ランド・グリフォンで終わりというわけではないが、
ここ一番の大きな魔物と言えばまさにこいつぐらいのものであり、斃したことで騎士団の士気が上がった。
もちろん、作戦にはハンターたちも参加しており、みんな平和のためにと一丸となって事に当たっていた。
「ロイドとネシェラたちがあんな大きな魔物を斃したのよ! みんな、彼らに続きなさい!」
ライアはそう言って後続の騎士たちを指揮していた。
「流石はネシェラね、対人どころかどんな魔物でもあっさりと斃してしまうロジックを組んでしまうのね、
やっぱり敵わないわね――」
シュシュラはそう言いつつネシェラの元へとやってくるとディライドも言った。
「ロイドもだな。
とにかく、このヴァーティクス兄妹に任せておけば十分かもしれないってわけか」
ネシェラは得意げに答えた。
「ええそうね、だから私の手駒としてちゃんと働きなさいよ。」
うっ――余計なこと言うんじゃなかった――ディライドは後悔していた。するとその時――
「なんだ?」
不穏な空気を察したロイドは振り向くと、そこには――
「けっ、デカければいいってもんじゃねえんだよ! だったらいくらでもぶっ飛ばしてやるぜ!」
と、また現れたランド・グリフォンめがけて突進していった。するとそこへ――
「よーし、だったら俺が援護してやろう、トドメにしくじったら妹の刑だからな。
もちろんうまくいったら妹に誉めてもらえよ」
と、リアントスが得意げにそう言いながら現れた。
「じゃ、うまくやったらリアントス兄様のことをなでなでして誉めてあげるね♪
当然、しくじったら即ハイキックだからな。覚悟しとけよ。」
今度は俺かよ――リアントスは狼狽えていた。
そんなことはともかく、なんとか大型の魔物も収集を付けて収まって行った。
普通のサイズのグリフォンやキラー・スネークがそこらじゅうを徘徊しているが、
こんなのはまだマシなほう――とでもしておかないといつまでも収拾がつかない。
街道の危険だけでも除去できれば十分か、騎士団はそのように作戦を見据えることにした、残りは街道の警備だけでなんとか事足りる範囲だ。
そんなこんなで魔物討伐作戦は2週間にわたって展開されると、
ようやく平原はある程度落ち着きを取り戻していくのだった。
「ネシェラ、ロイド、それからランブルさんまで……ずっと休んでいないじゃない――」
ライアはそう訊くと3人はそれぞれ答えた。
「そんなことないわよ、剣を休めてはご飯食べたり工作をして戦いのことを忘れてみたりと、やることはやっているわよ。」
と、ネシェラ――いや、つまりは寝ていないじゃないかと言っているんだけど。
「休みたいのは山々だが、こんな戦時になんとも落ち着かないもんでな――」
と、ロイド――寝ることよりもそっちの方に考えが依ってしまうのはわからなくもなかった。
「そうですね――とにかく、戦いを終わらせてしまいましょう。
都合がいいことに明後日は週末ですから、その時にまで終わればゆっくりと休めますね――」
と、ランブル――って! 週末にしか寝ないのかこの人! やっぱりエターニス由来のライト・エルフって常人離れしすぎているな……。
そんなことより――
「これ以上、魔物は減らないものなのかな――」
アレスは悩んでいた。
「うーん……こうなる前はもっと静かだったからねぇ――確かに、もう少し魔物が減ってくれると……」
シュタルも悩んでいた。
「ロイドさん、どうですかね?」
ランブルはそう訊いた。
「ああ、そうだな……お前の想像している通りだろうな」
えっ、どういうこと? ライアは訊くとネシェラが答えた。
「魔物がこれ以上減らない理由……何かしらの要因が潜んでいるのは確かだってことよ。
そもそも――」
そう言いつつネシェラは遠くを指さすと――
「あの辺り――なんだかとても嫌なものを感じる……」
そう言いつつ悩んでいた。
「なんだ? 何がいるんだ?」
スティアは不思議そうにしているが、リアントスは――
「確かに――なんだか知らんが、あそこだけ空間が妙に歪んでいる気がしなくもないな――」
何かを感じているようだった。
「ん、そう言えば、あの一角だけこれまで戦闘が起きていたような気がしないな、空白地帯?」
ディアはそう言った、その場所は平原から少し外れた場所で北西の海に面している区画だった。
「何かいるのは間違いないってわけか――」
「だが、アーカネルの平和を乱すことは許さん――」
「ええ、何者だか存じませんが、オイタはダメですね――」
将軍様3人も警戒していた。
「ただ、場所があまり広くはないからな、問題は誰が行くかだな。ネシェラ、どうする?」
ロイドはそう訊くとランブルが反応した。
「どうかした?」
ネシェラは訊いた。
「いや、もしかしたら――あいつかもしれません、
まさに世界に動乱が訪れた際には決まって現れるという”海より出でし悪魔”――」
そう聴いてロイドとネシェラは驚いていた。
「そんな、まさか!」
「えっ!? それってまさか、あいつ!?」
ランブルはさらに考えていた。
「あれの存在はエターニスでも警戒対象だったハズです。
ですから、エターニスの精霊たちも黙っていないと思います。
ですが――」
そんな様子は見られない――それはロイドもネシェラも感じていた。ランブルは続けた。
「だから思い過ごしだと思うのですが――」
それに対してネシェラは答えた。
「以前に現れたのはわりと近い時代の数十万年前だったハズよ、
あいつは回復するのにもっと時間がいるハズ、それほどまで衰えている状態で復活しているとしたら――」
ランブルは考えた。
「ん、そうなると、エターニスも気にしていない可能性が高そうですね、
逆に言えば、我々でも斃せるかもしれないということですか、なるほど――」
というより、何の話? ライアは訊くとシュシュラが言った。
「ちょっと待って、”海より出でし悪魔”ってまさか――」
そう言われてディアスは気が付いた。
「なっ!? まさか、ヴァナスティア聖書にも記されていると言われる、
すべての滅びをつかさどる伝説の悪魔のことではあるまいな!?」
それに対してディライドは頷いた。
「ああ――そこまで言われたら間違いなくあいつのことだろうな……。
さてどうするネシェラ執行官、敵の正体もある程度わかっていることだし、
全力でぶっ斃すためのエターニス流の理想のメンバーを考えてくれるとありがたいんだが」
ネシェラは頷いた。
「弱点はとっても簡単よ。
だって、”海より出でし悪魔”だもの、そうまで言われれば他にないじゃないのよ。」