るからに家って感じでしかない――この女の能力、やはり侮れないな――。
「えっ……本当に同じ家なんですか!?」
アムレイナは驚いているとネシェラは頷いた。
「中に入ればわかると思うわよ、間取りまではそんなに変えてないからね。」
中に入るとライアは驚いた。
「へえ! 中は意外と広いのね!」
ネシェラは頷いた。
「家の設計仕様は最上のプランなんでしょうね、
うちもお父様は城の騎士だったんだからそのあたりちゃんとこだわっているんだろうし。
ライアの別荘もそうでしょ?」
そうなの? ライアは母に聞いたが――
「ごめんなさい、私はそのあたり全然関与していないのよ。
だから――ネシェラが言うのならそうなのでしょうね」
そしてアシュバール別荘、
ロイドとサイスはヴァーティクス邸においてネシェラだけがアシュバール母娘のもとについていった。
「これでよしっと。しばらくしたら部屋中暖かくなると思うわ。」
ネシェラは暖炉の火をつけていたのである。
「ありがとうございます! でも、”ストーブ”というのがあるといいですね――」
アムレイナはそう言うが、ネシェラは――
「”ストーブ”を作っている側が言うのもなんだけど、私は暖炉のほうが好きね。
確かに、ストーブは電気と燃料さえあれば簡単に火が付くんだけど、
暖炉のほうは何とも味があるし、こうやって実際に火をつけて、本物の火を眺めて感傷に浸る――
こっちのほうが温かみを感じると思うわね――」
そう言う考え方があるのか、ライアは考えた。アムレイナも――
「手軽さでは文明の利器に勝るものはないですが、それはそれって言うことですね」
ネシェラは立ち上がった。
「さてと、とりあえずこんなところね。そしたら……どうしようかしら?」
するとアムレイナが言った。
「ネシェラ、よかったら一緒にこちらの家で寝ませんか?」
「いいわね! そうしましょうよ! あっちは男2人、こっちは女3人――どう?」
ライアもそう言うと、ネシェラは笑顔で答えた。
「ええ! それならありがたく、お言葉に甘えさせていただくわね♪」
癒しの精霊アムレイナ様に無茶苦茶甘える気満々なネシェラだった。