アーカネリアス・ストーリー

第4章 争乱の世

第100節 海より出でし悪魔

 そして、一行はその地へと向かっていった。
「なんとも禍々しいものを感じます、これは確実ですね――」
 ランブルはそう言って警戒していた。
「ちっ、どんだけ伝説の存在たる魔物がいるんだよ、いい加減にしろっての――」
 リアントスは愚痴をこぼしていた。
「だが、所詮は伝説、過去の栄光ってことだ。 骨董品みたいなのにいつまでも付き合っている必要はねえ、さっさとぶっ斃しちまうぞ」
 ロイドはそう言うとライアは感心していた。
「あなたのそういうところ、見習いたいものね――」
 と、その時――
「来るわよ、みんな気を引き締めて――」
 ネシェラは言うと近くの海が荒れ始め、何か嫌なものが中から現れた――
「まさか――本当にいるのか……!?」
 アレスは驚いているとロイドは答えた。
「目の前の光景を信じろ、俺から言えるのはそれだけだ。 恐らく、こいつの魔性に引き寄せられてここいらの魔物が荒ぶっている可能性が高い――」
 ネシェラは頷いた。
「そういうこと。つまり、こいつを斃せばこのあたりの問題は一度に解決するハズよ。」
 そして、その存在は徐々にあらわになってきた――まさにドス黒い大きな蛇のような存在であり、 何処に顔があるのかわからないほど真っ黒な物体のそいつは海中から顔らしき部位を出すと、 そのまま空へと浮かび上がり、こちらに向かって身を乗り出して覗き込んでいるかのような姿勢で佇んでいた。
「なっ!? 浮いているのか!?」
 それにはロイドは驚いていた。
「おかしいわね、私の想像だと下半身らしきものはもっとどっしりとしていて地上に降り立ったまさに伝説の悪魔たるそれのハズなんだけど――」
 ネシェラも考えているがランブルは答えた。
「そもそも、こいつには常に決まった”体”というものがありません。 時には蛇、時には竜、そして時にはまさに悪魔そのもののような禍々しい姿で時には多頭竜――さまざまな姿でこの世を破壊する存在と言われています。 そう、ゆえに不滅の存在にして伝説の悪魔――すべてを飲み込み、他を滅ぼしては自らのみが永遠に生き延びること―― それがこいつの存在意義なのです――」
 故にそいつはこう呼ばれているのである――
「”ウロボロス”――本当にいたのね……」
 シュシュラはそう言った、まさに、まさに伝説の悪魔である。

 頭も真っ黒でどういう顔をしているのかが全く分からない。 だが、シルエットから何となく頭部の位置はわかるようで、あからさまにこちらを見下ろしている様子である。 とにかく、全体的に不気味なほど黒々しく、その光景はなんとも異様ともいえるような姿だった。
「決まった”体”はないと言いましたが、この蛇の姿はウロボロスのもっとも原始的な姿です。 言ってしまえば破壊をもたらす存在の姿としては初期型と言うべき姿、 つまり、破壊をもたらす存在としてはまだ完全に目覚めていない状態での姿ということです――」
 ランブルはそう付け加えた、なるほど――ロイドは構えた。
「つまり衰えた状態のまま目覚めちまったってわけか、 それならエターニスもスルーしてたって仕方がないのか、俺らでも何とか倒せそうな存在が故ってことだな」
 だが――ライアは悩んでいた。
「でも……不滅の存在なんでしょ? 私たちなんかで何とかできる相手かしら?」
 ネシェラは答えた。
「とりあえず今ここでしばき倒しておねんねさせとけばいいのよ、 そしたら遥か未来にもっと偉大な存在が現れてこいつを浄化してくれるハズよ。」
 なるほど、シュタルは納得した。
「つまり、私たちはボコボコにすればいいだけなんだね!」
 そう、そう言うことである。 とにかく、再び眠っててもらおう――それだけの話らしい。

 戦いの火ぶたが切って落とされた!
「この野郎! さっさとくたばれ!」
 リアントスは安定の雷を飛ばして一方的に攻撃を繰り出していた、 海より出でしということは雷がよく効くそうだ。
「ぶっ飛べ!」
 ロイドのライトニング・ショット・ガン!  雷撃を伴った必殺の振り下ろしから放たれる衝撃波でウロボロスを直接切り裂いた!
「避けられるもんなら避けてみろー!」
 シュタルのセイント・ハイ・スピード! 光のごとき早さの瞬滅乱切り!  ウロボロスのこの黒々としたそのイメージ通り、聖なる力にも弱い。
 とまあ、そんなこんなで一方的におしていっている騎士団、本当にこいつは伝説の悪魔なのか?
「あれはまさか! 離れて!」
 と、ライアは危険を察知した。それに気が付いた者はすぐさま避けた――
「くっ、間に合うかっ! マジック・バリア!」
 ランブルは広い範囲にバリアを展開! すると――ウロボロスの身体からとてつもなく赤い光が放たれると、周囲をすべて燃やし尽くす!
「うわああっ!」
 何人かはやられてしまった――。
「あぶねえ――ランブル、ナイスだ。 ”破壊の光”か、いくら衰えていてもその力は健在ってわけだな――」
 ロイドは身構えながら言うとランブルは胸をなでおろしていた。
「被害は避けられないですが、とにかく、直撃だけは避けられたようで何よりです。 あれが直撃したら、恐らく命は助からないことでしょう――」
 ロイドは悩んでいた。
「確かに――力が衰えている故か、あれしかしてこないな。 見ろよ――また再び力を蓄えてるぞ」
 それに対してランブルは頷いた。
「こうなったら畳みかけるしかなさそうですね。 私はほかの誰かと競合してバリアを展開していますので、ロイドさんたちはやつを!」
 するとそこへクレアがやってきた。
「それなら私の出番ですね! みなさんは早く倒すことに専念しちゃってください!」