ある日のこと――ルイスはクレメンティル教会の前で悩んでいた。
「よう、どうしたんだオッサン?」
そこにロイドが通りかかるとそう訊いたのでルイスは答えた。
「よう、ロイド! お前こそどうしたんだこんなところで? お祈りか?」
お祈り? そう言われてロイドは首を傾げているとルイスが続けざまに言った。
「んなわけないよなあ、お前はそんなタマじゃないもんあ!」
ロイドは気が付いた、そう言えば教会の前か、と。
「俺はクレメンティルよりはヴァナスティア派だからな、
それに別にそんなに信心深い方でもないからオッサンの言う通りだな。
俺はただ、オッサンが何だか妙な感じだったから気になって聞きに来ただけだ、
大きな戦いをしたばかりだからな――」
なるほど、ルイスは考えた。
「それで俺がここにいるって聞いたってわけか、情報が早いな――」
「そこにいた番兵にオッサンをちょうど見かけたって聞いたからな」
ルイスは改まった。そしてロイドとティンダロス邸へと戻ると、そのままロイドが寝泊まりしている部屋で話をすることにした、どうやら深刻な話らしい。
「いやな――実はアムレイナさんの件なんだが――」
アムレイナ? まさか彼女、なんか怪しい動きでもしていたのか……?
ロイドは身構えてそう訊くとルイスは答えた。
「まあ……怪しいと言えば怪しいんだが――」
例のアーカネル側の監視の件については特にこれといった動きは見受けられないということで、
アムレイナからネシェラには話をしているし、セレイナについても特にそのあたりの話は何でもなかったらしい。
だが、ルイスが言うには――
「戦が始まる直前、エドモントンに行ってくるっていう話をしていたんだよな」
エドモントンに? どうして?
「それはわからん、俺もこっそりと聞いただけだからな。
ただ、どうやらすぐに帰ってきたみたいでな、その後に俺たちを見送っていたんだ――」
見送りということは、まさにちょうどパタンタに遠征しようとする前の話か、ロイドは考えた。
「一応気になったからな、ザダンに話をして可能な範囲で見てくれって伝えといたんだが――」
なんて言ってた? ロイドは訊ねるとルイスは頷いた。
「ああ、それがな、ザダンが任されているあの店にアムレイナさんが来ていたって言うんだ。
ただ――その際に一緒にセレイナと、他にも2人の女性が一緒だったって言ってたぞ――」
2人? ロイドは追求した。
「ザダンが言うにはどちらも美人の女性で、片方は褐色の肌でダーク・エルフっぽかったって言ってたな。
ただ――どちらの女性も見覚えのある風貌だったそうだ」
見覚えがある――ロイドは悩んでいた。
「ダーク・エルフの女……見覚えのある風貌……」
「ああ。それもしかも、だいぶ前に見かけた気がするってことらしい。
だいぶ前ってなると、少なくともあいつがアーカネルに来る前からってことらしいぞ」
それは……的が絞れないな、ロイドは悩んでいた。
「確かに、ネシェラからもそれは聞いたな、古い知人と話をしていたって話をな。
だが、ネシェラは”お母様を信じているから知人も信じる”と言っていたか――」
しかし、ルイスは悩んでいた。
「どうしたんだ?」
ロイドが訊くとルイスは意を決して話した。
「いや、実は俺もその人を見たんだ。
ザダンの言うその人なのかはわからんが、アムレイナさんと親しそうに話をしているダーク・エルフの女性を見たんだ。
でもなんだろうな、俺も何故かその人のことをどこかで見たような気がするんだよな――」
見たことがある?
「どこで見たのかは覚えていないが、まあ――俺が引っかかっているのはそう言ったことだ。
ネシェラが言うのなら気にしないことにしたいが、どうしたもんかなと思って――」
すると、部屋をノックする音が。ネシェラが入ってきた。
「えっ!?」
ルイスは驚いていた。
「ルイスがお兄様と一緒に入って行くのを見たって聞いたから。
何か気にしているの?」
えっ……ルイスは悩んでいた。
「まさに戦時中の動きだからって、同機は俺と同じようだな」
ロイドはそう言うとネシェラは頷いた。
「もし、何か気になることがあるんだったら訊いてあげるけど……大丈夫?」
ネシェラが信頼しているアムレイナのことなのでルイスは悩んでいるところ、ロイドが話した。
「俺の妹は感情論だけで動く妹じゃないから気にしなくたっていいぞ。
まあいい、俺から話すと――」
ネシェラは話を聞くと何やら悩んでいるようだった。
「なるほど……つまり、エドモントン……」
「そう、その後ザダンがばったり会っていたって話だ――」
ルイスはそう続けて言うと、ネシェラはその場から一旦去ると15秒後にロイドの部屋に戻ってきた。
「あのさ、もしかするとだけどさ、その女性ってこんな人?」
と、ネシェラは何かしらの紙を渡して見せていた、その紙には女性の姿が――
「なっ、なんだこれは!? すごい技術だ! まるで生きている者をそのまま――」
ネシェラは呆れていた。
「それは”写真”っていうものよ。
現像用のフィルムに投影穴から光を通して――まあ、んな説明は置いといて、
どうなの? 見たことある?」
えっ――ルイスはそう言われて改めて見ると――
「たっ、確かに――言われてみればこんな感じの人だったかもしれない!
そうだ、間違いない! アムレイナ様と話をしていたのはこの人だ!」
というが、ロイドは――
「ん? おい、この女――」
と、呆れながら訊くとネシェラは得意げに言った。
「ええそう。実はこの写真に写っている女性はシュタルよ。
現像する過程でいろいろと加工を施すことで、
この写真上では可愛い可愛い天使のような女の子はより大人っぽく落ち着いた風貌の素敵な女性へと変身を遂げたってわけ。」
ん、ちょっと待てよ……? ロイドは考えた。
「そうだ! エドモントンか! つまり、そういうことだな!」
どういうことだ? ルイスは訊くとネシェラが言った。
「ええ、そういうことよ。
エドモントンって聞いたからもしかしたらと思って念のために聞いてみることにしたんだけど大当たりだったってことよ。」
いや、もっと詳しく。もっとも、ここまでの話を聞いている人は何となく想像できていると思われるが。