とにかく一方的に善戦しているように見えるだけで、そうでもなかった。
そこは流石は不滅の存在を名乗る悪魔、いつ力尽きるのかわからないどころか、
そもそも力尽きることを知らない存在なのかもしれない。
「まるでお宅らと同じだな」
リアントスはそう言うとネシェラはもんくを言った。
「うるさいわねえ、誰が大飯食らいよ!」
そんなこと言ってない――確かに、ウロボロスは見るからになんでも丸呑みしそうな身体をしているが。
「また破壊の光だ! 退け!」
アレスはそう言うと再び軍団は避けるが――
「いや、もしかして不滅の存在だから、強力な自然治癒能力を持っているんじゃないかしら?」
ネシェラはそう言った、えっ……そんなまさか――
「あり得ますね……つまり、攻撃の手を緩めるのは悪手かもしれません」
と、ランブル、そんな……。
「マジかよ、そんなんでどうやって太刀打ちするんだよ!」
リアントスは嘆いていた。
「それは長期戦どころか――永遠に終わらないんじゃあ……」
アレスは悩んでいた。
ウロボロス討伐が始まり、フォーメーションに変更こそないが、参加者は変わっていた。
それもそのハズ、始まってから3日は経っている――流石は不滅の存在である。
「攻撃はバリアでなんとか防げるが攻撃面では焼け石に水――本当に終わるのかこれ?」
リアントスはテントの中から戦いの様子を見守っていた。するとそこへロイドがやってきた。
「いい加減疲れた、魔力切れだ。
問題はあのバリアの基礎を作っているのがランブルだ、つまり、あいつが崩れたらヤバイってことだな」
マジか!? リアントスは耳を疑っていた。
「言ったろ、あいつはエターニスでも結構高尚な使い手――あの魔力が折れると流石にヤバイ気がする、
そしたらジリ貧にしかならない。
だから――せめて、俺の魔力を回復して何とか対処するしかねえな……」
そんな……リアントスは悩んでいた。
「お前ほどの力を防御用に転用するなんて冗談も休み休みにしろよな……。
そしたらあいつの超絶回復力に誰が対抗するってんだ――」
ロイドは悩みながら答えた。
「ランブルを休ませるしかない。
その分ダメージ負債抱えることになるのは必至だが、ランブルが復帰したときに盛り返していくしかないな……」
本当にやるのかよ――リアントスは悩んでいた、バリア展開部隊にはクレアとランブルだけでなく、ライアとレオーナも加わっていた。
「”破壊の光”抵抗部隊……いつの間にか増えてんな」
ロイドはそちらの様子を見ながら答えた。
「直撃すると死ぬのは確実な威力だからな、だから4人で抑えてできるだけ攻撃の手が緩まないようにした結果だ。
だが――そろそろヤバイな――」
しかし、そんなとき――
「なっ!? ランブル!?」
なんと、彼が突然その場で膝をついてしまっていた!
「ランブルさん!?」
ライアとレオーナは慌てて反応したが当の本人は――
「崩したらダメだ! 陣形が崩壊する! そしたらすべてが終わってしまう!」
だが、バリア展開部隊の大黒柱が折れてしまったため、バリアの力が一気に弱まり――
「くっ……このバリアでは防ぎきれない! みんな逃げるんだ!」
と、アレスは注意を促すと、騎士団は退却することに――
「さあ、みんな逃げて!」
ランブルはそう促すが、レオーナが――
「ランブルさんも! 逃げるのよ!」
「私は……もはや動けそうにない……。だからせめて、せめて皆さんだけでも……!」
そんな! だが、”破壊の光”は無情にも赤々と燃え上がり――
「聖騎士の名に懸けて!」
と、なんと、彼の前にシュシュラが立ちふさがった!
「なっ!? おい! お前、マジか!」
ディライドは驚いていた。
「これが聖騎士の務めってやつね、やるしかないわ。
でも大丈夫よ、私は種族の特性上、魔法の力には強いはずだからさ。
だから私の無事を祈っててくれればそれで満足よ」
そんな! だが、ランブルが彼女の前に立ちはだかった!
「……えっ!?」
「騎士の務めと言われたら黙っているわけにはいきませんからね。
それに、私はもはや魔力切れですからほぼ戦力外です、もう終わりですよ。
まだあいつを斃せる方に望みを託したいのです、
ですから――私のことより、皆さんのことをお助けください――」
そっ、そんな――シュシュラは戸惑っていたが、彼女も譲ろうとしない。
「おっ、おい! なんでもいいが、言い合ってる場合じゃないぞ! 破壊の光が完成するぞ!」
ディライドは叫ぶと、2人の前には破壊の光が迫ってきて――
「冗談じゃないわ! 何が破壊の光よ! バカも休み休みにしなさいな!」
と、とうとう堪忍袋の緒が切れたネシェラ、彼女はなんと、自らその光の中へと突っ込んでいった!
「なっ!? ネシェラ! 早まるんじゃない!」
ロイドは慌てて立ち上がるとその場から叫んだ。
「いいのよこれで――悔いはないわ、2人の命と未来を紡ぐ者たちの命が助けられるんだからね!
それに私は現地執行官! この現場の指揮を総監督する者なんだからこれは当然の仕事なのよ!」
そして……破壊の光はネシェラのその身を――
「ネシェラ!」
「お姉様!」
「ねっ……ネシェラぁー!」
次々と彼女を心配する言葉が発せられた――彼女は光に身を宿し、短い生涯を終えることになっ……
「……って……熱っ! 熱いっての! このクソナマズ!」
いや――なんと、ネシェラは破壊の光による炎を振り払い、その場で激しく動き回っていた――
「えっ!? ネシェラ……?」
「ネシェラ……さん……?」
シュシュラとランブルは彼女の様を見て目が点になっていた。
「おっ、おい! ロイド! お前の妹、生きてるぞ!?」
リアントスも遠目から見て驚いているが、ロイドは頭を抱えていた。
「なんだ、またか……あいつに限ってよくわからない現象をいつも見せつけられるんだが、
まさかウロボロスの力を以てしてもあいつには無力だってのか……?」
ロイドには心当たりがあったようだ。私もそろそろ驚かない。