そしてアムレイナに連れられ、3人はある場所へとやってきた。
「ナナルからこのあたりを持ち場にしていたと聞きましたね――」
そこはなんと、アルクラド大平原の北東部だった。
「以前に俺らがブレイズ・フールと出くわした場所だな――」
ロイドはそう言いながら周囲を見渡していた。
アムレイナは今回のことをナナルにお願いしたのだが、その際になんとシルルも一緒にいたらしく、
シルナル・コンビは今回の魔物討伐作戦の折にその場所で魔物と戦ったのだという。
すると、そこにはなんと……
「なっ!? おい、この魔物! まさか――」
そこには大きな獣が死に絶えている後があった。
だが、その魔物、この世界に生まれ出た存在の中でも最強最悪として名高い”凶獣”と呼ばれた存在だった――
大きさでいえば恐らく高速バスの2倍分の大きさはくだらない、アーカネルには存在しないもので例えているが。
「大きいわね、こんな大きな魔物がいたのね――」
ネシェラも唖然としていた。
「私も見たことがありません。一体どのような魔物なのでしょう?」
アムレイナが訊くとロイドは答えた。
「聞いて驚くなよ、こいつが正真正銘の”ベヒーモス”って魔物だ――」
と言われて驚かないわけがないアムレイナとセディルだった。
「……私らにしてみればこんなのをあっさりと斃しちゃうシルナル・コンビのほうがよっぽどなんだけど――」
ネシェラはそう言った、確かに言われてみればその通りだ――。
その凶獣、大きな身体ですべてを破壊するというウロボロスさながらの恐ろしい魔物だった。
それこそ、その身一つで数多の国を一夜にして滅ぼすとも言われる存在だった。
「でも、これでもまだ小さい方ね。
これよりももっと大きいものは特に”キング”の名を冠する呼び方をされていて、相当ヤバイ存在みたいよ。」
これよりもまだ大きいのがいるというの!? 2人は絶句していた。
こんな存在が高速バスのごとくスピードを上げて正面衝突でもされたらひとたまりもないことだろう。
「シルルの力はすごいものです、そうですか――”ベヒーモス”を斃してしまうほど――」
アムレイナは息をのんでいた。
「噂には聞いていたがシルル=ディアンガート……伝説を名乗る存在であるというのは伊達ではないということか――」
セディルは冷や汗をかいていた、シルルの力は余程のものらしい。
そんなこんなで次の話は見えてきたようだ、やはりアーカネルには何かしらの陰謀が渦巻いている……より確実なものとなったようだ。
その謎を追うため、かつての白銀の騎士団は今でも活動を続けている、アムレイナも含めて――というのが真実のようである。
そしてあの時、このような大きな魔物が現れたことで物語はさらにアビスへと向かっていくのであった――。
「……って……熱っ! 熱いっての! このクソナマズ!」
ネシェラはウロボロスの破壊の光による炎を振り払い、その場で激しく動き回っていた――
「えっ!? ネシェラ……?」
「ネシェラ……さん……?」
シュシュラとランブルは彼女の様を見て目が点になっていた。
「おっ、おい! ロイド! お前の妹、生きてるぞ!?」
リアントスも遠目から見て驚いているが、ロイドは頭を抱えていた。
「なんだ、またか……あいつに限ってよくわからない現象をいつも見せつけられるんだが、
まさかウロボロスの力を以てしてもあいつには無力だってのか……?」
ロイドには心当たりがあったようだ。まあ……ですよね。
そして――ネシェラは大剣を取り出した、騎士団との演習試合でも用いた”ウィンド・セイバー”である。
”刃無しの珠”が付いていたのでネシェラは取り外すと、そこに新たに別のジェム、聖なる光を発する”大いなる光の珠”をセットした。
「さて、死ぬ準備はできたかしら?」
ネシェラはウロボロスに迫っていく間、ウロボロスはただひたすら”破壊の光”を発動! だが、ネシェラには通じない! でも――
「熱いって言ってんでしょ! ったくもう! 次やったら――」
言っているわきから次がやってくると――
「お返しっ!」
ネシェラの”エアリアル・フレアー”! 自らの身から竜巻を発射すると破壊の光はウロボロスへと弾き返された! しかし――
「炎は効かないのか、自分の破壊の光には強いってわけね、まさに破壊することが取り柄だから自らの身をやらないための創造者の措置――」
すると、再び破壊の光が……しかし、
「ん? 赤の光?」
これまでの破壊の光よりもより強力な力が!
「今度は”赤の破光”ってわけね――」
だが、ネシェラは赤の光に捕らえられた!
「ちょっと! マズイんじゃないの?」
ネシェラを焼き尽くす! ところが――
「危ない危ない――ちょっとちょっと、こんな女の子に対してそんな魔法使うだなんて、見上げた根性の伝説の悪魔さんね。」
ネシェラは魔法バリアを張って得意げに佇んでいた。
だが――
「あら、攻撃の手が緩んだわね――」
赤い光は強い分だけ発動間隔が長いようだ、溜めが必要なのか。
「ふふっ、そうと決まれば早速――」
ネシェラは天に向かって右の手のひらをかざすと、上空は荒々しく轟いた!
「大いなる竜よ――」
それと同時に激しい風が――彼女の服装はその風ではためいており、
それはそれは”特に何もしなければ”男受け間違いなしの神秘的な美女であることは間違いないであろう、”特に何もしなければ”。
大事なところなのであえて2回も記載したが、彼女はそういう女性である。
すると――
「来たわね!」
ウロボロスから赤の破光が放たれる! だが――
「待ってたわよ。
さあ吹き飛びなさい! <フィールド・エーテル・バースト!>」
ネシェラは左手に携えている剣を突き出して風魔法を唱えた!
ウロボロスが発生させた赤の光を狙うと、その場はものすごい風圧がかかったのち、一気に膨張すると爆散!
ウロボロスはこれまでデンと構えていたその姿勢を崩し、平原の上に墜落した!
「やったか!?」
遠くから見ているギャラリーのうち、アレスがそう言うとロイドが答えた。
「いや、落ちただけで死んでいない、気をつけろ――」
すると今度、ネシェラは大空へとダイブ!
「伝説の悪魔ウロボロス……あんたのような命を無慈悲に殺戮するだけが取り柄の悪い子に相応しい末路というものを教えてあげるわ――」
そして彼女はおもむろに剣を上空にかざすとなんと、その剣に向かって先ほど轟いていた空から一筋の光が!
「あれは雷!?」
ライアが驚いているとロイドはよく見ていた。
「雷を吸収しているな……。
つまり、ネシェラは魔法剣を使うつもりか」
ランブルは驚いていた。
「魔法剣!? でも、あんな強大な魔力を吸収して用いる魔法剣、私はこれまで見たことがありません!」
リアントスは頷いた。
「らしいな。
俺らはどんな属性でもとりあえず魔法を打ち出すすべも教わったし、
魔法を乗っけて殴りかかるすべも教わった。
だが――あの女が使うのは何もかもが桁外れ……攻撃そのものが剣なのかそれとも魔法なのか、その見分けすら不可能だ。
あの異様な才能の持ち主といい魔法耐性といいものづくりといい――何か他の生き物を見ているとしか思えないな――」
そして、ネシェラはウロボロスめがけて飛び込んだ!
「さあ滅びなさい! セラフィック・クロス・ソード!」
ウロボロスの頭上に巨大な十字が出現し、それはウロボロスめがけて激しく落ちると、ウロボロスの身体を貫いた!