アーカネリアス・ストーリー

第4章 争乱の世

第98節 この刃にすべてを

 ネシェラ、ロイド、レオーナの3人はそのままあの脳筋スティアとウサギにデカイのを任せ、一旦離脱していた。 そして――
「すげぇ……あんなにあっさりと――」
 ロイドは感動していた、何かしらのことを成し遂げた後のようである。
「小さいのはそれで行けることは分かったけど、デカイのはあれでうまくいくのかしら?」
 レオーナは悩んでいた。
「大きかろうが小さかろうが身体の作りは恐らく同じはずだ。だが――」
 というロイド、ネシェラは頷いて答えた。
「問題は大きい分だけ肉が分厚くなっている点ね。 でも、例によって見せないところが脆くなっているのは一緒だから、狙うならそこしかないわね。 つまり、肉が分厚くなっているところをどう克服するかだけど、そこは――」
 ロイドは頷いた。
「力仕事ってわけだな。 それに、技の性質上それなりに魔力が要る――つまり、やれるのは俺だけってことか」
 ネシェラは可愛い笑顔でにっこりとしながら言った。
「頼りにしているわね、お兄様♪ でも外したら同じ目にあわせるからね♪」
 だから、なんでえげつない一言を添えるんだこの娘は……いや、それがネシェラである。

 ということで脳筋2人組のもとへネシェラとレオーナが加わった。
「ほらあ! この色ボケクソウサギ! ちゃんとやってる!?」
 ネシェラは調子よく訊いてくるとウサギは答えた。
「はっ、はい! やっているます!」
 さらに、
「スティアさん♪ 調子はいかがです?」
 レオーナはわざと可愛げに振舞って訊いてきた。
「おっ!? おう! この通りだぜ!」
 そんな男2人の様子を確認すると、女2人はお互いに顔を合わせて頷いていた。
「んじゃ、さっそく言う通りにしてもらうからね!」
 ネシェラはそう言うとウサギは戦いながら訊いてきた。
「いっ、言う通り? 何か妙案が?」
 レオーナが言った。
「ええ! 例のあの時の再現をしてもらおうかと思ってね、私が最初に敗北したあの戦いのね」
 何の話? スティアとディアは首をかしげていた。

 でも、知る人ぞ知る、レオーナが最初に敗北したあの戦いとはこんなものだった。
 アレスは盾を前にして角獣にぶつかっていった。 互いにぶつかったときの反動は大きいが、このままの状態だと自分が負けそうだと思ったアレス。
「いいぞアレス! そのままあと5~6秒持たせてくれ!」
 ご、5~6秒!?
「おっ、押し返される……これ以上は――」
 明らかにアレスは押されていた……早く――
 そしてロイドは大剣を構えて大きく宙へと飛び上がった。そして、そのまま角獣の背中目がけて大剣を思いっきり突き刺した。 すると角獣はもだえ苦しみ始め、ロイドはすぐさま離れた。
 しかし、そのまま大暴れした角獣を相手にアレスは手間取っていた。
 前足で跳び、前半身を上下している角獣、アレスはそれにビビって大盾で目前をガードしたまま動けないでいた、このままでは――
「マズイな、急所を少し外しちまったか――あと少しなのに、この始末をどうするか……」
 ロイドは悩んでいた。しかしそこへ――
「イチ、ニのサン!」
 シュタルは角獣が前半身で跳びあがったタイミングを狙い、その腹を小剣の一撃で貫いた。
 角獣はその勢いで後ろ脚だけで立ち上がると、そのままのけ反り返って倒れこみ、息絶えた。
「……は……? 終わった――のか?」
 アレスが気がついたときにはすでに終わっていた。

「あの時は急所を外したからな、背中だったってのも原因の一つだが……。 しかし今回は――俺自身がしっかりと腹にキメてやる、覚悟することだな――」
 ロイドは闇の魔力を発揮すると、それを剣にまとわせた。
「闇魔法剣――しっかり味わえよ……」
 ロイドはその時がくるまでしっかりと精神を集中させていた。 そして――
「この野郎っ! 焼き鳥の分際でしぶといんだよ! いい加減に夕飯になれっ!」
 ウサギは大槍と額の角を突いた体当たり! さらに――
「このクソ鳥! さっさとくたばりやがれ!」
 スティアの背中への一撃! そして……
「燃え上がりなさい! はぁっ!」
 レオーナの炎をまとった剣の一撃! いずれもランド・グリフォンに痛手を与える一撃だ! だが――
「グワァ!」
 なんと、またしても右前足からの衝撃波が!
「うわぁ!」
「のわぁっ!」
「くっ……あとはお願い……」
 3人はそのまま吹き飛ばされたが、そこへネシェラが――
「それをした後にちょっとしたスキが生じるのよね――」
 彼女は瞬時に目の前へと大接近すると、そこに再びエアリアル・ダンシング・クルセイド!
「さあ! ほらぁ! どうよっ!」
 そして最後に――
「今回のは特別よっ!」
 ネシェラは見事なアッパーを決めると同時にそのまま宙へと飛び上がった!  だが、その着地地点はランド・グリフォンの間合いに限りなく近い場所であり――
「スキだらけね――このままだとこいつに握り殺されるわね――」
 と、ネシェラの思惑通り、踏ん張ったランド・グリフォンはそのままネシェラに襲い掛かってきた!  例のあのグリフォンのホールド・ブレイクよろしく、上半身を起こしてネシェラの小さな身を鷲掴みにしようと襲い掛かった!
「頂くぞ! デス・スプラッシュ!」
 と、その時をまさにじっと待っていたロイドは闇をまとった剣から力の限り剣閃を飛ばし、 ランド・グリフォンの腹をめがけてぶっ飛ばした!
「くたばれぇえええええ!」
 闇をまといし剣閃がランド・グリフォンの急所に入った!
「グギャアアアアアアアア!」
 ランド・グリフォンはもだえ苦しむと、そのまま静かに息を引き取った……。
「ふう、ヤバイな――殺傷力は抜群だが、もう少し手軽に使えるようにしておきたい技だな――」
 ロイドは汗びっしょりかいていた。そこへネシェラが嬉しそうに甘えてきた。
「わぁい♪ お兄様に助けてもらっちゃった♪ さっすがお兄様、強いのね♥」
「やんなきゃぶち殺すって言ったの誰だ――」
 ロイドは呆れていた。
「まあ――なんて仲のいい兄妹なのかしら……」
 レオーナは嬉しそうに言った。
「マジか、こんな……一撃で――」
「ネシェラもそうだけど、兄貴も相当のヤバさだな――」
 スティアとウサギも唖然としていた。